【インタビュー】下拓、「こいつは一体、何者だ!?」のキャッチコピーとともに現れた関西クラブシーン最前線アーティスト

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7月22日にリリースとなる下拓のアルバム『♯シモタクナウ(ハッシュタグ シモタクナウ)』の帯には「こいつは一体、何者だ!?」のキャッチコピー。さらに、フューチャリングしているアーティストは、RIP SLYMEのPESやヒルクライムのTOC、JAY'ED、KIRA、SHINGO★西成をはじめとした関西ヒップホップシーンの重鎮達の名前がズラズラ。ボーナストラックまで入れると総勢30人ものアーティストが参加している。このアルバムを作った下拓とは、一体、何者なのであろうか?

◆下拓~画像&映像~

■自分のアンセムになる楽曲にはいろんな要素を入れてみてもいいんじゃないかなと
■時代の流れ的にも最近ってあまりジャンルを気にしなくなっていますよね


――下拓さんが音楽に興味を持つようになったのはいつ頃なんですか?

下拓:小学校3年生の時に、兄貴が「部屋とワイシャツと私」(平松愛理)のCDを借りてきたんですよ。今考えると「なんでやねん!」っていう感じなんですけど(笑)、その時に、「音楽って借りてまで聴くもんやねんな」って思ったんですね。その頃くらいから、レンタルショップに行って、歌謡曲のCDを借りるようになったんですよ。B'zとかサザンオールスターズですね。中学校くらいになってからはTHE BLUE HEARTSさんとか、BOφWYさんとか尾崎豊さんを聴いてたんですけど、中3の時にスケボーをやりはじめたのをきっかけに洋楽のヒップホップを聴くようになったんです。その頃は意味もわからず、「これ聴いてたらかっこええやろ」みたいな感じだったんですけど、それが今の音楽につながるルーツになってるんですよね。

――現在はプロデュース活動や、DJとして活躍されていますが、DJに興味を持つようになったきっかけは?

下拓:高校の時にメロコアとかスカコアが流行ってた時代があったんですけど、その時に、昼間に学生イベントをクラブでやってたんですよ。その時に人のレコードを借りて、ちょろっと回させてもらったことがあって。最初は遊び感覚だったんですけど、高校2年の後半くらいから“本格的にDJをやってみたい”って思うようになった。その理由っていうのは、当時、付き合ってた子に失恋して、「見返してやろ!」と思ったことだったんですよね(笑)。遊び半分でターンテーブルを触るようになったのは“モテたい”という気持ちからでしたが、その事件があってから、本格的にやろうと思ったんです。

――下拓さんは歌うわけではなく、ラップをするわけでもなく、トラックを作って、フューチャリングしたアーティストの方に歌ってもらったり、ラップしてもらったりするというスタイルですよね。だから、『♯シモタクナウ』はコンピレーションアルバムのようでもあるんですけど、サウンドは一貫して下拓カラーで筋が通っていて。しかも、DJをやられているだけあって、15曲の流れも1グルーヴで聴けるようになっていますよね。いろんな方が参加されている曲はどうやって作り上げたんですか? 例えば1曲目の「ロック・ザ・パーティー」にはSWAY、Staxx T、APOLLO、寿君、KIRAが参加していますが。

下拓:この曲は下拓アンセムなので、僕と深くつながりのあるアーティストにお願いしました。このSWAYというアーティストは、彼の1stアルバムを手がけさせてもらった縁もあって。

――劇団EXILEで俳優としても活動されていますよね。

下拓:はい、そうです。その前は一緒に音楽を作っていた仲間なので、自分の作品のアンセムの時には必ず参加してほしいなと思っていたんですよ。KIRAは、彼女が2015年の2月にリリースした1stアルバム『LISTENER KILLER』でも僕がプロデューサーとして関わらせてもらっていますし、2013年から一緒に音楽を作っています。僕のスタイルっていうのはもともとはヒップホップのDJでありながらも、レゲエ的な要素も踏まえていて、作品にはレゲエのアーティストもヒップホップのアーティストも参加してもらいたいと思っていたので、その中で好きなアーティストとして、寿君とStaxx Tに声をかけさせていただいて。


――楽曲的には下拓さんのルーツを感じさせるようなものですよね。

下拓:うん。ロックはやっぱり好きなんですよね。もともと働いていたクラブ自体、ハウスもロックもヒップホップもレゲエもかかるようなハコだったんですよ。今のオールジャンルのハコとはちょっと違うんですけど、「月曜日はロックの日」とか、そんな感じになっていて。そこでいろんなジャンルの音楽を聴いて、「こういうジャンルもカッコええねんな!」って昔から思っていたんです。レコード自体もヒップホップだけじゃなくいろいろ持っていたんですよ。だから自分のアンセムになる楽曲にはいろんな要素を入れてみてもいいんじゃないかなと。時代の流れ的にも最近って、あまりジャンルを気にしなくなっていますよね。

――確かに。

下拓:昔は、“ヒップホップを聴いてる人はヒップホップ以外聴かない”とか、“ロック聴いてる人はヒップホップなんて聴かない”ということもあったけど、YouTubeとか、ネットで音楽が聴ける環境がどんどん大きくなっていって、案外みんな、どんなジャンルでも聴くようになったんちゃうかな?と思っているんですけどね。そういう時代の流れもあってこういう曲になったというのもありますね。この曲はアルバムを制作することが決まってから配信をスタートした第一弾だったので、作った時からアルバムの一曲目にしようと思っていたんですよ。

――2曲目の「DISOBEY」のTOCさんは、ヒルクライムのTOCさんですよね。

下拓:そうです。東京で活動してた時に繋がったんですよ。彼は新潟在住なので、僕が新潟まで行ってレコーディングしました。でも、大阪から新潟に行くには、飛行機と新幹線とバスがあるんですけど、飛行機だと往復で6万円くらいかかるんです。新幹線だと一回東京まで出て、そこから乗り換えて新潟まで行かなきゃならない上に4万くらいかかる。この曲のレコーディングの時は、ケチってバスで行ったんです。バスだと往復1万円なんですけど、10時間かかるんですよ(笑)。

――すごい! めちゃめちゃ時間かかりますね。

下拓:でもね、“この10時間の間に本とかいろいろ読んで、いろんなアイデア考えたろ!”と思って。しかも、着いたのは朝の8時。レコーディングは12時からだったから、それまでやることがない。どうやってヒマを潰そうかと思って、24時間営業のスーパー銭湯とかサウナがないかネットで調べたら見つかったんです。「湯○○」っていう名前だからスーパー銭湯だと思ってたら、「うち湯船ないんですけど、大丈夫ですか?」っていうんですよ。岩盤浴やったんです(笑)。そこで3時間時間を潰したんですけど、レコーディングは1時間くらいでさっくり終わって。帰りのバスの時間までにはTOCが一緒に飯行ったり、服屋さんに連れてってくれたりしたんですけど、結局、移動時間の合計は往復20時間で滞在時間は5時間だけという(笑)。

――この曲は、ほとんど移動の思い出ですね。

下拓:でも、移動中にいろんなアイデアを考えることができたんですよ。“こんなことやったら面白いんちゃうか?、あんなことやったら面白いんちゃうか?”って。普通に生活してたらいろんな人から電話がかかってきたりとか、目の前にあることをとりあえずやろうと思うじゃないですか。でも、移動中ってそういうことができないから、普段考えないことを考えられたりするんですよね。だから、いい時間やったんやないかなって。ちょうどアルバムの最後の段階だったから、“あとはこういう曲がいるな”とか。

――その時に作戦を練って作った曲というのは?

下拓:「TSUBASA」「生~NAMA~」「ロンリーナイト」「Be Alright」ですね。やっぱりアルバムの中には遊び心がいるんじゃないかと思って「生~NAMA~」みたいな曲ができたり。自分自身、真面目ばかりでもなく、ふざけた部分もあるので、自分のアルバムとして表現するにはアホなところも必要なんかなと思って、かしわをフューチャリングに選んだんですよ。おもろいことをやるならコイツがええんちゃうかなと。

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