【インタビュー】Nozomu Wakai's DESTINIA、女性シンガーを起用して真っ向勝負のヘヴィ・メタルをぶつける新作『Anecdote of the Queens』

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■ヘヴィ・メタルはもっと開かれてなきゃいけない
■抑圧されている部分をぶっ壊してブレイクスルーしてやるんだ


――でも、二人がこんなに似た感じに見えることも新鮮でしたよ。

Fuki:写真にもよるけど、そっくりですよね。

若井:ジャケットなどについては、私はアート・ディレクター/デザイナーとして、問題提起っていうのを考えてたから、そこは狙い通りだったんですよ。当然、見えないものをチョイスしているので。だって、やるからには面白いほうがいいしね。

榊原:全部が裏過ぎて、面白いよね。本人たちでもないし、全然異色だし、どっちかわからないって言われるし、こうやって見ると似てるし、みたいな(笑)。

若井:要はデザイン面も含めて、最終的に一つの作品に落とし込むことはすごく考えたんですよ。そこはいろんな意見はあるだろうけど、私の中では上手くいったなと。いつもと同じものはそれぞれの活動でみれるので。

榊原:Fukiさんにしても私にしても、自分たちが見せたいものは、もちろんファンはわかってて、それが好きで来てくれると思うんですけど、自分の考えの中でのものって、世界観の広がりに限界がありますよね。だけど、若井望のプロジェクトで二人がここに入ったときに出た意外性って、ファンにとっても新しい発見で面白いと思うんですよ。

若井:意外とジャケットに関しては、プログレッシヴ・ロック・バンドとかのものが好きだったりするんですよ。答は言わないんだけど、どこかに何か象徴的な意味が隠されていたりしてね。たとえば、今回、二人には孔雀と雉の羽を持ってもらっている写真がありますけど、それをジャケットでは私が持っていたりするのは一つのキーだし、裏ジャケットで彼女たちが持っているのが私のギターであったり。個人的には、CDとかレコードとか、ものになる状態がすごく好きなんですよ。正直、ダウンロードで済ませるという文化は、自分の中ではなかなか理解が難しい。いわゆるジャケ買いってあるじゃないですか。そこで初めて目にしたジャケットに「何かやってくれるんじゃないか?」って期待して買う。そういう面白さもずっと提起したいと思うんですよ。


――このアートワークだけで惹かれて買ったとしても、その中心になる音楽の充実度には、みな納得すると思いますよ。先ほどストイックという話もありましたが、寺沢功一さん(BLIZARD)や宮脇“JOE”知史(44MAGNUM)さんといった錚々たる敏腕プレイヤーに対しても、かなり高度なものを要求している。もちろん、彼らもそれに応えていますしね。

若井:そうですね。先輩たちは積んできたものが違いますから、「できません」とは100%言わないっていうのも、こっちもちょっとわかってて無理をいってるところがありまして……(笑)。ただ、そこで欲しいのは、私がデモの段階で考えたフレーズとまったく同じことをしてもらうのではなくて、それに対する解釈を通した自分なりのものなんですよ。多分、特に先輩たちのプレイは、この作品において、人間味を出す部分だと思うんですね。それぞれプレイヤーとして活きたものを、この作品に対して二人は投入してくれている。たとえば、「Love to Love」のバックで聞こえるベースのアドリブとかは顕著だし、寺沢さんは言わなくてもそういうフレーズを弾いてくれるんです。「Breaking the Fire」のイントロなども、JOEさんがいつも叩いているものというよりは、「やってやるか!」って感じでトライしてもらったようなフレーズですし。

榊原:でも、人の手って凄いな、大事だなと思うよね。

若井:音楽によっては、生では録れないスクエアなものが合っているものもありますよ。でも、このプロジェクトでは、人間の性を歌っているのに、音楽にまったく人の手を感じないというのでは、そこに乖離も出てきてしまう。そういう一貫した作品づくりという意味でも、生の人の手と思いが介在するっていうのは必然なんだ。

榊原:ちゃんと熱が聴こえるもんね。

若井:それでいうと、ギターも結局、狂ったように弾きましたけどね。

――たとえば、ギター・ソロで言えば、前作よりも確実に聴きどころは多いと思いますよ。とてもエモーショナルだし、その楽曲に綴られているドラマを踏まえたうえでのフレージングであるのも間違いない。

若井:そう言ってもらえるのはありがたいですね。実はとっても狙ってやっていることなので。前作は構築美なんです。最初から流れとしてあるべきものがあって、ある種、縛られる形がほとんどなんですよ。今回は仰った通りで、ブリッジとしての橋渡し、要は曲のドラマをつなぐためのソロということを念頭に置いてるんですよね。ドラマティックな部分をいかに織り込むか、そこは重視しましたね。


――彼らしいギターはどんなものかといったとき、このアルバムを聴けばわかると言えるぐらい、自然とパーソナリティも表れていると思いますよ。

榊原:あんまり褒めたくないんですけど(笑)、今までずっと関わってもらう中で、若井くんにギターを弾いてもらった曲は、不思議と間奏だけもう一回聴きたくなっちゃうんですよ。私はギターのことは詳しくないし、楽譜も読めないし、かなり感覚で音楽をやっているんですけど、あのメロディアスなところやセクシーさとかがすごく好きなんですね。口ずさみたくなるギター。そこはいつも若井君の音いいなぁと思うんですね。

若井:でも、作品において二人の歌が一番で、それを最大限に活かそうというのは、今回は特にミックスのときも考えたね(笑)。

――歌といえば、ボーナス・トラック扱いではありますが、前作でメインの一人だったロブ・ロックがリード・トラックたる「Breaking the Fire」で歌っていますよね。IMPELLITTERIの一員として5月末に来日したときに直談判したそうですが。

若井:そう。その日のライヴが終わったばかりなのに(笑)、すぐに聴いてもらったんですよ。そこで快諾してくれたんですよね。その時点では収録できるか否かは未定でしたが。1曲目の「Breaking the Fire」は、Fukiさんの心境を歌詞に盛り込んで、歌っていただいたんです。自分もそういう部分はあったんだけど、新しい世界に対して勝負しなきゃいけないとき、それに対していろんなことを言う人も出てくるわけです。だけど、それに打ち勝って、先に進むし、それが自分のやり方だ、選んだ道なんだと。それを明言してもらうには、この人は適任だなと(笑)。ロブに歌ってもらった最後の「Breaking the Fire」はまた少し趣向を変えているんです。一つは前作をリリースして、日本のいろんな事情とかもあるけど、日本人がやるヘヴィ・メタルが世界でどう思われているのか、いろんなことで知ることができたんです。思っていた以上に、世界の人たちがあのアルバムを耳にする機会があったんですよね。そういう中で思ったのは、ヘヴィ・メタルはもっと開かれてなきゃいけない。日本のヘヴィ・メタル・ファンがどこかで抑圧されている部分をぶっ壊して、ブレイクスルーしてやるんだと。ロブには、そういう気持ちを込めてくれと伝えたんですね。だから同じ曲なんだけど、実は込めているものが少し違ってるんです。そこで届いたテイクは、聴いていただければわかるように、日本のファンの気持ちを代弁するかのような、とにかく熱いシャウトでしたね。ライヴではFukiさんとロブという二人の強力なシンガーによる「Breaking the Fire」が聴けると思いますよ。

――さて、その気になる待望のライヴが8月30日に東京・渋谷O-WESTで行われますね。実現までに紆余曲折もありましたし、何しろ2つの作品に参加したミュージシャンがほぼ全員登場するという豪華絢爛なステージですが、とにかく楽しみですよね。

若井:多分、自分の葬儀があってもこんなに集まらないんじゃないかっていうぐらいの人たちですよ(笑)。やっぱり一人のヴォーカリストに光を当てるライヴとは違いますし、スケジュールの確保も難しく、全体の流れなどを考えるうえでも、なかなか一筋縄ではいかないんですけど、イベントを開催するような感覚に近いですね(笑)。その段取りの大変さをまさに実感しながらリハーサルを進めているんですが、やはり楽しみですよね。“One Night”と謳っているように、まずこの形式でライヴができるとは思えないですから。

榊原:ジャンルも超えて、どういうお客さんの層になるのかも楽しみだし。

若井:誰もやった事のない形式で、初ライブですから、上手くいくようにみなさんにも祈ってていただきたいですね(笑)。でも、すでにリハが面白いんですよ。もちろん、演奏などへのストイックさはありますけど、至って楽しく進んでいるんですよね。こういう空気感でライヴができるのはとても楽しみですね。オーディエンス、プレイヤー、スタッフ、皆で創るまだ見ぬ“DESTINIA”を私も大変楽しみにしています。

取材・文●土屋京輔

ミニ・アルバム『Anecdote of the Queens』

2015年8月12日発売
KICS-3209/定価¥2,400+税/全7曲収録(6曲+ボーナストラック1曲)
1) Breaking the Fire
2) I Miss You
3) Love to Love
4) Until That Time
5) No Surrender
6) Rock is Gone

ライブ・イベント情報

WAKAI NOZOMU'S Destinia presents 「a Live for a Scream」~One Night Only Requiem~
日時:2015年8月30日(日)
場所:東京 TSUTAYA O-WEST
チケット:前売り5,000円 / 当日5,500円 (別途ドリンク代)
(問)NEXTROAD  03-5712-5232 (平日14:00-18:00)
http://nextroad-p.com/


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