【レビュー】ポルノグラフィティ、『RHINOCEROS』チャート1位獲得にみた“強さ”と“らしさ”

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ポルノグラフィティが約3年5ヶ月ぶりとなるニューアルバム『RHINOCEROS』をリリースした。同アルバムは2015年8月18日および19日付のオリコンアルバムデイリーチャートで1位を記録、その勢いのまま8月31日付の同アルバムウィークリーチャートで1位を獲得したことが発表となった。アルバム首位は、2013年12月2日付で記録したベスト盤『PORNOGRAFFITTI 15th Anniversary “ALL TIME SINGLES”』に続いて2作連続通算6作目。オリジナルアルバムとしては、8枚目の『∠TRIGGER』(2010年3月発売)が2010年4月5日付で獲得して以来、5年5ヶ月ぶり。

◆ポルノグラフィティ 画像

“今、ありのままに表現したい音楽をぎゅっと濃縮した”というアルバムは、デビュー16年目を迎えた彼らの通算10作目となる記念すべきものだが、そこに妙な気負はない。あくまでもポルノグラフィティらしさで貫かれた『RHINOCEROS』を改めて検証してみたい。

8月21日のテレビ朝日系音楽番組『ミュージックステーション』に、ニューアルバムをリリースしたばかりのポルノグラフィティが出演した。演奏されたのは映画『名探偵コナン 業火の向日葵』主題歌にして彼らの最新シングルとなる「オー!リバル」。その直前のトークコーナーで、曲について司会のタモリから質問されたヴォーカルの岡野昭仁がこんなことを話していた。

「この曲は映画の主題歌だったんですけど、映画サイドから『「サウダージ」や「アゲハ蝶」などのラテン調の曲のイメージで』というリクエストがあって。それを受けて、逸らさずまっすぐ僕なりにラテンを書いてみました」──岡野昭仁

確かに大ヒット曲「サウダージ」や「アゲハ蝶」による、“ポルノといえばラテン”というサウンドイメージはとても大きい。だからこそ「オー!リバル」を聴いたときの率直な感想は“ポルノらしい曲だな”ということだった。そして、それが最新アルバムをも丸ごと言い表していると言っていい。ひと言で言うと、とても“ポルノらしさ”を感じる素晴らしい1枚なのだ。

“見んさい”“聞きんさい”“歌いんさい”の“3さい”シリーズとしてリリースされたシングル「俺たちのセレブレーション」「ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~」「オー!リバル」をはじめ、収録された全14曲には隙がない。全14曲中、新藤晴一による作詞作曲ナンバーが7曲、岡野昭仁作詞作曲ナンバーが3曲、新藤晴一作詞/岡野昭仁作曲ナンバーが2曲、作曲を岡野昭仁が務め作詞を2人が手がけたナンバーが1曲、新藤晴一作曲によるインストナンバーが1曲と、制作形態もバランスが良く、バリエーションが豊富だ。

アルバムの始まりを告げる1曲目「ANGRY BIRD」、夏の季節にぴったりのポップチューン「Ohhh!!! HANABI」、ギタリストの新藤晴一が久しぶりにヴォーカルを務めた「Hey Mama」、ゆったりとしたリズムが心地よいミディアムバラードの「wataridori」、昭仁の伸びやかな歌声が気持ちよく響く「Stand Alone」、そしてSNSが溢れる今の時代を反映した歌詞の「ソーシャルESCAPE」から「Good luck to you」までの怒涛の流れは、まるでライヴ会場で生演奏を体感しているような高揚感がある。

さらにギターが主役のインスト曲「螺旋」から繋がる、歌詞の情景が浮かんでくるような「ミステーロ」まで、彼らが今まで作品で表現してきた柔軟さと幅広い音楽性を改めて実感できる仕上がりだ。ただ、ポルノグラフィティらしさに貫かれながらも、それだけで終わらないところがまた、ポルノらしいところでもある。収録された楽曲たちは、バラエティに富んでいるがゆえ、一聴すると明確なテーマがないようにも思えるかもしれない。しかし、1曲1曲のサウンドやメロディにはとてつもない力強さと説得力があり、それぞれがシングルとして通用しそうなほどに練られてクオリティが高い。

以前の2作品でも同じ印象を抱いていたのだ。前々作『∠TRIGGER』はメンバーふたりによる作詞作曲ナンバーのみで構成したり、前作『PANORAMA PORNO』では新しいアレンジャー陣が参加して楽曲を作り上げていくという、新たな試みがそれぞれにあった。さまざまな試行錯誤を重ねた結果、彼らが手にしたものこそ、ポルノグラフィティならではの芯の強い楽曲だったのかもしれない。

そのチャレンジはもちろん今作でも行われたはずで、さらによりよいものを生み出そうという想いと、真摯に音楽と向き合おうとする彼らの姿勢が見えてくるようである。デビューから16年目を迎えても、まだまだ進化し続けたいと自分たちが進むべき道を常に模索している姿は、いつも彼らを応援しているリスナーの目にも嬉しいものとして映っているに違いない。ちなみにアルバムのジャケット写真に描かれた動物のサイは英語で“RHINOCEROS”。これはもちろん“3さい”シリーズの流れを汲むアルバムタイトル付けではあるものの、百獣の王ライオンが束になっても敵わないと言われるサイの速さ、重さ、強さが今のポルノグラフィティと重なるようで、実にしっくりくるものとなった。

個人的には、いい作品を聴くととにかくライヴを観たくなってうずうずしてしまう。大きな会場で、生演奏で、たくさんのお客さんと一緒に歌って、踊って、その音楽を体で感じたいと思う。『RHINOCEROS』は、まさにそういう気持ちにさせてくれる作品だった。9月からは全国ツアー“14thライヴサーキット The dice are cast”がスタート、全国29ヶ所37公演のホールを廻る。“The dice are cast”は“賽(さい)”は投げられたの意を持つタイトルで、“サイ”を重ねてくるあたりに遊び心が垣間見えて、これもまた彼ららしい。最高傑作を手に、ポルノグラフィティが日本全国のリスナーに会いに行く長い旅は間もなくだ。早くその姿を見届けたい。

文◎大井美和



■10th Album『RHINOCEROS』

2015年8月19日(水)発売
【初回生産限定盤】SECL-1749~1750 (CD+DVD)3900円(税込)
※三方背BOX仕様
【通常盤】SECL-1751 (CDのみ) 3200円(税込)
M1:ANGRY BIRD
作詞・作曲:新藤晴一 / 編曲:篤志, Porno Graffitti
M2:オー!リバル 映画『名探偵コナン 業火の向日葵』主題歌
作詞:新藤晴一 / 作曲:岡野昭仁 / 編曲:tasuku, Porno Graffitti
M3:Ohhh!!! HANABI
作詞:新藤晴一 / 作曲:岡野昭仁 / 編曲:シライシ紗トリ, Porno Graffitti
M4:wataridori
作詞・作曲:岡野昭仁 / 編曲:tasuku, Porno Graffitti
M5:Hey Mama
作詞・作曲:新藤晴一 / 編曲:Porno Graffitti
M6:俺たちのセレブレーション 日本テレビ系「スッキリ!!」9月テーマソング
作詞:岡野昭仁, 新藤晴一 / 作曲:岡野昭仁 / 編曲:江口亮, Porno Graffitti
M7:Stand Alone
作詞・作曲:新藤晴一 / 編曲:Porno Graffitti, 宗本康兵
M8:ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~
作詞・作曲:新藤晴一 / 編曲:宗本康兵, Porno Graffitti
M9:ソーシャル ESCAPE
作詞・作曲:岡野昭仁 / 編曲:根岸孝旨, Porno Graffitti
M10:バベルの風
作詞・作曲:岡野昭仁 / 編曲:tasuku, Porno Graffitti
M11:AGAIN
作詞・作曲:新藤晴一 / 編曲:立崎優介, 田中ユウスケ, Porno Graffitti
M12:Good luck to you
作詞・作曲:新藤晴一 / 編曲:江口亮, Porno Graffitti
M13:螺旋
作曲:新藤晴一 / 編曲:宗本康兵, Porno Graffitti
M14:ミステーロ
作詞・作曲:新藤晴一 / 編曲:立崎優介, 近藤隆史, 田中ユウスケ, Porno Graffitti

<DVD> ※初回生産限定盤のみ1:Ohhh!!! HANABI <Video Clip>
2:俺たちのセレブレーション <Video Clip>
3:ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~ <Video Clip>
4:オー!リバル <Video Clip>

<初回生産限定盤封入特典>
●“3さい”シリーズで登場したサイのキャラクターのステッカー
●Wラッキーチャンスカード
・アタリが出たら豪華賞品GET!ラッキーチャンスカード 
・Wチャンス!! LIVE会場で直筆“サイ”ン入り『RHINOCEROS』マグネットが当たる?! 抽選番号付きカード

■<14thライヴサーキット “The dice are cast”>

全国29ヶ所37公演、約3年ぶりとなるホールツアー開催決定
http://sp.pornograffitti.jp/14thlivecircuit/

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