【スペシャル対談】GACKT×DJ KOO「その裏に何があるのか、かっこいいのはなぜなのか」

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GACKT:ただ貼り付ける作業になると、間違いなくボクの歌はズレてくると思う。それぐらいボクの歌は振っているから。それに、振ったものをただテンポに乗せてしまうとさらにズレて、それを元に戻そうとすると、もはや原曲の良さがどんどん消えてしまう。ボクはリミックスに対して、そんな危惧があったから最初このプロジェクトもやめた方がいいんじゃないって断ったこともあって。でも、実際にお願いして、こんなに曲が愛されていることにも感動だし、たとえファンでも、曲を好きになることはあっても、愛してくれるってないんじゃないかな。今回はボクのこだわりである歌の部分においても、いろいろと気付いてくれた上に、それを壊さずにアプローチしてくれたことが嬉しい。ボクは歌、表現だけは誰にも負けない自負がある。それは、ただ表現をするのではなく、レコーディングレベルでも言えること。そして、そこでトライしたことを本番で同じではなく、越えていけるだけのものができるっていうこともそう。ボクはライヴではCD以上のことができなかったら意味ないと思っている。CDと同じように歌うことはあくまで前提。そこからさらにいいものにするっていうこだわりがある。でも、それもわからない人がいるんだよ。わかってくれるのはごく一部。ボクはそれも仕方ないと思う部分もあって、ただライヴに来ると気持ちいいよねって思ってもらえたら嬉しいし、他では味わえないことができたらいいなって思っている。

DJ KOO:GACKTは歌をおざなりにしてないというか、それがトラックの節々に感じられて、僕にとっても今回はいい勉強材料にさせてもらったよね。どこがブレスで、声自体も口の中のどこにあてて響かせているんだろうとか。今、僕の弟子で東邦(音楽大学)からパリの国立に行って、4年間学んで帰ってきた子がいて、その子に全部和声について書き出してってお願いして。そしたら、やっぱりその子もすごく興味深かったって言っていた。

──でも、そこまで研究するからこそ愛が生まれるわけですね。

DJ KOO:DJの音楽って踊れるものであり、元々は繰り返し、特に4つ打ちはループすることで高まっていくことが基本で、無機質なものなんですよ。だから、そこに感情を加えていくのが御法度だったりする。でも、その無機質感っていうかっこよさを作品として考えたときに、より良いものができればいいかなって思って。今回、EDMとかそういうルールにとらわれずに作りましたね。

──GACKTさんにとって、ダンスミュージックの魅力とは?

GACKT:元々はクラシックの流れがロックにまで行き着いた1つの時代があった。いわゆる音楽的なものじゃなくエネルギーの方向性において、ステージから受け取る側に対して一方通行だったものが、DJ、ダンスミュージックというものが使われる場所が登場してきてからはそうじゃない。中心から外側に向かっていくようなエネルギーを感じるんだ。しかも、曲を聴いている側もそれを正面から返すのではなく、受けたものを瞬間的に何かに転化している感じ。ボクはいつもその感覚。自分の中でその瞬間にそのエネルギーをどう使って、どう表現してってところまで、楽しみ方がリアルタイムなんだよね。そういう意味では、音楽と呼ばれるものの使い方が、クラシック~ロックの流れに対して、DJというのはそれをすごく土着的に、元々民族音楽だったり、宗教音楽、宗教リズムだったりするものに近い感じで、エネルギーが中心から外側に向かっている。クラブにはステージがあって、もちろんそこから音が一方向に出ているかもしれないけど、エネルギーの方向性はロックのコンサートなどとは全然違っていて、水の波紋のような感覚というか、みんながシンクロしている感じなのかな。そして、それを結びつけているのがリミックスだと思っている。

DJ KOO:その通りで、特に大人数で楽しむところって、単純にキックだけでも人に伝わるものがある。すごく楽しいものなんですよ。今回の制作も楽しかった。1カ月で8パターンぐらい作っちゃったしね。ストリングス・バージョンとか、違うバージョンもあって。

GACKT:ぜひ第二弾、もしくは何かの形で聴いてみたいです。ボクは、それこそ15年ぐらい前に一度だけリミックスのアプローチをしたことがあって、その時は二度とやらないと思って。自分たちがやったことをただバラバラにされて、4つ打ちのリズムに乗せられて、本来ボーカリゼーションとしてやってきたことが全部無視されていた。またこうなるんじゃないかって不安もあったけど、今回はあがってきた曲を聴いて感動した。当時と明らかに違ったのは、日本のDJは昔と違ってもう世界レベルにきてるんだって感じられたこともすごく嬉しくて。そんな人たちが自分の曲、歌を引き受けてくれて、1つの作品ができたことは最高ですよね。

──日本のDJシーンは熟成されてきていると。
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