【連載】中島卓偉の勝手に城マニア 第38回「白河小峰城(福島県)卓偉が行ったことある回数 2回」

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東北の城は総石垣の城は少ない、が、無くはない。福島にもちゃんとあるのだ。初めて来城したのは小学生の頃で、時は80年代半ば、バブル寸前、もうすぐバンドブーム、もうすぐ誰も彼もが浮かれるそんな頃。現在は天守と言える御三階櫓が木造で復元されているが(1991年復元、中島卓偉13歳中学1年生 PUNKの洗礼受けた頃である)、当時は石垣と堀と土塁のみの白河小峰城であった。その状態の小峰城を見れたことは城マニアとしての誇りである。もちろん今こうして復元天守がそびえてることも心から嬉しい。素晴らしいことである。しかもちゃんとデータ通り、木造復元。私の大嫌いな単なる外観復元ではなく、すべてを木造で建てたことに拍手だ。復元に関わったすべての人達はわかっている人達である。


築城は1340年とされているが、城として完全に機能したのは丹羽氏が治めていた頃1600年代に入ってからだと言える。丹羽氏による城の増築で現在の小峰城の約3倍の大きさ、縄張りをほこっていた。埋め立てが行われてどうしてもその大きさが伝わらない、白河小峰城をこじんまりとした城だと思ってもらっては困るのだ。白河の駅周辺、搦手側である阿武隈川と逆の方角のもっともっと先に外堀を引き(線路の向こう側)そこがいわゆる大手であった。白河の駅の城下町を歩けば当時は城の中だったとわかるくらい道がはっきりしている、それが面影として残っていることに私はまず注目したい。

幕末を迎えてもある程度建造物が残っていた小峰城だったが1868年の戊辰戦争により大半を焼失してしまう。同じく福島県会津若松城も同じである。これは非常に残念なこと。前にも書いたが仙台城の大手門なども空襲で焼けてしまっており、そういった歴史的な建造物がほぼ明治初期から終戦寸前までにかけてほとんど無くなってしまっている。そのせいで東北は建造物が残ってないぶん歴史が薄いように思われる、FUCK OFFである。東北なめんな。建物が存在しないからどうこう言うのはおかしな話である。イマジネーションが足らん奴らの言い草である。西武線にあるのは下井草である、もちろんお隣りは上井草である。このブログの支持率はお笑いぐさかもしれない。

何度も言うが歴史は研究者の言ったもん勝ちなところがある。だからそういった発言はすべて私は撤回したい。まずは小峰城と同じく福島県会津若松城、岩手県の盛岡城を総石垣の東北3大名城などとよく書かれているがこれはなんだ?知るか。誰かが勝手にそう言って決めたんだろうが、それはマジで間違ってる。この3つの城を決して否定してるわけじゃない。全部大好きな城だ。だが、そう言ってしまって、じゃあ仙台城どうなる?弘前城はどうなる?福島県だって二本松城は総石垣じゃねえのか?山形城だって本丸の石垣すげえ残ってんぞ?九戸城だって本丸は石垣じゃねえか?(これだけ言えば私がいかに城キチガイかがわかるのでわざと書いてみる)


おかしいのである。そういうふうに断言するのはやめよう。東北にもいい城はたくさんある。総石垣の城もたくさん残っている、土塁と堀だけでも最高な城はたくさん残っている。それでいいではないか。卓偉は才能がある、それでいいではないか。そうしよう。卓偉は歌が上手過ぎる、それで構わないではないか。詞も曲も書けて楽器も弾けてパフォーマンスも出来てべしゃりもイケてて、文才もある。世の中は本当に不公平ですよ、ね!

さてそんな白河小峰城。まず、その名前がかっこいい。その響きが、その漢字の画数が、本当にかっこいいと思うのだがいかがだろうか?漢字で書いてかっこいい名前、これ非常に大切だ。

矢沢永吉、森重樹一、吉川晃司、中島卓偉。

氷室京介、布袋寅泰、松井常松、高橋信、中島卓偉。

和田唱、奥田民生、斎藤和義、山下達郎、中島卓偉。

櫻井敦司、今井寿、加藤茶、保~流 真っ赤~都煮~。中島卓偉。など、だ。

ガキの頃、歴史の本でこの城の名前を知った時、なんてかっこいい名前の城なんだ!と興奮した。絶対イケてる城に違いないと思ったのだ。行ってみるとまさに期待を裏切らない最高の城だった。

小峰城の石垣をよく見てみるとわかるが、打ち込みハギのようで実は結構な割合で亀甲積みが施されていることがわかる。石の積み具合が見事に円の形に積んであることがわかる。清水御門を超えた本丸の石垣など亀甲積みがはっきりと垣間みれる。これは入城者を威圧する鷹の目にたとえられる。


東北大震災でその石垣の大半が崩れてしまい、ここ最近まで来城がなかなか出来なかった小峰城だが、天守御三階櫓は奇跡的に壊れずにすんだという。だが今でも前御門の下ら辺などの石垣の崩れ具合は激しい。本丸もコーナーにはそれぞれ櫓台があるが、そこに登って観光することはまだ出来ない(2015年現在)初めて来た時は本丸に上がったら多門櫓の跡など本丸の土塁をぐるりと一周して白河の街を一望出来たりもしたのだが。これからに期待である。これまでは清水御門跡を抜けると右手に廻れば天守の手前の前御門に(これも1991年復元、いわゆるKATZEが解散した年)行けたのだが、石垣の崩れが激しく、今は歩けない。よって清水御門を超えたら左手に廻り、櫻御門跡を登って本丸に行くという道順になっている。KATZEの「STAY FREE」から入るんじゃなく「LOVE IS HERE」から入る、に近い。

そもそもこの清水御門、これは非常に大きな門であった。卓偉の心と同じくらいに。その横幅、圧巻である、本丸下の曲輪に行くにあたって、これほどの門を潜るのは威圧感も半端無かっただろう。卓偉の歌唱力くらい半端無かっただろう。もしこの門が現存していたら……これまたとっくに国宝だったはずだ。KATZEが解散せずにもう一枚シングル、もう一枚アルバムを出していれば大ブレイクだった、に近い。

櫻御門も当時のデータがしっかり残っているので復元に期待したい。もっとも本丸の正面入り口は天守の下の前御門で、櫻御門は搦手口、裏口とまではいかないが、本丸の横から出入りする生活によく使われた門だったはずだ。門は来客に合わせて普段は閉めたままということもよくあるのだ。よって、使いやすく、さほど大きくない門を使うことが多かったという。

本丸も今となっては芝生になっているが、ここに面積を目一杯使った本丸御殿が建っていたことをイマジンしてほしい。その正面玄関もやはり前御門を潜った先にあった。本丸は高い石垣で覆われているので(本丸側から見ると土塁)安土城の本丸御殿同様、見晴らし、日当りも良くはなかったはず、だが、そこには外からは見えないがしっかりとしたでかいお屋敷が存在していたのである。その存在は知っているが誰もライブを観たことがない中島卓偉と、まあ近い。

天守御三階櫓はこの本丸で一番高い場所にあり、80年代当時は櫓台だけだったがいざ復元されてみるとやはり存在感が素晴らしい。幕府に遠慮して天守と呼ばず御三階櫓と呼んだとあるが、しっかり天守だと私は思う。丹羽氏の頃の復元絵図なども見たことがあるが、他の櫓の大きさと比べても大きさの規模が違うことがわかる。もちろん日本全国で見たら小さい方に入る天守であるが、復元された天守の堂々とした風貌に二度目に来た時は素直に感動した。これが本当の街のシンボルだと思うのだ。この変化、そして進化。それはまるでKATZEがデビューして最初の3年はテディボーイだった天才ボーカリスト中村敦さんが最後の1年は髭面で超ヒッピーなファッションでロックしてた感覚に実に近い。

しかも天守の見学が「ただ」ときてる。無料ほど高いものはない。私もCD発売記念で各地でインストアイベントなど行わせてもらうが観覧は無料と言うだけでまあ人が集まる集まる。ワンマンライブを宣伝しても渋る渋る。

修復などを終える度に、世界遺産になることによってどんどん見学の値段が上がる城が多い昨今、小峰城の天守の見学はただ、これは拍手喝采である。卓偉もライブのチケットは学割を行っている。学生はもぎりの場所で学生証を見せれば1000円キャッシュバックである。おかげで事務所は火の車である。

天守入り口の周りには玉石が集められており、そのセンスも素晴らしい。玉石、玉砂利って日本的、実にしゃれおつだ。中島卓偉の普段着とステージ衣装と同じくらいしゃれおつだ。

中を拝見させてもらうとまず一階のコーナーには石落としが。石落としとは何か?いい質問だ。


これは主に建物のコーナーなどに(コーナーじゃないところにもあるが)その建物よりも出っ張らせたコンパクトな塀みたいなものを張りつけ、石垣を登ってくる者に対して中から石などを落とし、登ってこれないようにする仕組みになっている。いざ戦となれば石どころか熱湯や、人間のクソまでも落としたというからこれはもう登る方も落とす方も命がけだったはずだ。80年代のむしろ風雲たけし城のようで面白い。クソをかけられた兵士はそれでも諦めず登ってきたのだろうか?それともクソ投げ付けられてやる気を無くしたか。やる気を出すやつはどう考えてもおかしい趣味のやつだ。

いろんな城に残っている櫓や天守の中を見学すれば大抵この石落としがある。是非防御する方になって覗いてみてほしい。

天守二階部分、そして最上階の三階部分、これはまた階段がおもくそ急である。戦国時代の建造物の階段は何故こんなに急な作りなのだろうか?登りづらくてしょうがない。城の最上階は花札が出来そうな8帖くらいのコンパクトなスペースになっているが最上階にも関わらず窓が小さい為にいまいち見晴らしがよくない。外の景色を一望出来るわけじゃないのである。これは聞くところによると福島も冬は当然極寒、窓がでかいとその分見張り役も風が入ってきて寒くてしょうがない。天守に限らずだが極寒対策で城の建物の内側と在り方、外側のデザインも含め建てられていたなんて実に粋な話ではないか。他の櫓や門が残ってないので全部が全部そういった小窓方式で建てられたわけじゃないにせよ、大概の城はどんな建物も同じようなデザインで統一する場合がほとんどなのでそれをイマジンするだけで非常に楽しい。

個人的に思うのだが、もしかすると小峰城の天守の意味は見晴らしという言うよりも、敵に対する威嚇よりも、自分達で見て楽しむ天守だったのではないだろうか?天守が建てられたのは江戸幕府が浸透して40年近く経った頃である。もはや戦をしようなどとどんな武士も思ってはいない時代だ。ましてや天守と言えるものをいきなり建てたらやっぱり幕府に何を言われるかわからない。でもやっぱり自分の城のシンボルは欲しい。だが冬は寒いので最上階に手すりの付いた展望はいらない、戦もなければそういったわかりやすい見張り場所がなくてもいい。となれば窓小さめ、天守も小ぶり、

でも城のどんな場所から見てもこの御三階櫓は凛々しかったはずだ。御三階櫓とは名ばかり、自分達には絶対に天守だったはずだ。その小ぶりの天守をみんなで眺めながらこの城を愛していたような気さえするのである。卓偉を見てるだけでいい、顔が見れればいい、と言ってる音楽を理解してない頭のおかしいファンと同じである。

震災からの復活、本当に嬉しく思う。そしてまた小峰城の一層の進化を期待したい。完全に修復が済んだらまた行きたい。終わらなくてもまた行きたい。

最後に白河と言えばやはり蕎麦、そしてラーメンである。当時も親父と兄貴と食ったが、やはり白河へ来ると福島の醤油ラーメンが食べたくなる。福岡人からすると、黒い醤油のスープもそうなのだが、この縮れの手打ち麺にも相当なインパクトがあった。手打ち麺の魅力は太さがまばらなので固めで注文すると麺の太いところは固く、細いところは柔らかくといった歯ごたえが楽しめる。これはたまらない。気の強い女の弱みを握ってる感じ、いよいよ自分でも何を言ってるのか意味がわからない。

初めて白河に来た時に食ったラーメン屋で、幼かった俺と兄貴に店のおばちゃん達は気さくに話しかけてくれて、半ライスやらメニューにないリンゴやら、最後には飴もくれた。そう、私はその頃からマダムキラーだったのだ。会計になって親父がおばちゃん全員に話しかけられていたのだが、何度も「はいっ?」「えっ?」「もう一度お願いします」をくり返していた。

親父は東京の人間、一切方言のないいわゆる標準語を話す人だったわけだが、とにかくおばちゃん達の福島弁、いや、ガチのふくすま弁に捕まってしまったのだった。

車に乗り込みラーメン屋を出ると親父が

親父「おまえら、おばさん達がなんて言ってたかわかったか?」

兄貴「いや、ようわからんかった」

親父「だろ?父ちゃんも何言ってるかわかんないからわかったふりしちゃったよ」

ここで私は大人は「わかったふり」をする生き物だということを学んでしまったのである。白河ラーメンの醤油のブラックスープならぬ、白河ブラックメモリーだ。そう、私はいつでも純な性格だったのだ。

そんな私もここ最近福島でワンマンライブやイベントライブがあった時に、現地スタッフや街で声をかけられたファンの方に「福島のお城もコラムに書いてください」とよく言われトークをはずませたりもしたが、確かにガチのふくすま弁は津軽弁と同じく、若干フランス語的だと思う。シトロエンに乗ってそうな感じである。毎朝フランスパンとクロワッサンを買いに出かけてそうな感じである。福島の男性と喋っているとアラン・ドロンと喋っている気になれる。今後はジャン・ポール・ベルモンドと喋ってる気にさせてくれる福島の男友達を作りたい。

大人になってから訪れた白河の街のラーメン屋でも店のお母さんと話をしたが、

どこから来たの?の質問に対して、東京ですけど出身は福岡です。から始まって、多分、おそらく、お母さんは、

「福島県と福岡県、両方とも福という漢字が付いていてなんか親近感わくのよね」

的なことを言われてたと推測するのだが、やっぱり私はやってしまったのである。約30年前親父がしたことと同じことをしてしまったのである、そう!それは!ガチのふくすま弁に対して、そうですね、とか、ええ、ええ?とかなんとか言いながら

「わかったふり」をしてしまったのである~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!

方言は国の宝。福島の人は誰しもがあたたかい。この人懐っこさ、素晴らしい。よそ者に対するウェルカム具合、感謝である。がんばっぺ福島!NUCLEARがなんだ馬鹿野郎!私の1stアルバムのタイトルは「NUCLEAR SONIC PUNK」だこの野郎!全然売れなかったぞこの野郎!デビューして出したレコード全部売れてねえぞこの野郎!

ああ、白河小峰城、また訪れたい……。

◆【連載】中島卓偉の勝手に城マニア・チャンネル
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