【インタビュー】ソウルフライ「こんなアルバムは滅多に作れるものではないよ」

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現代ヘヴィ・ロックを代表するカリスマ、マックス・カヴァレラ率いるソウルフライが新作『アークエンジェル』をいよいよ8月14日に発表する。よりヘヴィさを増したメタル・サウンドに加えて古代の神話や宗教をモチーフにした音楽性は、記念すべき第10作にして、新たな世界観を提示するものだ。ソウルフライと並行してカヴァレラ・コンスピラシー、キラー・ビー・キルドという2つの別プロジェクトでも活動するなどハードなスケジュールをこなすマックスだが、その語り口からは熱気が伝わってくる。彼は新作について雄弁に語ってくれた。

◆ソウルフライ画像



──ソウルフライとしての前作『サヴェイジズ』を2013年に発表してからカヴァレラ・コンスピラシーとキラー・ビー・キルドでのアルバムを発表、ツアーも行って、2年でソウルフライの新作を発表するハイペースの活動に驚いています。高いテンションをキープし続ける秘訣は何でしょうか?

マックス・カヴァレラ:秘訣なんてないよ。そうすることが自分にとって一番自然だったんだ。『アークエンジェル』はソウルフライの10枚目のアルバムだから、特に気合いが入っていた。ロック・バンドをやっていて、10枚もアルバムを出すことは難しい。だから特別なアルバムにしようと考えていたし、実際そうなったと思う。ソングライティングもスムーズで、どんどんアイディアが浮かんできた。カヴァレラ・コンスピラシーやキラー・ビー・キルドでも曲をたくさん書いたけど、まったく別のモンスターだったよ。プロデューサーのマット・ハイドも俺のソングライティングのベストな部分を引き出してくれた。自分をサポートして、背中をプッシュしてくれる仲間がいることも重要だったんだ。

──むしろ幾つもプロジェクトを同時進行していた方が刺激を受けるのでしょうか?

マックス・カヴァレラ:俺はいつだって複数のプロジェクトを同時進行させているから、特に刺激を受けるということはなかったな。それと関係なく、俺はいつも刺激を受けている。日常生活でも、刺激はいくらでもあるんだ。テレビをつけるだけで戦争やテロ、殺人や犯罪のニュースが入ってくる。怒りや悲しみが、表現に結びつくんだ。

──『アークエンジェル』はどんなアルバムですか?

マックス・カヴァレラ:ヘヴィでパワフル、エキゾチックで神秘的で、ソウルフライの音楽性を継承しながら、新しい境地に踏み込んでいくアルバムだ。長いあいだミュージシャンをやってきたけど、こんなアルバムは滅多に作れるものではないよ。ソウルフライだけでなく、俺の音楽キャリアにおいても代表作のひとつだと考えている。

──アルバム収録曲はいずれもコンパクトで短めですが、密度が濃いですね!

マックス・カヴァレラ:俺はスラッシュ・メタル世代だし、言いたいことがあればすぐ言うタイプなんだよ。10分もある曲を演る忍耐力なんてない。でも、それをできるバンドもいるんだ。マストドンは長い曲でもまったくスリルとテンションが落ちないバンドだよ。「えっ、もう10分経ったの?」と驚いてしまう。俺には出来ないことだよ。でも俺には、37分の超ハイテンションなアルバムを作ることならできる。『アークエンジェル』は一気に聴けて、飽きる瞬間がまったくない作品だよ。

──メソポタミアの女神イシュタルや太陽神シャマシュ、ギリシャ神話のタイタン、キリスト教のベツレヘムや「ソドマイツ」での聖書への言及、「アークエンジェル」ではカバラのマルクト/ゲブラなど、さまざまな宗教が題材とされていますが、それはアルバムを通じてのテーマあるいはコンセプトなのでしょうか?

マックス・カヴァレラ:俺は歴史や神秘主義、神話などに興味があるんだ。聖書もそうだし、エジプトやメソポタミア、アッカドやバビロニア…そんな要素がアルバムの歌詞に表れている。『アークエンジェル』に先駆けて、メソポタミア神話についての本とか、読書もよくしていたし、プロデューサーのマット・ハイドもカバラに興味を持っていた。その影響もあるだろうね。ただ、いわゆるコンセプト・アルバムではないよ。「ウィ・ソールド・アワー・ソウルズ・トゥ・メタル」はメタルに捧げた讃歌なんだ。それに「リヴ・ライフ・ハード!」はツアーに生きる日々について歌っている。人生、楽して暮らすつもりはないってね。キツい道を、地獄に向かって突っ走っていくんだ。

──「アークエンジェル」のイントロに入っている言葉は何を言っているのですか?

マックス・カヴァレラ:知らない(笑)。これはアラム語なんだ。イエス・キリストの時代の言語だよ。意味は判らなくても荘厳な雰囲気が気に入ったんだ。旧約聖書の中の祈祷じゃないかと思うけどね。大事なのはムードだよ。「ベツレヘムズ・ブラッド」のショファーも、雰囲気を出すために使ったんだ。イスラエルの山岳地帯に住む人々がユダヤ教の儀式に使う、山羊の角で出来た楽器だ。そのおかげでアルバムはより色彩豊かになったと思う。

──全編ヘヴィでエクストリームなサウンドが貫かれていますが、随所でディテールへのこだわりが感じられます。「アークエンジェル」のブリッジでの反復フレーズとか…。


マックス・カヴァレラ:それはマーク(・リッゾ/ギター)のプレイだよ。昔のファミコンみたいだから、“ニンテンドー・ギター”と呼んでいるんだ(笑)。マークは「ライズ・オブ・ザ・フォールン」(2010年発表ソウルフライ7thアルバム『オーメン』収録曲)でもこういうプレイをしているよね。他のバンドでは、GOJIRAも似たようなフレーズをやっているのを聴いたことがある。この曲ではベヒーモスのネルガルにゲスト参加してもらおうかと考えていたけど、結局自分たちでやることにした。マット・ハイドが彼らのアルバムをプロデュースしたからつてはあったんだけど、もう1人のヴォーカルが入るとトゥー・マッチだからね。

──ボーナス・トラックでナパーム・デスの1秒の曲「ユー・サファー」をカヴァーしていますが、何故この曲を選んだのですか?

マックス・カヴァレラ:ナパーム・デスにはアティテュードがあったけど、それだけではなく、ユーモアもあった。そんなところに共鳴するんだ。正気の人間だったら「ユー・サファー」をカヴァーしようなんて思わないだろ?だから俺たちがやることにしたんだ。ザイオン(・カヴァレラ/ドラマーでマックスの息子)はまた新たに曲を覚えなくて済むと喜んでいたよ。神に感謝を捧げていた(笑)。イントロの声は孫のロキだよ。俺の娘ロクサーヌの息子なんだ。スタジオをちょろちょろしていたんで、しゃべらせることにした。

──もうお孫さんがいるんですか!

マックス・カヴァレラ:うん、もう5人いるよ。俺はグランパ・マックスなんだ(笑)。

──『アークエンジェル』に伴うツアーについて教えて下さい。

マックス・カヴァレラ:9月の終わりからソイルワークとディキャピテイテッドと一緒に北米をツアーするんだ。<ウィ・ソールド・アワー・ソウルズ・トゥ・メタル・2015・ツアー>というクールなタイトルだよ。ドラムスはザイオン、ベースはイゴールJrという、俺の息子2人が参加する。もちろん縁故採用ではなく、彼らが凄腕ミュージシャンだから迎え入れたんだよ。マークも血は繋がっていないけどブラザーだ。ソウルフライはファミリー・バンドというか、マフィアみたいなものだよ。2016年はずっとソウルフライのツアーをやるから、このラインアップで日本に行きたいね。

取材・文 山崎智之
Photo by Hannah Verbeuren

【メンバー】
マックス・カヴァレラ(ヴォーカル / ギター)
マーク・リッゾ(ギター)
トニー・カンポス(ベース)
ザイオン・カヴァレラ(ドラムス)

ソウルフライ『アークエンジェル』


2015年8月14日発売
通販限定CD+DVD+Tシャツ 6,000円+税
初回生産限定盤CD+DVD 3,900円+税
通常盤CD 2,500円+税
1.ウィ・ソールド・アワー・ソウルズ・トゥ・メタル
2.アークエンジェル
3.ソドマイツ(feat.トッド・ジョーンズ[ネイルズ])
4.イシュタル・ライジング
5.リヴ・ライフ・ハード!(feat.マット・ヤング[キング・パロット])
6.シャマシュ
7.ベツレヘムズ・ブラッド
8.タイタンズ
9.ディシーヴァー
10.マザー・オブ・ドラゴンズ(feat.リッチー・カヴァレラ[インサイト]/イゴール・カヴァレラ[ロディ・コング、アナヒドM.O.P])
11.ユー・サファー(初回盤限定ボーナストラック)
12.アコサドール・ノクターン(初回盤限定ボーナストラック)
13.ソウルフライ X(初回盤限定ボーナストラック)
DVD*初回限定盤のみ
1.カンニバル・ホロコースト
2.リフューズ/レジスト
3.ブラッドシェッド
4.バック・トゥ・ザ・プリミティヴ
5.シーク・ン・ストライク
6.トライブ
7.ライズ・オブ・ザ・フォールン
8.リヴェンジャンス
9.ルーツ・ブラッディ・ルーツ
10.ジャンプダファックアップ/アイ・フォー・アン・アイ
*2014年フランス“ヘルフェスト”にて収録

◆ソウルフライ『アークエンジェル』オフィシャルサイト
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