【インタビュー】nano.RIPE「ずっと同じことをあたしは歌い続けているから、すべての曲がアンサーソングのように繋がっているんです」

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nano.RIPEが9月23日にシングルコレクション『シアワセのクツ』をリリース。この作品には、2010年にリリースされた1stシングル「パトリシア」から2014年にリリースされた13thシングル「透明な世界」までのシングル曲に加えて、インディーズ時代の楽曲の再録や新曲「地球に針」を加えた全15曲が収録されている。メンバーチェンジなどもありつつ、歩んできたこの5年は、4人にとってどんなものだったのだろうか。作品を軸に、改めて振り返ってもらった。

◆nano.RIPE~画像&映像~

■最近“クツ”というキーワードがあたしの中で良い意味で引っかかっていて
■「空飛ぶクツ」「幸せの靴」は『ドラゴンクエスト』のアイテムの名前なんです


――今作『シアワセのクツ』はシングルコレクションですね。改めてシングル曲が並んでいるのを見て、ずいぶん作ったなぁと思いました。この5年の間にnano.RIPE自体も変遷がありましたね。きみコさんとササキくんは学生時代から活動しているけど、その時代から、ここまで来れたことに対してどんな感想を持ってます?

ササキジュン(以下、ササキ):すごいですよね。自分の人生がここまで音楽になると思っていなかったので。まさか、こんなにきみコと一緒にバンドを続けるというのも想像してなかったから(笑)。

――学生時代に始めたバンドだから、まさかそれが職業になるなんて最初は思ってなかった?

ササキ:そうなんですよ。楽しいから始めたことだったから。男の場合は、みんなそうだと思うけど、最初はモテたいからとか、そこがきっかけで、趣味の延長みたいなところから始めるから。それが仕事になるなんて、すごいことだなと思って。

――アベくんは、2010年にnano.RIPEに加入しましたが、そこから今までの時間って、どんなものでした?

アベノブユキ(以下、アベ):バンド経験はあったんですが、ちゃんと活動をしているバンドに加入するのは初めてだったんです。ツアーをやったり、リリースしたり、僕にとっては初体験のものが多かったので、始めのうちは、何をやっているのかわかってない感じでした(笑)。「自分もnano.RIPEの一員なんだ」ってちゃんと認識したのは2012年くらい。その頃に以前のドラムが辞めてしまい、バンドが3人になったので、僕もnano.RIPEとして腰を据えなきゃって。


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――アルバム『プラスとマイナスのしくみ』をリリースしたときに、きみコさんが、「以前ベースを弾いていたメンバーがいて、そこに自分の色を足していくというのは最初は大変だったんじゃないか」っていう話をしていたんですけど、それはどうでした?

アベ:確かにありましたね。今はもう気にしてないんですよ。弾いている人が変わったんだから、変わるのは当たり前だから。僕は僕のベースを弾くだけ。もし、「違う」って言われたら考えようっていうくらいで。最近はジュンくんからも「もっとやっちゃっていいよ」って言われるくらいで。そういうことを気にしなくなったのも『プラスとマイナスのしくみ』くらいからですね。

――青山くんが加入したのが2013年ですね。やはり最初の頃はアベくんと同じような悩みはありました?

青山友樹(以下、青山):はい。僕が加入したのは『影踏み』をリリースした少しあとくらいなんですけど、出来上がっているバンドに入るのは大変なんだなって思いました。加入前に、赤坂BLITZでのライヴを見に行ったんですけど、その時に、「このバンド、めちゃいいじゃん!」って思ったんですよ。ここに僕が入るって、大丈夫なの!?って。最初は苦戦したんですけど、二ヶ月後くらいに2DAYSのワンマンライヴがあって、二日間、かぶり曲がほとんどナシみたいなセットリストで、50曲くらい覚えなきゃいけなかったんです。すごく大変だったんですけど、そこで頑張ったからこそ、すぐバンドに馴染めたんです。音楽的に馴染めたというのもあったけど、それ以上に友達として仲良くなれたというのが大きかったです。今でもすごく仲が良いし。しょっちゅう一緒に飲んでいますし(笑)。

――今作は『シアワセのクツ』というタイトルがついていますが、まだインディーズで活動していた2008年にミニアルバム『空飛ぶクツ』という作品をリリースしていますよね。この“クツ”というワードは何かの象徴なんですか?

きみコ:最近、“クツ”というキーワードがあたしの中で、良い意味で引っかかっていて。『空飛ぶクツ』のリードトラックが「色彩」だったんですけど、今作ではその曲をリアレンジして再録したんです。で、2015年の4月にリリースした『七色眼鏡のヒミツ』というアルバムにも「空飛ぶクツ」という曲が入ってるんです。「なないろびより」という曲にも“クツ”という言葉が出てくるし、この曲の続編のような感じで書いた「こだまことだま」にも“クツ”が出てくるんです。

――本当に「クツ」という言葉が気になってるんですね(笑)。

きみコ:はい。「空飛ぶクツ」っていうのは、もともとゲームの『ドラゴンクエスト』のアイテムの名前からきているんですけど、「幸せの靴」というアイテムもありまして。「空飛ぶ靴」はその名の通り、空を飛べる靴なんですけど、「幸せの靴」は、それを履いて歩けば歩くほど、少しずつだけど経験値が上がるというアイテムで。それって、ツアーバンドっぽいなと思ったんです。しかも、すぐに経験値が上がるわけではなく、「ちょっとずつ」っていうのがnano.RIPEっぽいなと思って。

――確かに。そういえば、『七色眼鏡のヒミツ』に収録されている「空飛ぶクツ」は「色彩」のアンサーソングだったりもするんですよね。今作は、その「色彩」からスタートする。前作とも繋がりを感じます。

きみコ:そうなんです。まだインディーズ時代のCDを聴いたことがないという人もたくさんいると思うんですけど、その人が聴いたら、むしろ「色彩」が「空飛ぶクツ」のアンサーソングのようにも聞こえるんじゃないかと思うんです。結局あたしは、ずっと同じことを歌い続けているから、すべての曲がアンサーソングのように繋がっているんですよね。

――4月にリリースされた『七色眼鏡のヒミツ』というアルバム自体も過去曲へのアンサーソングで構成されているんですもんね。

きみコ:はい。「こたえあわせ」っていうリードトラックに、これまでのnano.RIPEの代表曲に出てくるワードを散りばめています。まさに答え合わせのような曲になったので、その辺りから、「あたしって本当にずっと同じことを歌ってるんだなぁ」って改めて確認できました。せっかくだからそれを武器にしようと。あたしが歌詞に詰まることがないのって、ずっと同じことを歌ってるからだと思うんです。あたしはあたしだから「これ」しか歌えない。その「これ」をどんな角度から歌うのかということだけをずっとやってきているから、すべての曲が繋がっているし、それを「こたえあわせ」という曲で示すことができたので。

――なるほど。

きみコ:メンバーチェンジはあったけど、nano.RIPEというバンドを今までやってきて、nano.RIPEというバンドは一つしかないんだよっていうことを示すには、こうやって歌詞で示していくのも一つの方法かなと思うんです。

――そういうことを『七色眼鏡のヒミツ』で示した後に、今作『シアワセのクツ』を聴くと、もっと前からnano.RIPEの世界観は繋がっていたんだっていうこともわかりますね。さらに答え合わせができるというか。

きみコ:まさにそうですね。結局、いろんな曲があるけど、全部一つの世界のことで、1曲1曲は、その世界の中のどこにいるのかという感じなんですよね。ライヴでは、過去に作った曲の歌詞を少し変えたりして歌うこともあるんですけど、楽曲は変化しながらも繋がっているんです。

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