【ライブレポート】KREVAがKICKと共演。<908 FESTIVAL>1日目は“終わらない前夜祭”

ツイート

先月、自身初の47都道府県ツアー <UNDER THE MOON>全53公演の行程を終えたばかりのKREVAが、今年も9月8日を“クレバの日”として祝う音楽の祭典<908 FESTIVAL>を開催。8月26日、27日、初の2DAYS開催となった大阪フェスティバルホールの<908 FESTIVAL in OSAKA>に続き、東京は昨年同様日本武道館で2DAY開催を決行した。まずは、その初日となった9月7日<908 FESTIVAL 前夜祭 ― KREVA&KICK THE CAN CREW>のライブの詳細レポートをお届けしよう。

◆<908 FESTIVAL 前夜祭 ― KREVA&KICK THE CAN CREW> 画像

10周年イヤーのライブ活動を総まとめするかのようなセットリストで、10周年のラストイヤーをしっかりと締めくくったKREVAのソロステージと、超久々のロングセットリストで“まさかあの曲が聴けるなんて”という驚きのナンバーまでを披露し、観客を大興奮させたKICK THE CAN CREWのステージ。その場にいた出演者、オーディエンスみんなが「KREVA最高!」「KICK最高!」という喝采とともに“終わらない前夜祭”を本気で望んだ。そんな余韻にずっと包まれた幸せな夜だった。

客電が消え、KREVAの10周年イヤーを振り返るライブ映像がスタートしただけで、オーディエンスは手拍子、シンガロングとすでにお祭りモード。908FESも今年で4年目。楽しみ方は、観客もよく分かっている。映像が終わると、舞台には8本のメラメラ燃えるトーチが登場。スモークで真っ白に染まった薄暗いステージ。その舞台下からリフトアップして、真っ黒いサングラスをかけたKREVAがビシバシオーラを飛ばしながら颯爽と登場。10周年の最後、そして一人でガッツリやる今年最後のライブは、記念すべきメジャーデビュー曲「音色」で幕を開けた。ここから俺は始まった。それを噛み締めるような丁寧なフロウで客席に言葉を届けたあと、KREVAは笑顔で908FES開幕を告げた。

「今年の908FESのテーマは“つながり”だなと思ったんスよ。今日はみんなとつながっていきたいと思います」

KREVA+DJ+DRUMという舞台上の3人は<UNDER THE MOON>ツアーでこれまで50本以上同じステージに立ってきたメンバーだから「つながりは半端ない」と自信満々のKREVA。「“武道館、3人で大丈夫?”と思ってるオマエらの想像以上のこと見せてやる、今夜のSHOW」というトークから曲はミラーボールがキラキラ輝く「THE SHOW」へ。KREVAのライブは、次の曲へとつなぐ曲のふりにもいちいち粋な計らいがあるところがたまらない。そして、この曲の流れ……あっ! <UNDER THE MOON>ツアーそのものとつながっているではないか。流れは同じでも「BESHI」ではツアーを通して生まれたドラムのタム回し、DJのスクラッチ、KREVAの“べし”というトリプルアイテムの熱いつながりが、この曲の新たな一面を作り出していた。

「基準」の“俺のSWAGは何?”に対して観客が“神懸かり的”と大合唱するときのスケール感、「挑め」で飛び交うレーザービームの視覚的効果、「ストロングスタイル」ですごい勢いで吹き出した白煙など、武道館ならではステージングはどんどん迫力がスケールアップ。その後に披露された「成功」では“もっともっともっと”というフレーズに合わせてドラムがどんどん畳み掛けていくなど、SHOWとして楽しませながらも、ツアーで各地のオーディエンスとつながったことでさらに強靭になったサウンドで、オーディエンスをエキサイティングに盛り上げていった。


前半パートをメッセージ性の強いアグレッシブなラップを繰り出す“男KREVA”で押し通した後は、「こっからは女の子の時間」といったあと、カメラ目線で囁くようにキメ顔で「It‘s for you」とタイトルコール。これだけで場内の女子は「ウギャー」と発狂寸前(笑)。さらに、ここから客席の女の子ひとり一人と指差し確認でつながったあと、アイコンタクトで次々にメロメロにしていきながら、だめ押しに「王者の休日」投入なんてズルすぎるだろう。このロマンチックなシナリオ展開、女子がおちない訳がない。

こうして女の子をたっぷり酔わせたところから曲は「ビコーズ~今夜はブギーバック~ビコーズ」「I Wanna Know You」とシームレスでトラックをつなぎ、最後にこれらの曲のハイライトシーンすべてを一つにつないで歌ってみせた。ここではそんな音楽のテクニカルなマジックで男子を次々と魅了。でも、あれ? これ以前どこかで……と考えていたら、じつはこの場面、2014年にベスト盤『KX』発売後に行なった<KREVAライブハウスツアー2014「K10」>とつながっていたのだ! つまり、今日のKREVAのパフォーマンスは、この10周年イヤーをちゃんと総ざらいするものになっていたのだ。その10周年イヤーもまもなく終わりを告げる。

「トランキライザー」からはクライマックスに向けてラストスパート。「Have a nice day!」ではみんなが左右に振る手の動きがピッタリ合って「バッチリバッチリ」とKREVA。「C’mon,Let’s go」ではブレイクの場面でKREVAが泣きまねを入れた小芝居をしながら何回もフェイントをかけ、たっぷり焦らしてDJ&DRUM、客席をゾクゾクさせた。そして、ラストはKREVAのディープな思い、メッセージが詰まった「KILA KILA」へ。オーディエンスはここで、クライマックスにふさわしい凄まじい一体感を見せつける。だが、曲が終わってもビートは鳴り止まない。

「俺の歌詞には“行けるなら絶対行っとけ“や”何度でも“っていうのが出てきて、いまではKREVAの代名詞みたいになってるけど、じつはこれ、KREVAの歌詞ではありません。それがどいつらの歌詞なのか。元々誰のスタイルだったのかを証明しよう。」そういってKREVAが姿を消すと、908FESのロゴ入りDJブースが“3MC+DJ+1DRUM/KICK THE CAN CREW”というロゴが入ったカバーであっという間に覆われてしまった。そして、舞台下から今度は白い衣装を着てMCU、LITTLE、KREVA(速着替えで合流)が揃って拳を空中へと高く突き上げながらリフトアップで登場すると、武道館に悲鳴が響き渡る。ライブは、KICK THE CAN CREWのステージへ。

KICKのステージは「タカオニ2000」で幕開け。3MCの登場でとたんに舞台が華やぎ、それ以上に客席は大騒ぎ。さっそくKREVAのバースに“いけるなら絶対いっとけ!”というフレーズが出てきて、冒頭からKREVAとKICKのつながりを見事に証明してみせた。曲が終わる前から、盛大な拍手が沸きおこるほど観客は興奮状態。そこにデビュー曲「スーパーオリジナル」投下で、客席からは“待ってました”とばかりに大合唱が響く。そして“足のばーす、足のばーす”とLITTLEの缶蹴りのポーズから「カンケリ01」で、さらにオーディエンスの体を揺らしていく。

それにしてもこの3人、見た目はこんなにアンバランスなのにラップをし始めるとなんでこんなにカッコいいんだ。スタイルの違うフロウで次々と畳み掛け、フックはユニゾンで迫る。1度のっかったら、最後まで降りられないジェットコースターのような気持ちよさはまさにオリジナル!

そして、この後3人がハツラツとした表情でテンポよく「KREVAです」「MCUです」「LITTLEです」「3人合わせてKICK THE CAN CREWです!」とどこかで聞いたことがあるような挨拶をすると、場内は大爆笑に包まれた。それに気をよくしたのか、この後KREVAがこの日生放送していたWOWOWのカメラを見つけ「TV画面の向こうで“このおじちゃんたち知らないんだけど誰?”っていってるヤツら。(カメラをじーっと睨みながら)“悪魔だよー!”」と大暴走しそうになると「止めなさい」といってMCUとLITTLEが止めに入る場面も(笑)。

この後は「KICKが復活して以降、1回もやってない曲を」とKREVAがいって「BREAK3」へ。”KICK THE CAN CREW 1,2,3MC“のフレーズが聴こえたとたんに”こんな曲聴けちゃうの“といわんばかりに場内は再びヤバいぐらいの躁状態に包まれる。KICKの自己紹介ソング、そのなかでもクレイジーなほどに韻を踏みまくったLITTLEのバースがやってくると、客席からはそのライミングに拍手を送るかわりに“ウォー”という歓声が送られた。続いて、ミラーボールが回転するなか、フロアチューン「GOOD TIME」へと展開して、観客をどこまでものせていく。

楽しいイケイケドンドンのノリのいい曲だけがKICKの魅力ではない。「ONE WAY」でちょっと気持ちを落ち着けたところで、始まったのは「ユートピア」。アコギのイントロが聴こえると、観客が声をあげて叫びたい衝動を胸の中に押し殺しているのが伝わってきた。ループするアコギの哀しいフレーズ、胸にしみわたるリリック、KICKのなかでもセンチメンタリズム全開の曲のなかへ、観客は深く静かにダイブしていった。そして、曲を歌い終えたあと、メンバーは深く頭を下げて挨拶。

「ここからはラストスパートですよ」というKREVAの合図で、KICKのライブも後半戦へ。まずは「地球ブルース~337~」。イントロでOiコール、白煙が吹き上がるなか、ちょっと変わった337拍子のハンドクラップで、テンションはどんどん急上昇。そこに「マルシェ」でとどめを刺す。“上がってんの? 下がってんの? 皆はっきりいっとけ!”(観客)“上がってる!”と、誰もが待ちわびていたゴキゲンなフレーズを会場が一体となって歌う。まだまだ騒ぎ足りない。そろそろあの曲か? というナイスなタイミングで夏の終わりにピッタリな「イツナロウバ」へ。ここでは“Here we go now”をオーディエンスが何度も何度も大合唱。そして、「sayonara sayonara」は歌詞でみんなの心をぎゅっとつかんで、最後はやっぱりこれ。名曲「アンバランス」だ。時代を超えた名曲に涙がこぼれそうなほど感動。こうして胸が締めつけられたままライブは終了した。

すぐさま場内からはアンコールの声がかかる。
「今夜は、終わらない前夜祭」というKREVAの語りから、始まったのは、あの「クリスマス・イブRAP」!!。“9月にまさかこの曲が聴けるなんて”とどよめく観客をよそに、ステージ上には、まだ9月なのにわざわざダウンジャケットを着込んだ3人が登場。KREVAの語りを受け、今夜は“終わらない前夜祭”“ひとり一人の908FES”と歌詞をアレンジして歌い、KICKのステージはついに終了。

「KICK THE CAN CREWとして武道館に出られて、しかもこんなに長くステージをやってもみんな曲を知っててくれて。本当にどうもありがとう」(MCU)

「まずはありがとう。今回、春頃に908FESでKREVAと対バンで一緒に武道館でやるのはどうかなといわれて。俺は“1曲でも多くやらせてくれ”と思ってたよ。いってないけど(笑)。やってみたらあっという間だった。また3人でここでやれたらいいな」(LITTLE)

2人は感謝の気持ちを伝えた後、舞台を後にした。そして、次はKREVAとしてのアンコールへ突入。

「10周年を迎えたときのクリスマスライブで、初めてKICK THE CAN CREWの曲を歌った。以降、今回のツアーでもKICKの歌詞を歌ったりしてて。それらがつながって、今日のステージが実現したんだと思う。そして、最後はみんなとがっちりつながりたいと思う訳です」といって、1日目の908フェスと10周年イヤーを締めくくる曲として、KREVAはこの10年間戦いを挑み続けてきたなか、どんなアウェイの現場に乗り込んでも、みんな一つにつなげてきた最強のつながりソング「NaNaNa」を披露。全員の合唱をもってライブは終了した。

取材・文●東條祥恵

   ◆   ◆   ◆



盛り上がりのうちに終演した<908 FESTIVAL>。2日目はゲストにKICK THE CAN CREW、AKLO、三浦大知、さかいゆう、SONOMIらを迎えバラエティ豊かなコラボでのお祭り騒ぎとなった。また、2日目終演後にはKREVAによる音楽劇<最高はひとつじゃない>の新作公演が2016年春に開催されることが発表された。東京公演は東京音楽劇場 プレイハウスにて2016年3月24日~4月3日、大阪公演は森ノ宮ピロティホールにて同4月8日~10日の日程での上演となる。

この記事をツイート

この記事の関連情報