【インタビュー】新山詩織、2ndアルバムに新機軸「1曲1曲にいろんな“詩織”が」

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新山詩織が6月17日、2ndアルバム『ハローグッバイ』をリリースする。収録は全12曲。シングル「絶対」や「ありがとう」をはじめ、短編映画『寄り添う』主題歌「分かってるよ」のバンドアレンジバージョンに、新曲9曲を加えたボリュームで届けられる。

◆6th Single 「ありがとう」 LINE ver.

高校卒業前にリリースされた1stアルバム『しおり』は、葛藤や悩みを綴る新山詩織自身が描かれた作品だった。そしてリリースされる『ハローグッバイ』には誰かがいる風景や、誰かに伝えたい想いが込められた。新たなスタートラインに立った新山詩織に環境や出会いが変化を与え、だからこそ生まれた楽曲の数々。そのストーリーひとつひとつに迫るロングインタビューをお届けしたい。

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■これまで感情を吐き出していた理由も
■自分のことを責めていたからのような気もします

──1年3ヶ月ぶりの2ndアルバム『ハローグッバイ』が完成しましたが、高校卒業前にリリースした1stアルバム『しおり』と、卒業後に制作された本作とは、気持ちの面でも大きな違いがあったのではないかと思います。その点に関して、本作は、どのような想いで制作に取り組んだのでしょうか?

新山:高校卒業後の日々の中で、「ありがとう」(6thシングル)などのシングルでもそうでしたが、自分ではない誰かに対して歌を伝えたいという気持ちが強くなってきたんです。歌詞に関しても、最近は、そういった内容のものを書くことが多くなりました。そこで、アルバムに向けて曲作りをしていく時に、今回は“誰かに伝えたい想い”をひとつのテーマに掲げて、制作を進めていきました。

──以前は、“誰かに伝える”というよりも、“自分を表現したい”という気持ちの方が強かったのですか?

新山:1stアルバムは、やっぱり自分の感情が自然と最優先になっていて、自分に向けて感情を吐き出したり、身近なものにぶつけていくという部分がありました。それも今思えば、学生や学校という限られた世界の中での感情だったので、必然的にそうなったんだろうと思います。それが高校を卒業した今は、もちろん学生時代の友達とも会ったりするんですけど、当たり前のように学校で会っていた頃とは、その人のことを想う気持ちはやっぱり違いますし、学生時代に感じていたことと、今、それを思い返して感じることも、全然違っていて。今回のアルバムは、当時のいろんな想い出を振り返りながら書いた詞も多くて、そういう点で、前作とはかなり大きく変わったと思います。

──そういった気持ちの変化は、歌に対する意識にも、何か影響を及ぼしているのでしょうか?

新山:それこそ、最初は何よりも自分のために歌うことから始まって、デビューをして、ライブをやるようになってからは、“私は今、こんなことを思っているんです”と、目の前にいる人たちに向けて、自分の感情をひたすらぶつけてきました。そして卒業して、ライブをたくさんやって、初めて観に来てくれる方がどんどん増えていく中で、私のいろんな意識が、自然と高まっていったように思います。それまでまったく無かったわけじゃないけど、相手に向かって歌をしっかりと届けたいという想いは、どんどん強くなっているし、自分でも、そこはすごく変わった点だと思っています。

──その気持ちの表れなのか、新譜を聴いて、歌に対する確固とした自信のようなものを感じました。

新山:ありがとうございます。これまで自分の感情を吐き出していた理由も、その時々で、自分のことをいろいろと責めていたからのような気もしますし、まだ自分で自分を認められなかったのかなと思います。そこから、いろんな人に出会って、いろんな場所で歌わせていただいて、その中で、“詩織ちゃんは、そのままでいいんじゃない?”“でも、ここはもうちょっと頑張れたらいいね”と、本当に多くの言葉をかけていただけました。それによって、“これが私なんだ”と気付くことができたり、“これでいいんじゃない?”と、自分を自分で認めてあげられる部分がたくさん出てきたんです。そういった部分が、歌に表れているのかもしれませんね。

──では、制作について詳しく聞かせてください。1stアルバムを完成させた後、日々、曲作りを行っていたのですか? それとも、アルバムに向けて、集中して制作を行った感じだったのでしょうか?

新山:割とギュッと集中して作った感じですね。作詞も、今回は先にメロディがあって、そこに詞を乗せていく作業が多かったので、いろいろと悩みながら書いたりと、すごく濃密な時間を過ごしました。もちろん、自作の曲に関しては、歌詞でも素の自分がストレートに出ていますし、一方で、いろんな方に作っていただいたメロディによって、新しい自分が引き出された部分もたくさんあって、私自身、いろんな発見がたくさんありました。ですから、曲ごとにいろんな表情が出せていると思います。1stアルバムは、1枚トータルで“詩織”を表現していましたが、今回は、1曲1曲にいろんな“詩織”がいると思うので、そこを楽しんで聴いてもらいたいですね。

──新しい自分が引き出されたという点で、特に印象に残っている曲は?

新山:やっぱり、「しおりのR&R」です。笹路(正徳)さんが書いてくださった曲が、いい意味で、すごくラフな感じだったんです。それを聴いて、これまで私は、軽い気持ちで詞を書いたことがなかったなと思ったので、この曲は、あえてラフに作詞をしてみたんです。これまでって、集中してパッと書くか、ひたすら悩んで書くかのどちらかでしたから。そう言った、作詞の作業もそうですし、レコーディングに関しても、はっちゃけた歌い方というのは、完全にこの曲に引き出してもらったものです。自分だけでは、絶対に作れなかったタイプの曲だと思います。

──デビュー曲から一緒に制作を行っている、プロデューサーの笹路さんだからこそ、きっと新山さんのこういった歌の表情を引き出そうと考えたのでしょうね。笹路さんからは、この曲の歌い方について、何か具体的なアドバイスなどはありましたか?

新山:声が裏返っていたり、サビではちょっとメロディに沿わさずに、ストレートに“ロケンロール”と歌っていたりと、そういった細かい部分は、細かく笹路さんとやり取りしながら作り上げていきました。でも、難しかったですね(笑)。かなり異色な曲ですが、笹路さんは、私のいろんなことを理解してくれているので、私も新しい表情をしっかりと出せたと思います。この曲以外でも、歌のニュアンスは、いろいろと試行錯誤しました。「好きなのに」とかも大変でしたし。

──「好きなのに」は、どういう点を意識して歌ったのですか?

新山:ミディアム・テンポで、ゆったりと流れていくとても切ない曲なので、最初に曲を聴いた時から、“これは恋愛詞だな”と思って、詞を書き始めたんです。ただ、切ない気持ちで歌うんですが、最後のサビで“好きなのに/好きなのに/強がってばかりいるの”というフレーズを、あえて微笑むような気持ちで歌うことで、より切なく聴こえるんじゃないかと考えて、そこは気持ちを入れ込んで歌うようにしました。

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