9月5日、新木場STUDIO COASTにて開催を迎えた<COMMUNE Vol.1>東京公演。その模様については、すでに公演翌日の時点で速報レポートがアップされているが、それから少しばかり時間を経た今、改めてこの画期的一夜の意義などについて考えてみたいと思う。8月にはこのイベントのオーガナイザーであるMUCCのミヤと、大阪、東京双方の公演に出演したD’ERLANGERのCIPHERによる事前対談記事もお届けしているが、その対談のあとがきとしてお読みいただいても良いかもしれない。

◆<COMMUNE Vol.1>東京公演 画像

“発狂”というテーマが掲げられたこのイベントに際して、僕が着目したかったのは、やはり各出演者がどれだけ狂気を感じさせてくれるかということだった。もちろん狂気というのは、度を越した激しさといったものばかりを指すわけではないし、“狂気じみた演出”からかならずそれを感じることになるかといえばそんなこともなく、むしろ冷静さや計算高さが鼻について冷めてしまう場合というのも少なくない。僕自身にも、本当の狂気というもののあり方を正確に説明することはできない。が、要するに重要なのは、世代も音楽性もさまざまな各バンドが、年功序列やジャンル感など関係のないところでどれだけ行き切ったパフォーマンスを披露してくれるか、どれほど深い爪痕を残してくれるか、ということだ。そしてもうひとつ言うならば、この一夜を経たことで何を得たか、ということだろう。






トップバッターを務めたギルガメッシュは、安定度の高い爆発力、とでもいうべきものを味わわせてくれた。さまざまな対バン形式のライヴやフェス出演なども経てきた彼らについては、もう百戦錬磨のライヴ・バンドと呼んでも大袈裟ではないはずだ。実際、限られたコンパクトな時間枠のなかで、オーディエンスが確実に喜ぶ“飴”を充分に撒きながら、“鞭”のようにしなやかで鋭利なサウンドで打ちつけてくる。そうした意味において、早い段階から場内に一体感をもたらした彼らは、100%以上の達成率で一番手としての役割を果たしていたといえる。が、そろそろこのポジションから脱却すべきではないか、という気もする。たとえば彼らがこうしたイベントでヘッドライナーを務めるためには、何が足りないのか? 僕にはその明確な答えが見つからなかったが、彼らがここから先に進むためには、まだ彼らが持ち合わせていない何かが必要なのではないかと感じさせられた。







続いて登場したのはNOCTURNAL BLOODLUST。現在、もっとも勢いのあるバンドのひとつだといえる彼らには、やはりイベントの趣旨が何だったのかさえ忘れさせてしまうくらいのインパクトを求めたかった。そして実際、そのヴィジュアル系然としたいでたちとは裏腹の凶暴なサウンド、めまぐるしい演奏には、観る側を唖然とさせるものがあった。そうした意味において、彼らは充分に狂気を発揮したといえる。が、それを認めたうえで敢えて言わせてもらうならば、激烈さを際立たせるようなどっしりとした重厚さというものを、そろそろもうひとつの武器として強調すべき段階に差し掛かっているのではないかと僕には思える。メンバーたちが微動だにせず演奏に徹するような緩やかな楽曲、もしくは静寂を演出するような場面が組み込まれていたなら、彼らが放出する熱をさらに強烈なものとして体感できることになるのではないだろうか。






三番手に登場したDEZERTについては初めて観させてもらったが、あくまでダークで重苦しい空気感の体現に重きを置かれたそのライヴ・パフォーマンスには、曲を知らない客層が静かに立ち尽くすことになるのを気にもかけないような、ある種の凄味の片鱗めいたものを感じさせられた。演奏や歌唱などクオリティの向上はバンドが成熟していく過程において、勝手に身についてくるはずのもの。こうして独自の空気を持っていることのほうが重要だろう。




そして、次に登場したのはD’ERLANGER。近年のこのバンドのライヴには、本当にすさまじいものがある。kyoは「ポップで爽やかなD’ERLANGER」と自称しながら観衆を沸かせていたが、実際、音楽自体はとてもポップで甘美なのに、すべてに毒が盛られている。しかもこの日には、とんでもないサプライズが仕掛けられていた。「Angelic Poetry」が後半に差し掛かった頃、曲がいつもとは違った展開に転がり、kyoが「ハ~イ! ハ~イ! ハイハイハイハイ!」というコール&レスポンスを導いていく。おそらく観客の大半は「なんか昔っぽい煽り方だな」とでも感じていたに違いない。しかしそれが聴こえてきた瞬間、僕の両腕には鳥肌が立っていた。これは、彼らの直系の先輩にあたる44MAGNUMの代表曲のひとつ、「SATISFACTION」に含まれている展開なのだ。そして実際、前述のような客席との掛け合いを経ながら、曲はそのまま「SATISFACTION」へと移行し、着地点へと至る。44MAGNUMといえば、DANGER CRUEについて語るうえで欠かすことのできない、起源のような存在。いわば、自分たちをも含めた全出演者が忘れてはならない魂のようなものを、彼らは提示してみせたのだと思う。しかも彼らの演奏は、ラスト・チューンの「CRAZY4YOU」が終わると、そのままセッションになだれ込み、終わりの見えない演奏が続くなかで幕が下りていくという形で終了。途轍もないクールさだった。そしてそれは、先頃の対談のなかでセッションについて直訴していたミヤに対する、CIPHERからの回答であるようにも感じられた。






D’ERLANGERの余韻が完全に消え去らないうちに、最後に登場したのはもちろんMUCCだ。正直言って、もはや何も言うべきことがないというくらい、彼らのステージは研ぎ澄まされていた。扇動力、クオリティ、安定感、流れの良さ、メンバー個々の際立ち方……何もかも必要なものが揃っているという印象だし、すっかり横綱相撲が取れるバンドになっていた。しかも彼らは、「遺書」ではNOCTURNAL BLOODLUSTのCazquiを、「蘭鋳」ではDEZERTの千秋をゲスト・ギタリストとして迎え入れ、ツイン・ギター体制でこれらの楽曲を披露してみせた。が、それについても、“足りなかったものが足された”というのではなく、双方の曲の威力を増幅させるためのもの、といった感じ。MUCC自身にとってよりも、ゲストに招かれた2人の側にとって、“あの4人の狭間で音を出す”という経験は重要だったはずだし、MUCCというかミヤの側の狙いもそこにあったはずだ。そうした兄貴分としての自覚と配慮も、このイベントを締め括るバンドとして相応しいものだと思えた。

べつにこれはバンド・コンテストではないのだから、審査員のように優劣を決める必要は皆無なのだが、すべてが終了してから客観的に捉えてみれば、やはりD’ERLANGERの凄味には圧倒的なものがあったし、すべての時間を通じて僕がいちばん狂気を感じたのは、彼らのセッションの場面だったといえる。が、同時に、MUCCもMUCCでそれに負けず劣らずの、濃すぎるライヴを堪能させてくれた。兄貴の上にはさらなる兄貴が、先輩の上にはもっと上の先輩がいて、すべての先輩が尊敬に値するわけではないかもしれないが、若造には真似のできないカッコ良さをさりげなく見せつけてくれる人たちが確実にいる。そして後輩たちのなかにも、しっかりと信念を持ちながら魂を受け継いでいる者たちがいる。それを感じられたことが、何よりもこのイベントにおける最大の収穫だったように思う。この先、このイベントが何処に向かっていくのかを、楽しみにしていたい。

取材・文◎増田勇一 撮影◎西槇太一

■<COMMUNE Vol.1>
2015年9月5日(土)新木場STUDIO COASTセットリスト

【ギルガメッシュ】
01. gravitation
02. お前に捧げる醜い声
03. Drain
04. CRAZY-FLAG
05. patchwork
06. Break Down
07. VOLTAGE
08. evolution
【NOCTURNAL BLOODLUST】
01. DESPERATE
02. Obligation
03. I-V-III
04. Punch me if you can
05. V.I.P
06. VENOM
【DEZERT】
01. 「嘔吐」
02. 「誤解」
03. 「絶蘭」
04. 「不透明人間」
05. 「遺書。」
06. 包丁の正しい使い方~思想編
07. 「秘密」
08. 包丁の正しい使い方~終息編
09. ghost
【D’ERLANGER】
01. Dance naked,
Under the moonlight
02. Singe et Insecte
03. Angelic Poetry~Satisfaction(44MAGNUM)
04. LULLABY
05. Skelton Queen
06. CRAZY4YOU
【MUCC】
01. 睡蓮
02. ENDER ENDER
03. 塗り潰すなら臙脂
04. 遺書
05. 25時の憂鬱
06. 蘭鋳
07. MAD YACK
08. TONIGHT



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