音楽一家に育ち、幼少期からヴァイオリンを学んでいたことでも知られるギタリスト、SUGIZOが自身の音楽の原点であるクラシックの中から愛してやまない楽曲たちを厳選し、収録したシリーズ第2弾『SPIRITUAL CLASSIC SUGIZO SELECTIONⅡ』がリリースされる。LUNA SEAのライヴの幕開けを象徴する曲でもあるベートーヴェンの「月光」に始まる本作において重要なキーワードとなったのは“ロマンティシズム”。ドビュッシー、ストラヴィンスキー、ラヴェル、バルトーク、サティ、モーツァルト、チャイコフスキー、リストらの楽曲が物語のように紡がれる構成となっている。恋愛に身を焦がし、翻弄され、その溢れるばかりの情念を美しい旋律へと変換させた作曲家たち、自身の表現を狂気的なまでに追求した作曲家たち。ある意味、現代のロックミュージシャンより振りきれている偉大な芸術家たちの生き様がSUGIZOの口から語られるとクラシック音楽という伝統的で重みのある扉がいとも簡単に開かれていく気がした。限りなくロマンティックで、ときに破壊的な衝動と熱情を感じさせてくれる名曲、名演の数々──。そして、それらは同時にSUGIZOという希有なアーティストの資質を浮き彫りにする音楽でもある。

取材・文◎山本弘子

◆SUGIZO 画像

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■僕は結局クラシックでもロックでも、
■真ん中から外れるんだと再認識しました(笑)。

──SUGIZOさんセレクトによるクラシック・コンピレーション第2弾『SPIRITUAL CLASSIC SUGIZO SELECTIONⅡ』がリリースとなりますが、昨年2014年の9月に発売された第1弾が大好評だったんですよね。

SUGIZO:光栄ですね。

──前作は子供の頃からヴァイオリンを習い、クラシックを学んできたSUGIZOさんの原点でもある曲の中から、オーケストラ編成の楽曲を中心にセレクトしていましたが、どんな反響がありましたか?

SUGIZO:ふだんクラシックに触れていない僕らのファンの方々にとっても良い扉になったようで「初めてクラシックをちゃんと聴きました」という声も多く聞いたので嬉しかったですね。同時に面白かったのはクラシックに精通している人から「変わった選曲だね」という意見をいただいたりして──。普通に好きで聴いていた作品ばかりだったんですけど、意外と自分の趣味って変みたいですね(笑)。

──偏っているということですか?

SUGIZO:王道じゃないということだと認識しています。結局、クラシックでもロックでも僕は真ん中から外れるんだなということを再認識しました(笑)。例えば前作にはサティの曲をドビュッシーが編曲した「ジムノペディ第3番」を収録したんですが、クラシック好きの人にもあまり知られてなかった作品だったということが判明したり。第1弾は自分の幼い頃の記憶、経験を大人になって追体験した感覚がありましたね。いちクラシックのリスナーとして、こういうコンピレーション盤が作れるのはすごく幸福ですね。

──第1弾を制作しているときから第2弾は構想の中にあったんでしょうか?

SUGIZO:ありましたね。そもそもクラシックは曲が長いものが多いので1枚の中に収まりきらないんですよ。削って削って厳選して1枚目が出来た。もっともっとフェイバリットな音楽はあったので、最初から1枚では足りないと思っていました。

──前作に続き、今回も素晴らしいセレクションで癒されたと同時に刺激的でした。ピアノ音楽を中心にセレクトした内容になっていますが、その理由というのは?

SUGIZO:単純にピアノ音楽が好きなんですよ。

──クラシックを学んでいた頃から?



▲『SPIRITUAL CLASSIC SUGIZO SELECTION Ⅱ』
SUGIZO:いや、むしろピアノソナタを好んで聴くようになったのは成人してからかもしれないですね。とは言え、今回はピアノ曲ばかり集めたわけではないんですよ。前作があくまでもオーケストラ編成が中心というコンセプトだったので、そこからはじかれた好きな曲がたくさんあって、ピアノのリリカルで氷のように美麗な世界を軸にしたかったんです。僕はピアノ曲で言うとドビュッシー、リストが好きでね。それらとベートーヴェンだけで1枚のアルバムが作れちゃうぐらい。

──収録されているドビュッシーの「夢」はとても美しく淡い色彩の曲ですね。

SUGIZO:いいですよね。ちょうど自分の中でも「夢」が旬だったんです。今回の作品は最もシンプルな独奏と大編成のオーケストラという2つの形態の振り幅があるセレクトになっています。本当は弦楽四重奏の曲やピアノ&ヴァイオリン曲も候補にあったんですが、今回も泣く泣く削って13曲になりました。

──セレクトするのは大変な作業でしたか?

SUGIZO:大変ですね。ただ、いちばん難関なのはベストなテイクを選ぶ作業です。古い録音のものが少なくないので、ノイズが多いんですよね。マスタリングで除去できるか苦労しましたけど、限界がありますね。1曲目のベートーヴェンの「月光」第1楽章なんか、始まったとたんモワ~ッとノイズが入っているんですが、それも演奏だと思って聴いてもらうしかないかなと。でも、数々のヴァージョンの中で、ジョン・オコーナーによる演奏が断トツで良かったんです。そこに到達するまで本当に苦労した。「月光」だけで10テイク以上聴いたんじゃないかな。

──LUNA SEAのライヴのSEでおなじみの「月光」で始まる作品でファンにとっても嬉しい幕開けですね。

SUGIZO:そうですね。それと苦労したのはストラヴィンスキーの「春の祭典」。今回、僕が抽出したのはヴァレリー・ゲルギエフによる第1部「大地礼賛」なんですが、このセクションは圧倒的に重たくてルナティックであるべきなんです。なんだけど、狂気を感じる演奏があまりなかったんですよね。ゲルギエフはもともと僕の大フェイバリットな指揮者であり、やはりロシアの作曲家の作品はロシア人が棒を振るのがベストだと思います。今、世に出ている「春祭」の録音物の中で最も好きなテイクを収録できたのは何より嬉しかったですね。

──聴いていても鬼気迫るものがあります。

SUGIZO:そう。そう。あらゆる激しいロックより僕にとって過激な曲です。

──そういう面があるのもクラシックに魅かれる要因のひとつなんですか?

SUGIZO:ストラヴィンスキーそのものが狂気ですよね。じゃないと100年前にこんな曲は作れない。いわゆるポリリズムなんだけど、当時はこんなリズムはありえないと思われたんでしょうね。実際、非常に解釈が難しい音楽ですよね。あらゆる民族的な要素も入りこんでいますし。「春祭」の初演(1913年)は当時の大カリスマダンサー、ニジンスキーが振り付けを担当したバレエだったんですが、生贄の少女が死ぬまで踊り続けるという内容もあいまってフランスのブルジョアたちは怒り狂って本番中に怒鳴り散らして大混乱になったのは有名な話ですよね。ものすごく衝撃的だったんだと思う。

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