geek sleep sheepのニューアルバム『candy』を聴いていると、歌詞よりもメロディよりも楽器のフレーズにも増して、その裏にある「カッコいいと思う音をそのまま出すことの屈託のない喜び」「バンドを演ることの楽しさ」がそのまま伝わってくる。ロックの歴史には様々なバンドマジックや奇跡のサウンドが数多く刻まれてきているけれど、とんでもない瞬発力で奇跡が起きるのは、メンバーの歯車ががっちりと噛み合い、誰も止められないようなトルクで転がり出す瞬間から、運命のイタズラのように生まれいずるものだとも思う。

◆geek sleep sheep 画像

完成された音を聞く限り、どうやらgeek sleep sheepの3ピースは、本人たちも気付かないうちに変形と変容を繰り返しながら、誰も見たことのないようなバンドの音遊びという、化学変化の実験を楽しんでいたようで、それが『candy』というアルバムのレコーディング作業であり、『candy』を構成する楽曲作りだったと見える。

奇跡を起こす方程式などこの世に存在しないように、傑作を生み出す道筋は存在しない。天賦の才と遊びココロをぐちゃぐちゃと混ぜて、そこにこだわりとプライドというスパイスを加える。煮るのか焼くのか、それはその時にひらめくセンスで決められる。まるで完成品に導かれるように3人が遊び、楽曲をいじり倒す。yukihiro、momo、345という異端な音楽家が、夜な夜なニヤニヤしながらレコーディングを繰り返したら、「こんなにかっこいい作品になっちゃったよ、どうだい?」と言っているようだ。タイトルは『candy』。「食べてみたら?お口に合うかどうかわかりませんけれど(笑)」と、まるで試されているようなタイトルだ。

取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也

■ノイジーなギターだけど美しい…みたいなものも
■geek sleep sheepの推しポイントになるんじゃないかなと──momo

──演っていることが楽しくてしょうがない、そんな気持ちが『candy』から匂い立っているんですよね。

momo:前作『nightporter』をリリースして、その手応えもすごくありまして。その勢いのまま曲作りを継続させて、次の作品を長い目で考えたいねっていう話をしてまして。なので、頻繁にスタジオに入れるわけじゃないですけど、それぞれデモを作って、少し溜まったらリハーサル、曲作りをしながら何度かスタジオ入ってっていうのはけっこうコンスタントにやっていました。

──「自分が出す」よりも「メンバーに引き出される」のがバンドの醍醐味だったりしますよね。

momo:すごくそういう楽しみ方をしているバンドだと思います。曲作ってて、どういうベースを弾いてくれるかな、どういうドラムを叩いてくれるかなっていうのは、いつも楽しみですね。

yukihiro:この3人で出す音でやれることっていうのが確実にありますよね。

──予定調和よりもサプライズのほうがたくさん起こっているバンドなんでしょうか。

momo:そうですね。このバンドのやっている雰囲気…感覚にすごく自信があったので、それをぎゅっとまとめたものを出したいねっていう話はメンバーでしてまして。今回は2枚目になるので、前作よりも意識的に方向性を絞ったようなところもあるんです。

──具体的にはどういうことですか?

momo:僕は個人的にはギターをもっとガンガン弾きますって(笑)。そんなにハードすぎず、ノイジーなギターだけど美しい…みたいなものもgeek sleep sheepの推しポイントになるんじゃないかなと思って。345ちゃんが歌ってくれると美しくなるんで。

345:ふふ(笑)。

momo:もっとギターを歪ませても大丈夫みたい(笑)。

──歌は誰が歌う…とか、どの時点でどのように決まっていくんですか?

345:「この曲は345ちゃんに歌ってほしいなぁ」って言われて(笑)。

──ふわっと言われるわけですか?

345:はい。「はい」ってやってました(笑)。momoさんがデモを作ってくることが多いんですけど、わりとmomoさんの中でイメージはありますね。

momo:どっちの歌のほうがよさそうだなっていうのは、ある程度決めてきます。

──途中でひっくり返ることはないんですか?

momo:今回は、ツインヴォーカルでいくつもりだったけど、僕の歌を全部カットした曲ありましたよね(笑)。ふたりでラララって歌ってた時はすごい良かったのに、歌詞がついた瞬間に僕の歌が邪魔になった(笑)。

345:はい、ありました。

momo:その節はすいませんでした。

345:いえいえ(笑)。

──momoさんが「僕の声が邪魔じゃね?」って言って、他のメンバーが「そうですね」って答えるんですか?

345:あははは! そんな否定はしなかったけど(笑)。

momo:みなさん優しいんで(笑)。

──でも歌詞がつくとダメになるってどういうことでしょう。

momo:全然変わりますよね。急に色がつくというか風景が見える、よりはっきり見えるようになるんで、その絵の中に俺が立ってるのが邪魔だっていう感じかな。

──それはどの曲ですか?

momo:「floating in your shine」、6曲目ですね。

──おもしろい話ですね。曲が生まれてみたら想定外な顔色を見せてるわけでしょう? 一方で「planet ghost」などはダブルで歌っているし。「MOTORCYCLE」は一緒に歌っていますし。

momo:仕上がりを美しくしたい時は345ちゃんに頼んで、仕上がりをガサツにしたい時は僕が(笑)。

345:そんなことないです(笑)。

momo:汚したい時は僕が(笑)。

──曲作りの時には、すでにライヴのことを想定しているんですか?

momo:何度かライヴをやったので、その時の空気感を意識しながら曲作りができましたから、もっとライヴの場でノリを出せるような曲を作りたいなっていうのはありました。

──「これは弾きながら歌えないなあ」みたいな苦労はないんでしょうか。

momo:geek sleep sheepでは、手と口が合わないようなアレンジはあまりしないでおこうと思って。なので、けっこう確認取りながらフレーズを考えたり、考えてもらったりしていましたよ。

──345さんも弾きながら歌うことになりますよね。そこは想定内でアレンジを?

345:少し。でもあんまり想定しすぎると限界を決めてしまいそうなので、それはあんまり好きじゃないので。

momo:偉い!

──いきなり褒められましたね(笑)。

345:ははは(笑)、「このフレーズを弾いても歌えたほうがカッコいいな」っていう。

momo:楽屋でずっと練習してますよね(笑)。

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