【インタビュー】ボカロPのn-buna「VOCALOIDには自分の作品を世に出すための手助けをしてもらってる」 Vol.4

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ニコニコ動画への投稿作品で10代を中心に圧倒的な支持を集めるボカロP、n-buna(ナブナ)がメジャー1stアルバム『花と水飴、最終電車』を7月22日にリリース。作詞・作曲からギターの演奏、バックトラックまで楽曲制作を1人でこなすn-bnunaのパーソナル、制作環境に迫るインタビュー。ラストとなる第4回では前回に引き続きn-buna愛用のDAWソフトSONARの使いこなしについて、そして後半では配信用のミックスやVOCALOIDへの思いを語った。


▲SONARシリーズはWindows専用DAWとして長い歴史と絶大な人気を誇るCakewalk社のソフトウェア。n-bunaが使用しているのはSONAR X2 Producer(2012年発売)。現在のラインナップはSONAR PLATINUM / PROFESSIONAL / ARTISTの3グレード。2015年よりバージョンナンバーを廃し随時アップデートが行われている。国内ではTASCAM Professional Softwareブランドでリリース。

n-buna:これ、おもしろい。楽しいですね。クラブとかでライブする人たちは助かるかもしれないですね。

ピアノがなくてもパソコンだけでライブやレコーディングができると、n-bunaを喜ばせたのがSONARの新機能「仮想キーボード」。前回に続き、SONAR X2から最新のSONAR PLATINUMへの移行を決めたばかりのn-bunaにTASCAMより新SONARのオススメ機能として紹介されたものだ。画面上の鍵盤で音を確認したり、リアルタイムレコーディングも行える。マウスでの操作のほか、パソコンのキーボードでも使用可能。さらにタッチ対応ディスプレイなら画面を触って鍵盤を鳴らすことができる。


▲S仮想キーボードは表示メニューまたはAlt+Shift+0で表示。鍵盤表示(左)のほか、パソコンのキーボードを使っての演奏も可能(右)。1~5でモジュレーション、ZXでオクターブ、CVでベロシティを増減。現時点では鍵盤サイズの変更ができないのが難点。

MIDI編集で有用な新機能が「パターンツール」。マウスの右ボタンを押しながら領域を指定、左ボタンを押しながらのドラッグで繰り返しそのフレーズがペーストされるという機能で、まさにペンキで塗るようにフレーズのコピーができる。ショートカットのCtrl-C/Vの繰り返しよりもすばやく作業が行え、トラックウィンドウでもピアノロールでも使用可能。1小節分だけしっかり作って、あとはドラッグで埋めるのが便利。コピー&ペーストで一拍ずれてしまったりすることがあるが、パターンツールならこうした間違いも防げる。


▲パターンツールでは右クリック&ドラッグで範囲指定(画面左)、左クリック+ドラッグでペイント。Shitキーを押しながらのペイントで移調も可能(画面右)。フレーズの繰り返しがとてもカンタン。

n-buna:コピペでやると、どんどん(クリップが)区切れて細かく表示されるんですけど、あれがいやで。最終的に1つにまとめるのもめんどくさくて。MIDIのドラムだけのデータを1曲書きだしたい時に、クリップをいちいちバウンスしていたんですが、それがなくなるのはいいですね。

「SONARでメロディを作って、MIDIファイルをエクスポート、Editorに読み込むという作業をしているということだったのですが、これも楽ですよね」と、TASCAMの加茂氏が操作して見せてくれたのが、トラックウィンドウ上のMIDIクリップを、WindowsのデスクトップにドラッグしてMIDIファイルをエクスポートするという操作。

n-buna:ああ、これめっちゃ楽ですよね! 最初はMIDIの書き出しのコマンドないけどどうやるんだろ、って思って。ある時ひゅっとデスクトップに持っていったら、ああ!できたって(笑)。

■今日一番の興奮、テンション上がりました!
■鼻歌で録ったオーディオクリップをMIDIに


「あと、これご存じですか?」と続いて紹介されたのが、オーディオクリップを一発でMIDIデータにする操作。鼻歌でオーディオレコーディングしたオーディオクリップを、MIDIトラック(またはインストゥルメンタルトラック)にドラッグするだけで一発でMIDIクリップに変換される。しかもMelodyneを別途立ち上げる必要もなく本当に簡単な操作で可能なのだ。


▲画面上のオーディオトラックをMIDIトラックにドラッグするとMelodyneのエンジンでオーディオの分析が開始(左)。数秒後には新たにMIDIクリップができあがる(右)。ボーカルの場合は音程が不安定で編集が必須となるが、楽器からの変換ならかなりよい結果が得られる。

n-buna:WAVファイルからの変換ってすごくないですか? これをなんで売り込まないんですか? ちょっとびっくりしたんですけど。僕、これ絶対使いますよ! いつも自分の声でボーカルのメロディラインを作ったりするんで、そっからMIDIに変換(耳コピで)する手間があったんですよね。コーラスとかも。今日一番の興奮なんですけど!

一同:(爆笑)

n-buna:この後の作業が全部はかどる気がする。想像以上に使えると思います。これでだいたいメロディラインがわかって、そこから編集していけばぜんぜん手間が省けるので。すごいいいですね。テンションが上がりました。

ボーカル関連の新機能ではVocal Syncにも注目。ボーカルトラックが複数ある場合に、1つのターゲットとなるパートに対して発音のタイミングを合わせてくれるという機能。VOCALOIDではタイミングがずれるということはないが、人間の声の場合は、複数のコーラスパートがかっちり合うとなかなか気持ちいい音になる。しかも操作は画面上のつまみを回すだけとカンタンなのも魅力だ。さらに新SONARを触りつつ、n-bunaが触り始めたのが、ギターアンプシミュレーターのプラグインTH2 SONARだ。


▲ツマミを回してタイミングを合わせる度合いをカンタンに調整できるVocalSync(左)。コーラスがぴったり合うと気持ちいい音に。右はギター・アンプ、エフェクターを多数備えたOVERLOUD社のTH2。SONAR用の特別仕様で、PLATINUMとPROFESSIONALでは収録アンプ数などが異なる。

n-buna:けっこうこれいいんですよね。見た目が。テンションが上がるかどうかが。

──Kompleteをお持ちだったらGuitar Rigもテンション上がりません?

n-buna:Guitar Rigいいですよね。見た目で言ったらAmpliTubeが一番いいですけど。あれってけっこう重いので。重さの問題もあって前がけを選んだんですけど。TH2もいろいろ入っているので、弾いてて楽しいかな。

エフェクトではNomad FactoryのBlue Tube Studio Mixing Suiteもオススメだという。古典的アナログハードウェアの温かみのある音質を再現するビンテージスタイルオーディオプロセッサーなどが揃っている。「真空管エミュレーションのコンプとか、ついついかけてしまうテンポディレイとかいろいろ入ってます」(TASCAM加茂氏)、「他社を含めてもアナログディレイエミュレーションってけっこう少ないので、意外と重宝するかな」(TASCAM小泉氏)との言葉に「これは使えそう、見た目もいいですね」とn-bunaも気に入った様子。


▲Nomad FactoryのBlue Tube Studio MixingはSONAR X3から搭載されたプラグインエフェクトで、SONARでは多数のエフェクトを収録SuiteBlue Tubes bundleはコンプ/リミッターなどのダイナミック系6種、イコライザー6種、さらにコーラス、フェイザー、ビンテージエコー、ディレイ、オーバードライブ、イメージャーを用意(左)。右は1980年代のデジタルリバーブの音質を再現するBlueVerb DRV-2080、ビンテージスタイルのアナログチャンネルストリップNomad Factory Blue Tubes Analog TrackBox。

◆インタビュー(2)へ
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