【インタビュー】Crack6、破滅と再生を描く作品に「それでも花は咲いてほしいんです」

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PENICILLINのギタリスト千聖のソロプロジェクトであるCrack6が6月3日、通算4枚目となるミニアルバム『Change the World』をリリースする。壮大なテーマを持つコンセプチュアルなアルバムとなった本作を紐解く鍵は、“破滅と再生”。

◆『Change the World』Digest 動画

人間はどこから来て、何のために進化して、どこに行くのだろう?という答えの出ない疑問に向き合い続けたMSTRこと千聖が、地球という“ほし”で生きる“生命の輝き”を浮かび上がらせ、生と死が繰り返される連鎖の中、未来への希望を託す作品に仕上がった。コンポーザーとしてギタリストとして進化し続ける千聖が開けていなかった扉をいくつも開いた最高傑作。構想から制作エピソードに至るまでじっくり話を訊いたロングインタビューをお届けしたい。

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■なんで生きてるんだろう。死ぬのが怖い”
■幼稚園くらいの頃に思っていたことを思い出して

──4thミニアルバム『Change the World』はコンセプチュアルで、今までのCrack6とはカラーが違う作品だと感じました。以前からあたためていたテーマがあったんですか?

MSTR:今回のアルバムは、“生命はどこから来て、どこに行くんだろう”ということをテーマに掲げたんですが、思い起こすと去年の秋ぐらいから、“生命って何だろう? 人間は何のために生きているんだろう”と漠然と考えてたんですよ。ダーウィンの『種の起源』を読んだりとか。そうこうしている内に今年の頭に体調を崩してしまったんですが、やっぱり健康じゃないとライブしても曲を作っても楽しくないんですよね。生きてる=LIVEなわけで、だからこそ笑ったり悲しんだり悔しかったりする。当たり前のことをホントに実感したんです。

──身体を壊したことで、あらためて深く考えたんですね。

MSTR:そうですね。ボクなんか比べ物にならないくらい肉体的にも精神的にももっと苦しんでいる人はたくさんいるし、大変なことはたくさんあるけれど、それも生きてるからこそなんだよねって思いました。と同時に、さっき話した“人間はどこから来て、何のために進化して、どこに行くんだろう?”って誰も答えが見出せないことを延々と考えてしまったんです。それを曲やアルバムのテーマにしようとなんて考えもつかなかったし、そう考えはじめても生と死について曲にするなんて壮大すぎて、具体的にどうすればいいんだろうって3月まで悩んでいたら、JIROさん(JIRO6/O―JIRO)とTENZIくん(TENZIXX)が新曲を2曲を先に持ってきてくれたという(笑)。

──それがアルバムに収録されているボーナストラック「RISING SUN」と「東西南北 Crack6!!!!!!!」ですか?

MSTR:そうなんですよ。ボーナストラックがいちばん最初に出来てきて。「MSTR、曲作らないの?」って。

──今までにない状況ですね。

MSTR:そうそう(笑)。TENJIくんは前向きだし、JIROさんも作業が早いし、2人からもグイグイッと詰め寄られて(笑)。

──精神的に突き詰めて考えたことが、今回のアルバムにモロに反映されたということですよね。

MSTR:そう。オレね、普段あまり落ち込むっていうことがないんです。

──えー!? ってことはイヤなことがあっても短いスパンで立ち直るっていう?

MSTR:もちろん人並みに悩んだり落ち込んだりしてるとは思うし、ただ単に運が良かっただけなのかもしれないけど。だいたい今までは寝ちゃえば次の日には忘れてメシ食ってるか、もっと大変でも数日から1週間後には普通に戻るみたいな(笑)。だから、自分の中では不思議なくらい長いスパンで考えこんでいたんですよね。そのとき、ふと幼稚園くらいの頃に“なんで生きてるんだろう。死ぬのが怖い”って思っていたことを急に思い出して。

──それはまた早熟ですね。

MSTR:いわゆる死生観というものですかね? 生と死に対することにいろいろ考え始めたんですね。せっかく生まれて楽しく過ごせたとしても、いずれ死んじゃうんだと思ったら、すごく悲しくなったんですよ。悩んで悩んである日、母親に言ったら「そうよ。だから毎日を大事に生きなさい」って。

──真理ですねぇ。

MSTR:で、そんなことを急に思い出しながら、だんだん前向きにやっと書きはじめたのが「飛桜花」という曲ですね。まぁ、2曲目の「Re-Born」はもっと前の、絶賛悩み中からあったんだけど、インストだし、どちらかというと具体的なテーマというより、“こういうギターインストを弾きたい”という想いありきで書いた曲で。そのときは今回のアルバムのテーマにはまだたどり着いてなかったんですよ。

──なるほど。アルバムの方向性が見えるキッカケになったのが「飛桜花」だったという?

MSTR:そうですね。ちょうど桜が咲いていた時期に作って。一生懸命咲いて、数日、十数日後には散っていく花を生命の代表に例えたんです。Crack6に「Carry on」という8年くらい前に作った曲があるんですけど、その詞でも“その手がたとえ空に届かなくても咲いた花”って歌っていて。やはり生命の象徴としての花なんですよね。例えばヒマワリの花が太陽に向かって咲くのは光が栄養素になるからであって、花が枯れてそれがまた土の栄養になって。みんな自然の食物連鎖の中で生きているし、人間だって自然界に左右されて生きている。どんなスーパーマンにも食欲、睡眠欲、性欲があって、生きて死んでいく。“人間は墓に入るから連鎖とは関係ないじゃん”って思う人もいるかもしれないけれど、1万年後には墓自体が無くなり、土に還って大地の栄養素になり、それをまた植物から、動物から我々の子孫へと繋いでいるかもしれないじゃないですか。もっと大きく視野を広げると、地球自体が破滅と再生の繰り返しなんですよね。もっと言えば宇宙かもしれないし。

◆インタビュー(2)へ
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