演歌を知らない世代が作るボカロ演歌に期待、小林幸子が「VOCALOID4 Library Sachiko」発売記念イベントに登場

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小林幸子の声を元に制作されたVOCALOIDライブラリ「VOCALOID4 Library Sachiko」の発売記念イベントが、28日に開催された。小林幸子が登場し、製品への想いや制作秘話を語った。

◆小林幸子~画像~

7月23日に発表され、25日には早くもダウンロード販売が開始された「VOCALOID4 Library Sachiko」。その発売記念イベントは池袋池袋P'PARCOの「ニコニコ本社 イベントスペース」で行われた。冒頭では、ヤマハVOCALOIDプロジェクトリーダー石川克己氏が「歌詞とメロディラインを音符を並べることで歌声を合成・再現するソフトウェアと技術の名前」とVOCALOIDを説明。人間の歌声を収録し、その中から歌を合成するのに必要な部品を取り出し、集めたものが歌声ライブラリであり、音が変わる部分や伸ばす部分全部をとっていくと日本語で500個の音の部品が必要となる。そして、今回の制作にあたっても約500個の音の部品が小林幸子の協力で収録された。


▲ライブラリの制作には声が移り変わる部分と伸ばす部分などすべての音素の組み合わせが必要。日本語では500個、英語では2500個が必要となる。

開発にあたっては「VOCALOIDの発表から15年が経過し、プロジェクトの中でも歌の力という原点に帰りつつも新しい境地を開拓したいという強い思いがあった」とし、「その中で新しい音楽や文化、コミュニティに積極的にアプローチしており、圧倒的な歌声を持っている小林幸子さんとコラボ」できないかということで、今回の企画に至ったことが紹介された。


そして、いよいよ小林幸子が登場。「VOCALOID。正直言ってすごく不思議な気持ちです。そして、とってもうれしいです。お話をいただいた時に最初は戸惑ったんですが、お話を聞いて、ではぜひ、という形で。いろんなジャンルのみなさまに楽しんで、挑戦していただければと思います。新しい挑戦でとっても私もうれしいです」と挨拶。最初のオファーについては「ヤマハの剣持さんから『幸子さんのVOCALOIDを作りたいなと思ってるんです』とお話をいただいて、ほんとですか? じゃあ、私が初音ミクちゃんになるんですか? って言ったら『そうです!』って言われて……」と語られた。また、レコーディングについては「50年歌を歌わせていただいて、こういうレコーディングははじめて経験しました。レコーディングっていうと歌をうたう、メロディをうたうっていうことだと思ってたんですが、まったく違います」と膨大な熟語や擬音のようなフレーズを録音するVOCALOID特有の収録方法への戸惑った様子。「普通のレコーディングの時だと、私は時間をかけても声はかすれないんですが、VOCALOIDのレコーディングの次の日はからっからになりました」と笑いながらも苦労を語った。

続いて、レコーディングから開発を担当したヤマハVOCALOIDプロジェクトの吉田雅史氏と石川氏によるデモンストレーション。VOCALOID Editorで入力したSachikoの歌声が流れると、「私だ」と思わず笑みがこぼれる小林幸子。さらにSachikoの真似をして歌い、「どっちだかわかんなくなってしまいます」と笑わせる。「誰もが歌声をご存知の小林幸子さんということですので、逆にそれをクリエイターの方々、作曲家の方々にお届けするにはどういう歌声が一番みんなハッピーになれるかということを考えて、コンセプトを決めることから始めました」とは吉田氏。


▲音符や歌詞を入力して歌声を作成するVOCALOID Editorによるデモンストレーション。その歌声を真似て小林幸子が歌う場面も。解説はヤマハVOCALOIDプロジェクトの吉田雅史氏と石川克己氏。

こぶしやしゃくりといった小林幸子の歌い方を再現するジョブプラグイン「Sachikobushi」については、「幸子さんの歌い方、節回しまで、もっと深いところまで表現できないかというところから始まったもの」「幸子さんの歌をヤマハで預かってどんな歌い方をしたら幸子さんになるんだろうというのを徹底的に研究しました」と解説。これを適用すると、歌い出しのピッチの変化や伸ばす部分のビブラートなど、より小林幸子ならではの表現に近づくことが示された。

パッケージなどに使用されるキャラクターについては、「ほんとに若くねっ、もうきれいにねっ、ぴちぴちで描いていただいてほんとうれしゅうございます」と小林幸子。ロゴの「Sachiko」の筆文字は小林さんによるものだ。キャラクターデザインを手がけたイラストレーター碧風羽(みどり ふう)さんからのコメントも紹介。「リアルとネット上で縦横無尽にご活躍されていらっしゃる小林幸子さんの姿から戦う女声をイメージしつつ、強めのまなざしを意識しながら、近代的な和の要素をふんだんに盛り込ませていただきました」。


▲キャラクターの髪飾りは小林さんの出身地新潟県の県木であり小林さんの歌のタイトルにもなっている「雪椿」。

質疑応答では、「VOCALOID4 Library Sachiko」には、歌声ライブラリのほか「歌います!」「レッツゴー」といった400種類以上のボイスマテリアルを収録するが、実際は800種ほどがレコーディングされ、その中から厳選されたことも紹介。英語データベースの制作についても「前向きにがんばっていきたいと思います」と意欲を見せた。また、歌声を徹底的に研究してデータベースが作られたことについては「ものすごくいやですよ。もうね裸にさせられてるようなもんですから(笑)。すごくいやなんですけど、知らないところでもう(裸に)されておりましたので(笑)。最初にお話をいただいた時に全部おあずけしますという形で」「ただ裸の音だけをずーっと聴いているのを、横で聞いていてすごく恥ずかしかったです」と収録時のエピソードを披露。さらに囲み取材では、開口一番「小林幸子、初音ミクちゃんになりました!」と取材陣を笑わせつつ、ボカロ曲ならではの息継ぎができないような曲にも挑戦したいと語った。

イベントでは小林幸子のオリジナル曲である「星に抱かれて」「Sachiko」で制作された歌声も披露された。「私かな?と一瞬思ったんですけど……。自分ですから自分ではないということはわかりますけれど……。不思議ですねえ。この詞はなかにし礼先生なんですが、先生、これ聴いてどんなふうに思うんでしょうね(笑)」「いやあ。でもすごいですね。ほんと。不思議です」と驚きを隠せない様子だった。なお、この曲は現在YouTube、ニコニコ動画で聴くことができる。本人が驚いたその歌唱力をチェックしてほしい。

「小林幸子でどういう歌ができるか? もちろん、こぶしの入った……。もしかしたら演歌を知らない世代の人達が、その人達が作る演歌はこういうものという世界が新たにできあがるかもしれないですね。それはとっても幅が広がるという意味で。聴いてみたいですね」と、Sachikoによる新しいボカロ曲の登場に期待を寄せる小林幸子。さらに「私自身ではなく、動画で、アニメで……やっていただくこともできるわけですよね。それはすごく楽しいですよね」とこれから出てくるであろうSachiko動画への興味も示した。「どんな小林幸子像で、どんなイメージの小林幸子で歌わせてくれるのか、わくわくしています」「ジャンルも国も問わず、小林幸子のVOCALOIDをみなさんに楽しんでいただければと思っております」。


製品情報

◆VOCALOID4 Library Sachiko(パッケージ版)
価格:オープン
発売日:2015年8月下旬
◆VOCALOID4 Library Sachiko(ダウンロード
価格:オープン
発売日:2015年7月27日


関連動画

◆デモ曲動画
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