【インタビュー】Astell&Kernとbeyerdynamic、共同開発のテスライヤホンAK T8iE誕生秘話

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Astell&Kern(アステルアンドケルン)から、新たなイヤホンAstell&Kern AK T8iEが発表された。beyerdynamicとのコラボレーションによって誕生した、世界初のテスラテクノロジーを採用しているカナル型イヤホンだ。

◆AK T8iE画像

2015年9月4日~9日ベルリンで開催されるコンシューマーエレクトロニクス最大級の展示会IFAにて初お披露目となるもので、独ハイルブロンにあるbeyerdynamicの本社にて、手作業により設計・開発された新モデルだ。テスラヘッドホンの特徴であるリング型のマグネットは、リファレンスモデルである「T1」の約1/16に小型化され、可動コイルは透けて見えるほど薄い加工が施されている。高効率と高い再現力をトランスデューサ―にもたらし、テスラ技術を導入することで、全帯域においてニュートラルで正確なサウンドを描き出し、多くのイヤホンで難しいとされる厚みのある低域再生と洗練された高域再生を可能にしたという。


当然AK T8iEは、ハイレゾ再生においても理想的な特性を備え、24bit音源であるスタジオマスターやビットストリームレコーディングにおける微細にわたる楽曲データの再生で、より一層の真価を発揮するとのことだ。

ケブラー素材で強化された着脱式ケーブルは、40,000回の屈曲が想定され、ハウジングには肌に優しく且つグリップしやすいクロム合金が採用されている。これらの技術は自動車や医療分野を参考としたものだとか。また、完璧なフィット感を確保するために、様々な外耳道の測定を行い、AK T8iE用に特別なイヤチップが開発されている。5つのサイズからなるシリコンイヤチップは、それらが楕円形の形から自らがねじ込む事でフィットするイヤ―カナルに変形する。違和感無く快適にフィットし、イヤーモニターの様に後ろから耳の上にかける装着方法により、更に安定したフィット感を実現する。



──何がきっかけで2社が共同で行うことになったのでしょうか?

Wolfgang Luckhardt(beyerdynamic):我々には共通したゴールがありました。両社は妥協の無いハイエンドサウンドのために努力をし、似たフィロソフィーを追求しています。きっかけは、2013年のbeyerdynamicとAstell&KernのコラボアンプであるA200P(*日本未発売)です。ここで得た経験から前向きにもっと他のことを進めたいと考えました。

Henry Park(Astell&Kern):Astell&Kernのプレーヤーは最高品質のヘッドホンを求めます。beyerdynamicは正に最高品質のヘッドホンとして、相性が良い製品だと思っています。beyerdynamicはMade in Germanyが成しえる高い品質がブランドコンセプトの根幹だと考えています。ドイツ製品は世界中でも評判が高く、特にAstell&Kernブランドのホーム市場となるアジアでも高い評価を得ています。故にA200Pのローンチ後に、次なるコラボモデルであるbeyerdynamicのT5pをベースにし、我々の特定の要件を反映したAKT5pを続けてローンチしたという経緯があります。

──新モデルであるAK T8iEは、全てドイツ製でしょうか?

Wolfgang Luckhardt(beyerdynamic):はい、そうです。AK T8iEに採用したトランスデューサ―や、beyerdynamicの独自技術であるテスラテクノロジーも含め、全てがドイツ製です。デリケートなパーツをも開発・生産するために、ハイルブロンに専門知識をもったスタッフと設備を備えています。

──テスラ変換器を小型のイヤホンに導入することは、かなりの挑戦だったのでは?

Wolfgang Luckhardt(beyerdynamic):はい、今回の超小型化はすばらしいチャレンジとなりました。オンイヤーヘッドホンT50の開発の際、既にそれなりの小型化には成功していましたが、今回のAK T8iEで、私達は更なる小型化を実現しました。テスラテクノロジーの特徴である環状の磁石は、T1の1/16のサイズとなります。そして可動コイルは透けて見えるほどの極めて薄い加工が施されています。このような開発は一晩では成しえません。AK T8iEの開発は2013年の夏からスタートしました。

──Astell&Kernは、AK T8iEの開発にどの程度関与していますか?

Henry Park(Astell&Kern):我々のチームは、堅実なサウンドチューニングに貢献しました。その際、AK380をリファレンスプレーヤーとして使用しました。AK T8iEは我々のオーディオプレーヤーのバランス出力にも対応しており、私達はその接続でチューニングに関与いたしました。信号伝送に関わるノイズは最低限となります。ヘッドホンとミュージックプレーヤーの接続でこれより良い接続は存在しないでしょう。

──他の高品質イヤホンと比較した時、AK T8iEはどの様な音響的アドバンテージがありますか?

Wolfgang Luckhardt(beyerdynamic):シングルドライバーで、全ての周波数帯域を伝送します。バランスドアーマチュア(BA)ドライバー搭載のイヤホンとは対照的に、帯域ごとに異なるドライバーを使用せずに深い低音から最も高い高音域まで、ワイドレンジ再生を可能にしています。その上、我々のテスラトランスデューサーは、非常に高効率です。

──ハウジングの形状は、ステージ用インイヤモニターを想像させます。

Wolfgang Luckhardt(beyerdynamic):甲介デザイン(耳甲介)と、インイヤモニターの様な後ろから耳の上にかける装着方法を採用しました。11mm径のテスラドライバーを収容するために、ある程度のハウジング容積が必要となりますが、楕円の甲介の型により、簡単に、快適な装着が可能となります。そして後ろから耳にかけるのでケーブルを引っ張って耳から落ちることもありません。

Henry Park(Astell&Kern):サウンド以外の点で、完璧な装着感は大きな目標の1つでした。イヤホンケーブルも耳の上に優しくソフトな装着感をもたらします。beyerdynamicとAstell&kernは、世界中の人々の様々な外耳道を計測し、人間工学的にイヤチップがスムーズにフィットする様に最適化しました。5つのサイズのユニークなシリコンチップと、S・M・Lサイズのコンプライによるイヤチップが付属しています。

──主要な販売市場を設定していますか?

Henry Park(Astell&Kern):beyerdynamicは世界的なブランドで、アジアにおいても非常に高い評価を得ています。我々のブランドも基本的にはアジアを中心に展開しており、アジア地域は非常に相性の良い地域だと考えております。全てのヘッドホンが発信される地域の一つである欧州にももちろん焦点を合わせていますし、オーディオファイルのポテンシャルが高い米国にも目が離せません。

──次のプロジェクトは既に計画されているのでしょうか?

Wolfgang Luckhardt(beyerdynamic):beyerdynamicとAstell&kernは、今後もコラボレーションを続けていく予定です。実際に他の製品の準備もすでに進行中です。これは9月末にCanJamヘッドホン・ショーに出展する予定ですが、これ以上の情報はお出しする事ができません。


▲Wolfgang Luckhardt(beyerdynamic)


▲Henry Park(Astell&Kern)

製品の詳細、及び日本での発売日/発売価格は現時点では未定だが、また楽しみなモデルがひとつ誕生したようだ。
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