【FUJI ROCK'15 ロングレポート】邦楽の増加&オレンジ・コートの廃止にも揺るがなかった夏フェス王者の風格

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さて、2015年の邦楽勢のハイライトのひとつが、椎名林檎だった。椎名林檎含めステージ上の全員がレトロな白い衣装というコンセプチュアルな景色からして、登場時より一瞬でオーディエンスの心をつかんでいた。英語詞の「丸の内サディスティック」のとびきりの妖艶さ、腰を思い切り曲げしゃがみ込むように歌った「罪と罰」の切実さ。“声色”という言葉に合点がいくような、めくるめく歌唱のバラエティ。そして、その美しい一挙手一投足。頭のテッペンからつま先まで神経の行き届いたその立ち振舞いまでもが、120パーセント、ここに来た私達オーディエンスに向けて丹念に練り上げ創りあげられた産物なのだということがわかる。ため息モノだ。椎名林檎がグッとパフォーマンスに集中すればするほど、オーディエンスも息を飲む。とても幸せな構図を描いていた。



「能動的三分間」が潔くバシッと終わると、そのままこちらも浮雲との歌の絡みがある「長く短い祭」へ。この甘美なトランス感に身を委ねていると、GREEN全体が突然「わぁ!」となった。突き抜けるような青色のレオタード姿に生着替えした椎名林檎であったが、その姿にはセクシーさよりは度胸を思った。大が付くほどのサービス精神で、椎名林檎はいつでも全力でお客さんを楽しませる。短尺のMCでは、「トッド・ラングレンご覧になられました?」と喋り、この日、ピタッとしたタンクトップ姿でエレポップを奏でながら実際にWHITE STAGEでトッド・ラングレンがやっていたチャーミングなフリも、一瞬お茶目に真似していたように見えた。



音響のよさで定評のあるWHITE STAGEでも、名ステージが多かった。前述のトッド・ラングレンの直前、同じWHITE STAGEに立ったのがceroだ。彼らは2011年にROOKIE A GO-GOに出演し、そのライブが認められ、翌年にはHEAVENに登場、そして今年という出演ストーリーを描いている。本当に目が痛くなるほどに太陽が照りつけていた頃、12時40分からステージは始まった。特に「マイ・ロスト・シティー」がそうだったが、いつにも増してceroのブラックなビートが灼熱の中で本能に身を任せて目をギラつかせてるようだった。とってもスリリング。そのハイクオリティーな音楽的狂騒に、いくら身体から汗が吹き出てこようとも、その場から離れられなかった。

その前日の20時からWHITEで行われたクラムボンのステージも、美しいサウンドスケープを描きまくっていた。




「KANADE dance」では、原田郁子の鍵盤の連打に感動的なほどスピリットが宿っていた。「波よせて」では、始まる前にミトが「もう最近は、カラオケ状態だから(笑)! みんな歌ってね」と言うと、「ウェイバ~ウェイバ~ウェイバ~」と会場も応えて大合唱。ライブで演者と観客がどんどん呼応していくこの感じ。そしてラスト、フィッシュマンズの「ナイトクルージング」でみんなの心が苗場の夜空に開放されていくまで、すべての瞬間が創造的なステージだった。

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