【ライヴレポート】MUCC、ツアーファイナルで「終わりは新たな始まりだろ?」

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MUCCが7月18日(土)、新木場STUDIO COASTにてミニアルバム『T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-』リリース後初となるワンマンライブを開催した。<MUCC TOUR 2015 “F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE”Final【The Requiem, Endless Nightmare, Darkness YHWH,】>と題されたこの公演は、国内および欧州ツアー全体のファイナルに位置付けられるものだ。

◆MUCC 画像

2015年初のツアーとなった<MUCC TOUR 2015 “F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE”>は4月2日の高崎club FLEEZ公演を皮切りに、青森、金沢、大阪、徳島、周南、東京・EX THEATER ROPPONGIを廻った。なお、5月10日には<MUCC TOUR 2015 “F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE”in JAPAN>と題して東京・TSUTAYA O-EASTで公開ゲネプロを開催、その後彼らは全8ヶ所のヨーロッパツアー<MUCC EUROPE TOUR 2015 “F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE”>へ挑んだことは既報のとおり。これらツアーは、新音源を引っ提げたものではなかったが、ミニアルバム『T.R.E.N.D.Y. –Paradise from 1997-』の制作へはツアー前に入っていたことから、本編の約3分の1が新曲で構成されていた。2015年当初、音源制作を中心に行なっていた彼らにとって、これらツアーは久しぶりのライヴ、久しぶりのツアーとなったわけだが、テッパンのセットリストで久しぶりの高揚を味わう安定の盛り上りを選ぶことなく、ツアーの先にあった『T.R.E.N.D.Y. –Paradise from 1997-』での挑戦をいち早く見せつけるべく、そこに未知なる刺激と“現在のMUCC”を置いたのである。

4月28日のEX THEATER ROPPONGIで初めてこのツアーを見たときは、旧曲の中に混在する新曲たちが、まだまだ初々しく響いていた印象。公開ゲネプロとして、ヨーロッパに向かうメンバーとスタッフ6人のみで行なった5月10日のTSUTAYA O-EASTは、充分ではない環境に身を置き、自らに様々な試煉を課してのライヴでもあったことから、新曲たちはまだまだ“完成形”を見ていなかった。しかし7月18日、新木場Studio Coastで行なわれたツアーファイナル<MUCC TOUR 2015 “F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE”Final【The Requiem, Endless Nightmare, Darkness YHWH,】>では、彼らが『T.R.E.N.D.Y. –Paradise from 1997-』を通してみせたかった景色とMUCCというバンドの原点と現在進行形のMUCCを色濃く感じさせられた。見事なサウンド感とオーディエンスの心をしっかりと掴んだ最高なノリを見せつけてくれたのだった。

始まりは「睡蓮」。ライヴのサブタイトル【The Requiem, Endless Nightmare,Darkness YHWH,】へと誘うかのような、宗教色を強く感じる混沌とした世界は、まさにMUCCの結成当初からの基軸を思わせた。マイナーでありながら鮮やかで美しく、どこまでも透明な世界を描き出すミヤのアルペジオと、奥深さを感じさせるSATOちの抜けのいいドラムはオーディエンスの言葉を奪い、そして吸い寄せた。和の旋律も宿す同曲は“朝焼け”の景色を思わせるミヤの台詞から幕を開け、デジタルな同期を軸としたイントロが激しい世界をそこに作り上げていった。逹瑯が歌詞を紡ぐように唄う本編へと流れが移り変わると世界は一変。一気にクールダウンした本編がYUKKEのベースフレーズを中心に柔らかく、そして切なくたゆたった。彼ららしい人間的な感情が赤裸々に描かれた言葉で埋め尽くされていく世界は、18年というバンド歴が作り上げた産物。素手で“心”をギュッと握られたような感覚とでも言おうか。邦楽ならではロック感。まさにMUCCというバンドの個性を強く感じさせるものだった。その音はメロディアスに、そしてダンスに、そしてディープに激しく畳み掛けられた。『T.R.E.N.D.Y. –Paradise from 1997-』で表現したかったという“ミクスチャー”と、MUCCの18年を感じるその音と言葉は、フロアを埋め尽くしたオーディエンスを熱狂の渦へと引きずり込んだ。

ここ最近のライヴのテッパン曲「ENDER ENDER」のノリも、ヘヴィさを増した新曲たちの影響もあってか、間奏前には“HiHiHiHi”の力強いかけ声がオーディエンスから沸き上がるなど、確実に曲の温度が高くなっていたのを感じさせられた。目まぐるしいジャンルレスな展開をみせる「D・F・D(Dreamer from Darkness)」では、時おり差し込まれるミヤの歌声と逹瑯のロウの利いた深みのある声が交互に曲を彩っていく。混沌とした世界観とヘヴィロックという原点を根底に残しつつも、その時々の自分たちの中での“流行”を貪欲に自らの個性と融合させ、その領域を広げ続けてきた彼ら故、境界線という言葉もジャンルという枠も関係ない。まさに、彼らがここに提示した“今、リバイバルしかけてる90年代の音楽のいいところと、現代の音楽とを融合させたもの”は、新たなる個性の確立のきっかけを作ったのだ。

それをはっきりと証明していたのが、「HATEЯ」だ。これ以上ない攻撃的なサウンド感とラウドにアレンジされたレゲエのリズム、ラップメタルを用いた独特な譜割りに、MUCCらしいメロディラインを活かした新境地は、まさしく“新たなるMUCCの個性の確立”を感じさせられるものだった。90年代のハードコアと、現代のロックとの“ミクスチャー”を色濃く感じさせる『T.R.E.N.D.Y. –Paradise from 1997-』は、そんなMUCCというバンドの基軸をさらに際立たせる結果となったのだ。この日の「HATEЯ」は、刹那を宿したドラマチックな激しさを色濃く感じさせた柔らかな歌もの曲「B.L.U.E~Tell me KAFKA~」と、アコギの音色とベースのメロウなフレーズが哀愁を漂わす「レインボー」に挟まれた形で届けられたのだが、オーディエンスはその振り幅の激しさに振るい落とされることなく、見事なノリで彼らの音に応えていた。バンドとオーディエンス、そこに理想の関係性を見た気がした。

『T.R.E.N.D.Y. –Paradise from 1997-』の音たちはヨーロッパツアーを経験したことで、本来宿していた重厚感に加え、さらに逞しくなっていた。わずか1ヶ月の間にここまで印象を変えるとは、曲はライヴで育つという意味を彼らに改めて教えられた気がした。彼らの吸収力と貪欲さは、これまで以上なのかもしれない。18年という歴史を築き上げてきているバンドに、ここまでの伸びしろを感じることはそうない。そう感じた瞬間でもあった。

「18年やってきて、休みたいって思ったことが無いから、まだまだ行けると思うよ! 来年はもっとやりたいね!」とは、この日の逹瑯によるMCだ。その言葉からも、今、彼らが純粋に音楽を楽しめていることが伝わってきた。彼ら自身、『T.R.E.N.D.Y. –Paradise from 1997-』を作り上げたことにより、自分たちが音楽というものに衝撃を受けた原点を見つめ返すことが出来たからこそ、改めて音楽から受ける衝動を知ったのかもしれない。

アンコールで、ミニアルバムのオマケ曲であり、地元・茨城を舞台に描く自分たちのルーツを歌詞としたミクスチャーナンバー「1997」を届け、「蘭鋳」でいつものようにオーディエンスを座らせた直後に高くジャンプさせるというおキマリの煽りでオーディエンスを喜ばせた。そしてライヴの最後は、みんなで一緒に歌える曲をイメージして作られたという「TONIGHT」を届けた。ハイトーンの雄叫びから幕を開けるこの曲は、“ハートをズキュンとぶち抜かれる”メタルチューン。この曲では、同じ事務所に所属するシドの明希がベースで参加して華を添えた。アンコールで叫ばれたインディーズラストシングル「フリージア」の歌詞を思わす“終わりは新たな始まりだろ?”という逹瑯の言葉は、この先の彼らの意欲を物語るものだ。

なお、このライヴの最後にはDVD『F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE ON WORLD-Paradise from T.R.E.N.D.Y.-』が2015年冬に発売されることが発表となった。同DVDは先ごろ行われたヨーロッパツアー<MUCC EUROPE TOUR 2015“F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE”>の映像を中心に、各々がセルフ撮影で記録したメンバー視点のドキュメンタリーな一面も覗かせるもの。いつものMUCCのライヴDVDとは一味違うテイストの映像作品となる。詳細は後日発表されるとのことだ。

さらに、リードトラック「睡蓮」ミュージックビデオfull sizeが本日7月20日午前00:00より、無料動画GYAO!にて1週間限定視聴をスタートしている。これまではshort ver.のみの公開でその全貌がベールに包まれていた同ミュージックビデオの監督は、CMやドキュメンタリーなどをはじめRADWIMPS、米津玄師、凛として時雨などのミュージックビデオも手掛ける掛川康典氏が務めたもの。昨今海外でも評価が再燃しているミクスチャーロックと、MUCCのアイデンティティとも言える叙情的な日本語詞が融合した楽曲が、メンバーほか大勢のエキストラ、そしてインパクトのあるキャストを迎え、アグレッシブかつカオスな壮大スケールの作品として完成している。

取材・文◎武市尚子 撮影◎西槇太一

■<MUCC TOUR 2015 “F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE”Final
【The Requiem, Endless Nightmare, Darkness YHWH,】
7月18日(土)、新木場STUDIO COASTセットリスト

01 睡蓮
02 ENDER ENDER
03 D・f・D (Dreamer from Darkness)
04 Ms. Fear
05 G.G
06 謳声(ウタゴエ)
07 B.L.U.E -Tell me KAFKA-
08 HATEЯ (正式表記はЯの上に×印)
09 レインボー
10 娼婦
11 流星
12 ニルヴァーナ
13 ファズ
14 Rendez-Vous
15 名も無き夢
16 MAD YACK
17 Mr. Liar
EN
1 1997
2 蘭鋳
3 TONIGHT

■無料動画 GYAO!「睡蓮」MUSIC VIDEO(Full ver.)

URL http://gyao.yahoo.co.jp/player/00100/v10193/v0993900000000547806/
公開期間:7/20(月)0:00~7/26(日)23:59


■New Mini Album「T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-」

2015年6月24日(水)発売
【初回盤(CD+DVD)】AICL-2894~5 ¥2,778+tax
【通常盤(CD ONLY)】AICL-2896 ¥2,130+tax
1.睡蓮
2.D・f・D (Dreamer from Darkness)
3.B.L.U.E ~Tell me KAFKA~
4.HATEЯ (正式表記はЯの上に×印)
5.レインボー
6.Rendez-Vous
7.TONIGHT
<初回生産限定盤DVD>
MUCC TOUR 2015 “F#CK THE PAST F#CK THE FUTURE”
1.ENDER ENDER
2.D・f・D (Dreamer from Darkness)
3.HATEЯ (正式表記はЯの上に×印)
4.MAD YACK

■ライヴ情報

●<COMMUNE Vol.1>
2015年8月29日(土) なんばHATCH
OPEN 15:30 START 16:30
【出演】MUCC、D'ERLANGER、ギルガメッシュ、DEZERT、摩天楼オペラ
<e+>http://eplus.jp/sys/main.jsp
<ローソンチケット>0570-084-005(L:58779)
<チケットぴあ>0570-02-9999(P:270-188)http://t.pia.jp/
<CNプレイガイド>0570-08-9999
http://www.cnplayguide.com/
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888

2015年9月5日(土) 新木場Studio Coast
OPEN 15:30 START 16:30
【出演】MUCC、D'ERLANGER、ギルガメッシュ、DEZERT、NOCTURNAL BLOODLUST
<e+>http://eplus.jp/sys/main.jsp
<ローソンチケット>0570-084-005(L:77223)
<チケットぴあ>0570-02-9999(P:270-228)http://ticket.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=1531655&rlsCd=001&lotRlsCd=
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888

【チケット料金】前売券¥5,000(税込・ドリンク代別) 当日券¥5,500(税込・ドリンク代別)※なんばHATCH/1F立見・2F指定
※新木場Studio Coast/立見・2F指定
※未就学児童入場不可
【イベントオフィシャルサイト先行受付(抽選)】
2015年7月18日(土)21:00~7月21日(火)18:00
http://www.danger-commune.jp/
【チケット一般発売日】2015年8月1日(土)

●<MARCH ON THE DARKNESS>
・2015年8月31日(月) 大阪 BIGCAT
OPEN 18:00 START 19:00
【出演】MUCC、lynch.
(問)夢番地 大阪 06-6341-3525
・2015年9月1日(火) 名古屋 DIAMOND HALL
OPEN 18:00 START 19:00
【出演】MUCC、lynch.
(問)キョードー東海 052-972-7466
・2015年9月21日(月・祝) 福岡 DRUM LOGOS
OPEN 16:00 START 17:00
【出演】MUCC、lynch.
(問)BEA 092-712-4221
【チケット料金】前売券¥5,000(税込・ドリンク代別)
※オールスタンディング・未就学児童入場不可
【チケット一般発売日】2015年8月1日(土)

●<SHOXX 創刊25周年記念 SHOCK WAVE 2015>
2015年10月2日(金) 新木場STUDIO COAST
OPEN 15:30 START 16:30
【出演】MUCC、ナイトメア、R指定、BugLug、MEJIBRAY
【チケット料金】前売券¥5,800(税込・ドリンク代別)
※オールスタンディング・未就学児童入場不可
【チケット一般発売日】2015年8月1日(土)
(問)チッタワークス 044-276-8841

●<THE BACK HORN 「KYO-MEI対バンツアー」~命を叫ぶ夜~>
2015年10月23日(金)なんばHATCH
OPEN 18:00 START 19:00
【出演】MUCC、THE BACK HORN
【チケット料金】前売券¥4,000(税込・ドリンク代別)
※1F立見・2F指定
※未就学児童入場不可
<オフィシャルサイト先行受付>2015年7月21日(火)12:00~7月27日(月)23:00
http://www.55-69.com/category/liveall/live
<イープラスプレオーダー>2015年7月28日(火)12:00~8月3日(月)18:00
http://eplus.jp/sys/main.jsp
【チケット一般発売日】2015年8月29日(土)
(問)清水音泉 06-6357-3666
http://www.thebackhorn.com/feature/tour2015/

■<MAVERICK DC presents DOUBLE HEADLINE TOUR 2016「M.A.D」>

2016年1月31日(日) 大阪オリックス劇場
OPEN 16:00 START 17:00
MUCC / AKi ...and more

2016年2月7日(日) 名古屋市公会堂
OPEN 16:00 START 17:00
MUCC / AKi ...and more

2016年2月11日(木祝) さいたま市文化センター
OPEN 16:00 START 17:00
MUCC / AKi ...and more

2016年2月13日(土) 仙台電力ホール
OPEN 16:30 START 17:00
MUCC / AKi ...and more

2016年2月26日(金) 金沢市文化ホール
OPEN 18:00 START 18:30
MUCC / AKi

2016年2月28日(日) 広島アステールプラザ大ホール
OPEN 16:30 START 17:00
MUCC / AKi ...and more

2016年3月11日(金) 福岡市民会館
OPEN 17:30 START 18:30
MUCC / AKi

2016年3月13日(日) びわ湖ホール
OPEN 16:00 START 17:00
MUCC / AKi ...and more

2016年3月18日(金) 中野サンプラザホール
OPEN 17:30 START 18:30
MUCC / AKi

2016年3月19日(土) 中野サンプラザホール
OPEN 16:00 START 17:00
MUCC / AKi ...and more

2016年3月26日(土) 道新ホール
OPEN 16:30 START 17:00
MUCC / AKi

2016年3月27日(日) 道新ホール
OPEN 16:30 START 17:00
MUCC / AKi

【チケット料金】前売 ¥6,500(税込・全席指定)
【虚無僧DU MODE先行受付】2015年7月21日(火)12:00~7月23日(木)16:00 詳細は後日、虚無僧DU MODEでご案内いたします。
【一般発売日】12月5日(土)

◆チケット詳細&購入ページ
◆MUCC オフィシャルサイト
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