シンセやV-Drums新モデルが披露されたローランド新製品発表会に浅倉大介とFLiPが登場

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ローランドは、5月13日に新製品発表会「Roland Summer Forward 2015」を開催し、アナログ/デジタルクロスオーバーシンセサイザー「JD-XA」やセミ・モジュラー・シンセサイザー「SYSTEM-1m」、電子ドラム「TD-25KV-S/TD-25K-S」、ギター・シンセサイザー「SY-300」など数多くの新製品を披露した。

今回紹介されたのは、4月にフランクフルトで開催されたMusikmesse 2015に出展された新モデルの数々。シンセサイザー、ギターシンセ、ワウペダル、アンプ、電子ドラムなど強力かつ幅広いラインナップが揃った。発表会では各製品の説明、デモンストレーションに加え、ゲストとして浅倉大介、FLiPが登場し演奏を披露した。まずはBOSSブランドの製品から紹介しよう。なお、価格はいずれもオープンプライス(文中の価格は税別の市場予想価格)。

■エフェクター感覚で接続できるギター・シンセサイザー「SY-300」


▲255×191×70mmとコンパクトなボディに4つのフットスイッチと操作しやすいツマミを配置したSY-300。

「SY-300」は、従来のギター・シンセサイザーと異なり、専用ピックアップを必要とせず、普通のギターシールドをつなぐだけで使用できる次世代型のギター・シンセサイザー。GKピックアップをギターに載せることに抵抗があったというギタリストでも気軽にギター・シンセのサウンドが楽しめる。3系統のオシレーターと4系統のエフェクターを搭載。シンセのフィルターやアンプ、LFOを使って通常のギター信号を加工した音色づくりも可能。ステップ・シーケンサーでメロディアスなサウンドを奏でることもできるし、BLENDER機能では自動的に3つのオシレーターをランダムに組み合わせて新しいシンセサウンドを生み出すことが可能。音作りが苦手という人にも心強い。特筆すべきはレイテンシーがまったく感じられないこと。専用ピックアップにより各弦の音程を検出する従来モデルとは違い、音程検出は行わず入力音を処理していることで実現しているという。エレキギターでの演奏スタイルを変える必要はなく、チョーキングやコードストローク、カッティングなど、まったくレイテンシーを感じることなく演奏ができる。また、USB経由でPCへの録音が可能、ドライサウンドを先に録音し、「SY-300」に戻すことでリアンプならぬRe Synthをすることも可能。TONE CENTRALから世界中のプロ・ギタリストが作成したパッチを無償でダウンロードできるのもうれしい。さらにベースモードも用意されるので、ベーシストも注目だ。発売は6月末予定、価格は70,000円前後。


▲展示エリアには最初のギター・シンセ1977年の「GR-500」(写真左)、初めてポリフォニックに対応した1980年の「GR-300」(写真右の左下)も。最新ラインナップは今回の「SY-300」(同左上)と、ディバイデッド・ピックアップ使用の2モデル、ギターモデリングやオルタネイトチューニングに特化した「GP-10」(同右上)、PCM音源とギターモデリング搭載の「GR-55」(同右下)の計3モデルとなる。


▲PCとUSB接続により録音済みトラックに対するRe Synthが可能(左)。PC用のグラフィカルなエディターソフトも用意、アーティスト・パッチのダウンロードも可能(中)。デモ演奏では、神田ジョンが分厚いシンセサウンドからトリッキーなエフェクトなど多彩な音を聴かせた(右)。

■2つのモードを備えたコンパクトなワウ・ペダル「PW-3」


▲コンパクトながら堅牢な「PW-3」(左)。展示スペースではエフェクト・スイッチング・システム「ES-8」などと組み合わせたペダルボードとのセットアップも。「ES-8」の発売は5月28日。

ギタリストが望む理想のワウ・サウンドを追求し、BOSSならではのアイディアを詰め込んだワウ・ペダルが「PW-3」。従来のワウ回路で失われていた低音域を維持し、今までにないレンジの広い迫力のあるワウ効果が得られるリッチ・モード、伝統的なワウ・サウンドが得られるヴィンテージ・モードを搭載。ビンテージ・モードは1960年代のイタリア生産のモデルを徹底解析して作られているという。筐体は堅牢性の高いアルミダイキャスト製で、ペダルボード内に設置しやすい省スペース設計。コンパクトながら高い安定感と操作のしやすいスムーズなペダルの動きも注目。踏み心地を好みに合わせて調整できる点や、調整エフェクトのON/OFFを表示するLEDインジケーターが両側面に設けられており、足で隠してしまうことがないのもポイントだ。発売日は未定、価格は12,000円前後。


▲DURANが「まさにあの音!」といったヴィンテージ・モードと、低域の太いリッチ・モードを聴かせたデモンストレーション(左)。ボディ側面にはON/OFFの状態がわかるLEDが配置(右)。

■ラインナップがさらに充実したギター・アンプ「Blues Cube Artist212」「Blues Cube Tour」


▲写真左の手前が「Blues Cube Tour」と「Blues Cube Cabinet410」の組み合わせ、次がコンボ・アンプの「Blues Cube Artist212」。写真右はコンボ・アンプのオプション「Eric Johnson Tone Capsule BC TC-EJ」。

Rolandブランドからはまずギター・アンプ「Blues Cube」新モデルが登場。数々のヴィンテージ・チューブ・アンプを徹底的に研究し、ローランド独自のTube Logic技術を駆使して究極のクランチサウンドを実現したシリーズの最新モデルは、コンボ・アンプの「Blues Cube Artist212」と、フラッグシップ・モデル「Blues Cube Tour」とその専用キャビネット「Blues Cube Cabinet410」の3機種。「Blues Cube Artist 212」は最大出力85W、12インチ2基のカスタムスピーカーを搭載。「Blues Cube Tour」は最大出力100W、各チャンネル独立のイコライザーを搭載、エフェクトループも2系統用意する。「Blues Cube Cabinet 410」はオープンバックタイプで、10インチ4基のカスタムスピーカーを搭載する。サウンド・メイキングでは、ヴィンテージ・チューブ・アンプ特有の粘りと艶のあるクリスピーサウンドが得られるクランチチャンネルと、クリーンチャンネルの両方をミックスしたデュアル・トーンが特徴。独立したEQで意密な音色づくりが楽しめる。また、シリーズのコンボ・アンプ「Bules Cube Stage」「Bules Cube Artist」「Bules Cube Artist212」に対応したオプションとして、「Eric Johnson Tone Capsule BC TC-EJ」も登場。こちらはオリジナルのBlues Cubeの回路特性をモディファイする専用ユニットで、Eric Johnsonが認めた極上のトーンと弾き心地を実現する。いずれも発売日、価格は未定。


▲「Blues Cube Artist212」は12インチ2基、「Blues Cube Cabinet410」は10インチ4基のカスタムスピーカーを搭載。「Blues Cube Tour」は2ch独立EQと2系統のEFX LOOPを備える。デモ演奏では、多彩な奏法にレスポンスよく応える「Blues Cube Tour」とワウ・ペダル「PW-3」の組み合わせによるサウンドのバリエーションとDURANの演奏テクニックに来場者から大きな拍手が。

■新音源「TD-25」搭載のV-Drumsが登場


▲家庭で使えるV-Drumsの新レギュラーモデル「TD-25KV-S」(左)と「TD-25K-S」(右)。両者の違いは、前者がタムのサイズが大きく、セカンドクラッシュ・シンバルが用意されること。スタンドや必要なスペースなどは同じ。

電子ドラムの「V-Drums」(Vドラム)シリーズには新音源「TD-25」を搭載したレギュラーモデルのキット「TD-25KV-S」と「TD-25K-S」が登場。製品コンセプトはサウンド・クオリティと自宅演奏の両立。フラッグシップモデル「TD-30」直系のサウンドを搭載。高速レスポンス、連打時の微妙な音色変化もサウンドに反映、ゴーストノートからオープンリムショットまで幅広いダイナミクスの表現などが継承されている。打点位置検出機能にも対応しており、たとえばスネアであればヘッドの叩く位置やリムショットの深さによってもサウンドが変化。音色によってはブラシを使ったスウィープ奏法にも対応する。「TD-25」は大型ダイヤルのセレクターにより、ジャンルに合ったキットがすぐに選択できるなど操作性の高さが特徴。サウンドのカスタマイズもシンプルな操作で行えるようになっている。自宅練習にうれしいのがタイミングのズレを視覚的に確認できる「タイムチェック機能」の搭載。さらに好みの曲に合わせて演奏やレコーディングも可能。USBメモリーに収録された曲やオーディオ入力からの音声も録音できる。また、USBケーブル1本でPCと接続でき、オーディオ/MIDIデータの送信が可能となっている。いずれも4月25日より発売中で、価格は「TD-25KV-S」が260,000円前後、「TD-25K-S」が208,000円前後。


▲大型ダイヤルですぐにキット選択できる「TD-25」。カスタマイズ用のつまみ&ボタンもトップパネルに(左)。VハイハットVH-11は市販のハイハット・スタンドに設置可能。ペダル操作で上下動し、自然な音色変化を実現(右)。


▲Jazz Session、Speed Metalなど次々を内蔵キットのサウンドを聴かせたデモンストレーション、演奏は藤原祐介(左)。大建工業とローランドのコラボによる“「楽器」と「住まい」のいい関係”をキーワードに、普段の生活の中で楽器演奏を楽しむためのさまざまな提案をしていく「マイホームセッション」プロジェクトからは、V-Drums用防振対策製品「ノイズ・イーター・ベース NE-10B」(4月24日発売)を紹介(右)。


▲ドラマー山木秀夫が福山雅治のライブで使用しているハイブリッド・セットの展示も(左)。音源モジュール「TD-30」、バー・トリガー・パッド「BT-1」(中)、ドラム・トリガーRTシリーズ(右)などをアコースティックドラムと組み合わせている。

■AIRAシリーズのモジュラー・シンセ「SYSTEM-1m」&モジュラー・エフェクト4種


▲下段が「SYSTEM-1m」、上段がモジュラー・エフェクト群、左から「TORCIDO」「BITRAZOR」「SCOOPER」「DEMORA」。モジュールを組み合わせてさまざまなサウンドが作り出せる。展示機は市販のユーロラック・ケースにセット、「SYSTEM-1m」は付属のアダプターで19インチ・ラック・マウントも可能。

AIRAシリーズからは、パッチングによる音作りの楽しさを1台で気軽に味わえるセミ・モジュラー・シンセサイザー「SYSTEM-1m」と、音作りの幅を広げるモジュラー・エフェクト4種がラインナップ。いずれもユーロラック規格のケースなどに組み込んで使えるだけでなくテーブルトップ型としてスタンドアローンでも使えるデザインとなっているのが特徴だ。「SYSTEM-1m」は、昨年発売の「SYSTEM-1」のモジュール版となるモデルで、19インチ・ラック・マウント・モジュールとしても使用可能。CV/GATE端子でほかのモジュラーとのパッチングが可能。「SYSTEM-1」で人気のソフト・シンセをロードできるPLUG-OUT機能も備える。発売は5月下旬予定、価格は75,000円前後。

モジュラー・エフェクトは、「TORCIDO」(ディストーション)、「BITRAZOR」(ビットクラッシャー)、「DEMORA」(ディレイ)、「SCOOPER」(スキャッターを備えたルーパー)をラインナップ。コンパクトなユニットには1600万段階以上の解像度を持つコントロールつまみと、多くのCV/GATE端子を備え、PC/Mac/iOS/Androidのエディターよるプログラミングが可能。USB接続だけでなく、FAXやモデムのような音声信号によるパッチの送信が可能なのもおもしろいところだ。いずれのモデルも内部には15のサブモジュールを搭載(今後の追加も予定)、ルックス以上の複雑なサウンドメイクが楽しめる。発売は6月予定で、価格は未定。

さらに70年代にローランドが発売した往年のモジュラー・シンセ「SYSTEM-700」、「SYSTEM-100M」をベースに、最新技術でそのサウンドを蘇らせるユーロラック規格の「SYSTEM-500」が開発中であることもアナウンスされた。こちらの発売は秋予定。


▲「SYSTEM-1」「TR-8」「TB-3」「MX-1」「VT-3」といったAIRAシリーズがずらりと並ぶ展示スペース。開発中のモジュラー・シンセ「SYSTEM-500」(右)も。

■FLiPがBOSS/Roland製品で演奏を披露


ここで登場したのが4人組ガールズバンドFLiP。BOSS/Roland製品を使って自身の楽曲を演奏。使用機材はSachiko(Gt/Vo)が、シンセ「JD-Xi」とアンプ「Blues Cube Artist」、Yuko(Gt)がワウ・ペダル「PW-3」とアンプ「Blues Cube Tour」、Sayaka(Ba)がギター・シンセ「SY-300」とBase Driver「BB-1X」、そして、Yuumi(Dr)がV-Drums「TD-25KV-S」。ロックスピリッツあふれる「ONE」、「JEREMY」の演奏を終えた後、「今回の新製品は直感で鳴らしたい音を鳴らしてくれる、そういうアイテムが勢揃いしています。私達も好きなアイテムがいっぱいあります」と気に入った様子。


■アナログ/デジタル クロスオーバー・シンセサイザー「JD-XA」


ラストはプロフェッショナル仕様のクロスオーバー・シンセサイザー「JD-XA」。3月発売の「JD-Xi」(50,000円前後)とは本体サイズも違うが、そのパワーも桁違い。新規開発のディスクリート回路で構成されるアナログパート、「INTEGRA-7」などでおなじみのSuperNATURALシンセを採用したデジタルパート、これらを柔軟に組み合わせて自由な音作りを実現するクロスオーバー・コンセプトがウリ。USBによるPCとの接続(オーディオ/MIDI)はもちろん、アナログシンセなどを鳴らせるCV/GATE出力(ミニ端子、2系統)やボコーダー・サウンドの演奏に使えるマイク入力端子など多彩なインターフェイスも備える。アナログパートは1パートに2オシレーター、フィルター、アンプ、4つのエンベロープの4パート構成。最終的な出音に大きく影響するアンプ部もアナログ回路で構成、デジタル回路を一切経由せずに出力できるドライ・アウト端子も備える。また、サウンドライブラリーサイトAxialにも対応しており、すでに多数公開されている「INTEGRA-7」用ライブラリーを読み込むことも可能だ。発売は6月予定、価格は250,000円前後。


▲アナログ・パートをダイレクトに出力する専用端子も装備(左)。最大4つのアナログ・シンセ・パートを同時使用可能、Poly Stackで4ポリフォニック・シンセとしても使用可能。


▲PC、電子楽器はもちろん、アナログ・シンセもつなげる多彩な入出力も大きな特徴(左)。デモは宇都圭輝(右)。アナログシンセならではのLFO、ポルタメントによるなめらかな音程変化を使ったシンセ・リード、Poly Stackによる4ポリフォニックのゴージャスなアナログ・シンセ・サウンドにデジタル・シンセのアタックをスパイスとしてに加えたパッド、4つのアナログ・シンセ・パートを使った分厚いシンセ・ベースなど迫力あるアナログ・サウンドを数多く聴かせた。デジタル・パートではEDMで使われる特徴的なリード・サウンド、80年台の名機「D-50」のきやびやかなサウンド、そして、90年代の「JD-800」の硬質なピアノサウンドなどを披露。アナログ・フィルターにデジタル・パートで作りこんだSuper Sawサウンドを通す、デジタル・パートのサウンドをソースに過激なクロス・モジュレーションをかけるなど、フレキシブルなサウンドメイクが可能なことが示された。

■ゲストに浅倉大介が登場「JD-X」&「AIRA」シリーズを弾き倒す


イベントの最後を飾ったのは、すでにライブやテレビ番組で「JD-XA」を使っているという浅倉大介。ピュアなアナログが特徴の「JD-XA」だが、「昔のヴィンテージのアナログじゃなくて、すごい最先端の音作りができるのがおもしろい」「なおかつデジタル・シンセの音源も入ってるんで、それと組み合わせでまた新しい自体の音が作れる」とその印象を語る。「どんな人に向いているか」との問いには「ソフトシンセが今、多い中でなにか新しいものを探している人に使ってみてほしい」「シンセの基本として大事なツマミが全部出ているので、入門者にも使いやすいと思う」と回答。また、現在ライブではメインのリードはすべて「JD-XA」を弾いているとし、「音がとにかくヌケがいいので、バンドサウンドだったり、分厚いオケの中でもすごいかっこいいリードがとれてしまう」「音が太くていい」とコメント。その後のライブ演奏では「JD-XA」に加え、「JD-Xi」や「TB-3」「SYSTEM-1」「MX-1」などAIRAシリーズもフルに使用。そのセットについては「自由自在に音が操れて、今、一番楽しい」と語り、それを具現化するような見事な即興演奏を披露、シンセの醍醐味やさらなる可能性を感じさせるパフォーマンスで来場者を魅了した。


▲浅倉大介はローランド三木純一社長との対談にも登場(右)。浅倉大介はローランドとの出会いのエピソードに始まり、「JD-XA」の音の立ち上がりはデジタルよりもアナログ・パートの方が早いというマニアックな検証結果も披露。「最近のローランド・シンセは変わったという印象があるが、そのバックストーリーがあれば教えてほしい」という浅倉の質問には、三木社長が「JD-X」シリーズは鍵盤を演奏する人以外をターゲットにした製品であること、「JD-XA」シリーズの内部基板のうち、アナログ回路が赤、デジタル回路が緑(これらはプロモーションビデオで見ることができる)と見えない部分にも開発者がこだわっていること、両者は別の開発チームが作っていることなどが明かされた。

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