【ライブレポート】Mayday、「武道館まで16年。想像出来なかったことが現実に」

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台湾のバンドMayday (五月天)が、台湾アーティストとしては初の日本武道館単独公演<Mayday『Just Rock It 2015 TOKYO』at 日本武道館>を開催した。その初日となる8月28日は【DO YOU EVER SHINE】、2日目の29日は【抱きしめて】と題して2Days開催、両日ともに大成功を収めた。ここではその初日の公演をレポートしたい。

◆Mayday 画像

阿信(アシン/Vo)、怪獣(モンスター/G)、石頭(ストーン/G)、瑪莎(マサ・B)、冠佑(ミン/Dr)からなるMaydayは今から16年前に台湾でデビュー。現在は中華圏随一の知名度を誇るほか、ライブ動員力(北京オリンピックスタジアム=鳥の巣で開催した2日間で20万人のライブチケットを瞬時に完売)も圧倒的なものがあるなど、アジアのスーパーバンドとして君臨している。今回の武道館公演のチケットも大方の予想通り即完だ。






中華圏ではスタジアムクラスの会場に大規模な仕掛けやセットを使った多彩な演出を用いて、スケール感たっぷりのエンタテインメントショーを見せる彼らにしてみれば、大きな会場のほうがきっとMaydayの魅力は伝えやすかったはず。けれども、2013年の日本デビュー以降も、あえてスタンディングのライブハウス会場から単独ライブをスタートさせている。それは、武道館が彼らにとって単なるライブ会場ではなく“特別な場所”だったからだ。

「今度は日本武道館で会おうか」──モンスター

これは希望を込めて、2014年にZepp Tokyoで開催したライブのMCでモンスターが語った言葉だ。ついにその念願が叶い、憧れの聖地・日本武道館のステージに5人が立つ。

そして今夜の武道館は“アジアの異国”といった様相だ。満員の客席は日本はもちろん台湾、中国、香港、シンガポール、マレーシアなどから集結した各国のファンが話す中国語や台湾語、英語などの言語があちこちで飛び交っている。こんな異国情緒満載の武道館を体験したのは初めて。席に座ると、チラシのなかにはビートルズが初来日したときに着ていたハッピを彷彿させる着せかえ付きの可愛らしいMaydayシールが。アリーナ前方に目を向けると、5人が使う機材が一つの台の上に集められていて、それがまるで武道館のロックの神様に楽器を奉納しているかのような雰囲気を醸し出すなど、場内は開演前から彼らの初武道館公演に向けて祝福ムードが充満している。




19時を少し過ぎたところで、場内が暗転。紗幕越しに5人のシルエットが浮かび上がり、TVドラマ『ビター・ブラッド』主題歌の「Do You Ever Shine?」が始まるとそのサビで一気に紗幕が落ちて、客席が生のMaydayに大興奮する。ステージ後方のスクリーンには、Maydayのヒストリーが年代ごとに映し出された。その年代が2009年になったところで曲調はロックからバラードへ一転。穏やかな歌が武道館を包み込む「君は幸せじゃないのに」、彼らがリスペクトするMr.Childrenを彷彿させるエバーグリーンなメロディが印象的な「天使」を中国語で披露した。

ステージの左右に設置されたスクリーンには、Maydayのライブでは恒例の中国語詞と日本語詞が同時に表示されていく。「孫悟空」からは再びロックモードにシフト。ライブでおなじみのアッパーチューンでオーディエンスを次々と魅了した。「OKさ」では舞台フロントから勢いよく白煙が吹き上がり、ホーンに合わせてサポートメンバーたちが楽しい振り付けで踊り、客席を盛り上げていった。

「こんばんは。Maydayです。(声を張り上げ)Maydayが武道館に、キターッ!!」──アシン

と最初の挨拶からアシンは嬉しさを隠しきれない様子だ。16年前、本国デビューしたばかりの彼らは、同年8月28日に初の大型コンサートを行なった。その16年後の同じ日に、武道館のステージに立っているなんて誰が想像しただろうか。こんな奇跡のような偶然を受け、「今日は16年前のMaydayをびっくりさせようぜ! COME ON、一緒に歌おう」と「モーターロック」を始めると、バンドもオーディエンスもいっきにアクセル全開だ。



その曲中で、まずは両サイドに走っていったモンスターとストーンがリフターに乗りこみ、リフターが2階席までせり上がったところでギター・ソロを弾いて見せ場を作った。その興奮をマサ、ミンのソロ演奏でつなぎ、最後はアシンがコール&レスポンスでオーディエンスと一体となる。客席のボルテージが最高潮に達したところにだめ押しで「瞬間少年ジャンプ」を投下。客席をエンドレスでジャンプさせていった。

アジアを何度もツアーしてきたスタジアムバンドならではの盛り上げの上手さで、彼らは言葉の壁を軽く飛び越え、場内を見事に一つにしていく。また、今回の武道館では無線制御で色が変化するペンライトシステムを日本公演に初めて導入。これは彼らのライブには欠かせないもので、「瞬間少年ジャンプ」のサビでは、それまでずっとMaydayカラー(ブルー)だったペンライトが一斉にカラフルな色に点滅、客席に素晴らしい景色を作り上げた。



興奮のあとはクールダウン。1本のライブのなかでこの波を何度も繰り返すのがMayday王道のライブ展開だ。高揚し切った気持ちを人気バラード曲「追憶のナインボール」がゆるやかに落ち着かせていく。武道館公演のために、モンスターはこの曲を日本語で歌唱。続いて、レーザー光線が広がるなか、日本語曲「抱きしめて」をアシンが歌い出すと、客席の各国のファンが日本語で同曲を大合唱しはじめた。Maydayというバンドを通して、ファンも国境や言葉の壁を軽々越えている。これが、Maydayのライブの凄さだ。次は、スタジアムバンドならではの豪快なロックチューン「雌雄同体」へ。ここでアシンがカッコいいシャウトを見せつけ、そのあとはMCタイムへ。

「みんな最高!」と喜びを伝えたのはストーン。マサは「40歳で武道館に立ててびっくり。とても緊張しています」と心境を告げた。「ここはビートルズがライブをした場所」といってビートルズの「She Loves You」を口ずさんだモンスターはスタッフに感謝の気持ちを伝え、ミンは「初めての武道館、できたね」と微笑んだ。「久しぶりですね」といって話し出したのはアシン。各国から訪れたファンに声をかけたあと、メンバー同士のフリートークが始まると、スクリーンにチャット画面のようなものが登場。メンバーのトークを自動翻訳したものが次々と書き込まれていった。途中、それに気づいたメンバーがわざとクロストークをしたり早口でしゃべりだすと自動翻訳は大混乱(笑)。場内はとたんに大爆笑に包まれた。

ライブ後半戦はアシンのタイトルコールから名曲「乾杯」で幕を開けた。アシンがローボイスでラップのように言葉を詰め込んで歌うこの曲は、いつか訪れるであろう人生の終わり、そのとき青春を共に過ごしたみんなとまた乾杯しようと歌う歌詞とミュージックビデオが猛烈に泣ける人気ナンバーだ。Maydayの楽曲の多くはミディアムバラード系の楽曲なのだが、そのなかでもファンの心をつかんで離さない感動ナンバーは、長調系のゆったりと流れる持続系フレーズを多様した懐かしくて心あたたまるメロディのものが多い。「乾杯」はその代表格だ。


場内を大きな感動で包み込んだあとは“L・O・V・E”のコールで場内が大盛り上がりする「恋愛ING」。そのあとはやさしすぎて泣けるロスト・ラブソング「やさしすぎて」へ。このようなバラードもオーディエンス全員で大合唱するのがMaydayのライブスタイル。この曲では“君に自由を~”とアシンがエモーショナルに歌い上げる場面で、大量の紙吹雪が吹き出し、場内一面が真っ白になった。いままでは会場が小さくて使えなかったMaydayお得意の紙吹雪の演出も、今回はたっぷり披露した。

そして次の「OAOA」が始まると、メンバーの公約通り巨大メカ象が武道館のステージに初上陸!! これには場内は騒然となった。オーディエンスのテンションがグングン高まるなか、彼らはflumpoolもカバーした同曲を5人全員でボーカルを回しながら日本語で歌ってみせた。そうして、次はピアノのイントロが鳴っただけで大歓声が起こった「愛の記憶は突然に」を大合唱して、ライブはラストスパート。




この後、アシンがサプライズでステージにflumpoolの山村隆太(Vo)を呼び込むと、場内には悲鳴に近い歓声が響き渡る。そして、アシンとともにまずは台湾で有名な曲「前へ進め」をデュエットでカバー。続いて、山村以外のflumpoolのメンバーも舞台に登場した。Maydayの楽器隊メンバーと入れ替わった彼らはMaydayの機材を使って映画『おしん』の主題歌となった日本語曲「Belief~春を待つ君へ~」をプレイした。こうして自分たちの初武道館公演にわざわざ駆けつけてくれたMaydayに今度は彼らがステージから激励を送り、メンバーを喜ばせた。


flumpoolが姿を消すと、アリーナ席にはライオン、馬、鹿の形をした3体の白いアニマルバルーンが放たれた。その上層部をレーザー光線が激しく交差するなか、GLAYとコラボした日本語曲「Dancin’Dancin’」で武道館の床を激しく揺らす。最後はオーディエンスが振る青いペンライトが場内に大きな海を作り、“ラララ~”の大合唱に包まれながら「人生は海のよう」を届けて、本編を終えた。

Maydayのライブはアンコールの掛け声も日本とは違って“アンコ!”“アンコ!”とみんなで叫びながら足踏みをして床を鳴らす。観客の熱い声援に応え、舞台に再び登場した彼らは日本の最新曲「YOUR LEGEND ~燃ゆる命~」「出陣の歌」とダイナミックに響き渡るエモーショナルなロックチューンを2連発。勢いよく場内を盛り上げた後、アシンがこう語った。

「台湾から東京までは飛行機で3時間ぐらい。武道館までは16年かかった。できない(だろうと思っていた)夢が、いま現実に叶った」──アシン



と笑顔を浮かべて素直に喜びを爆発させたアシン。この後は、アシンの合図でいつものように観客が携帯電話を取り出し、暗転した場内で携帯のライトを照明代わりにして「満ち足りた思い出」を心を込めて届けた。そして最後の最後に「馬鹿」を1万人のオーディエンスがものすごい声量で大合唱。5人が演奏を終えても“ラララ~”の合唱は終わらない。歌うオーディエンスを見つめながら、メンバーは舞台中央に横一列に並び、ぎゅぎゅぎゅと肩を寄せ合った。その後、円陣を組み、ファンの歌声に包まれたままメンバーは舞台を後にした。ステージからメンバーがいなくなったあとも、観客の合唱する声は長い間武道館に響き渡っていた。



16年という歳月をかけてたどり着いた憧れの日本武道館。Maydayは自分たちがその過程で築き上げてきたライブスタイルを通して、国境、言葉を越えてアジアを一つにできることを堂々とこの武道館でも証明してみせた。

取材・文◎東條祥恵 撮影◎橋本塁(SOUND SHOOTER)/近藤誠司

■<Mayday「Just Rock It 2015 TOKYO」at 日本武道館>
2015.8.28(Fri)【DO YOU EVER SHINE】

01.Do You Ever Shine?
02.君は幸せじゃないのに / 你不是真正的快樂
03.天使 / 天使
04.孫悟空 / 孫悟空
05.ギャンブラー / 賭神
06.OKさ / OK啦
07.孤独の終わり / 終結孤單
08.モーター・ロック / 軋車
09.瞬間少年ジャンプ / 離開地球表面
10.追憶のナインボール / 九號球
11.抱きしめて / 擁抱
12.雌雄同体 / 雌雄同體
13.乾杯 / 乾杯
14.恋愛ING / 戀愛ING
15.やさしすぎて / 溫柔
16.OAOA / OAOA
17.愛の記憶は突然に / 突然好想你
18.前へ進め / 向前行 feat. 山村隆太
19.Belief ~春を待つ君へ~ feat. flumpool
20.Dancin' Dancin'
21.人生は海のよう / 人生海海
encore
en1.YOUR LEGEND ~燃ゆる命~
en2.出陣の歌 / 入陣曲
en3.満ち足りた想い出 / 知足
en4.馬鹿 / 憨人



■ニューシングル「YOUR LEGEND ~燃ゆる命~」

2015年6月17日リリース
【初回盤:CD+DVD】AZZS-36/¥1,800(tax out)
【通常盤:CDのみ】AZCS-2043/¥1,300(tax out)
M1.YOUR LEGEND ~燃ゆる命~(將軍令 日本語ver.)
M2.追憶のナインボール(九號球 日本語ver.)※MONSTER(怪獸)& ASHIN(阿信)Double Vocal
M3.青春の彼方/盛夏光年
M4.星空
M5.將軍令(オリジナルver.)
M6.九號球(オリジナルver.)
<初回盤DVD>
1. モーター・ロック/軋車+Opening Live_2009 高雄世運主場館+台北小巨蛋/高雄スタジアム+台北アリーナ
2. 悲しみはバラードじゃ癒せない/傷心的人別聽慢歌 Live_2013 香港紅磡體育館/香港コロシアム
3. 愛の記憶は突然に/突然好想你 Live_2012 高雄世運主場館/高雄スタジアム
4. やさしすぎて/溫柔 Live_2012 高雄世運主場館/高雄スタジアム
5. 僕は僕に嘘をつかない/倔強 Live_2012 北京鳥巢/北京スタジアム(鳥の巣)
6. 瞬間少年ジャンプ/離開地球表面+ノアの方舟/諾亞方舟 Live_2012
…Live_2015 東京 日本武道館

◆Mayday オフィシャルサイト
◆Mayday「Just Rock It 2015 TOKYO」at 日本武道館スペシャルページ
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