【インタビュー】ジョー・エリオット「デフ・レパードは一生アルバムを作り続けるよ」

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デフ・レパードの最新アルバム『デフ・レパード』が遂に10月30日全世界同時発売となった。すでにチェックしたファンも多いと思いが、全曲シングルカットしてもおかしくない楽曲が収録されているデフ・レパード絶対の自信作だ。現在の音楽シーンから来日公演まで、ジョー・エリオットが語ってくれた。

◆デフ・レパード画像

──前作からは7年経っています。最初はアルバムを作るかどうかもわからなかったとおっしゃいましたが、今の音楽業界とかミュージックシーンを鑑みて、ということですよね?

ジョー・エリオット:音楽ビジネスの中にいれば、どうしてもまわりの意見が耳に入ってくる。意見を受け入れる時もあれば、無視する場合もあるけれど、人それぞれの意見はある。「音楽業界は瀕死の状態にある」「音楽業界は変わってしまった」「音楽業界はお先真っ暗」という人がいる一方で、「だったらなぜテイラー・スウィフトはここまで売れたの?」という人もいる。確かに彼女は、おそらく今地球一売れているアクトだ。と同時に、ザ・ローリング・ストーンズは何百万枚ものコンサートチケットは売れるけどアルバムは売れない。すべて物事には理由があるし、我々も、業界内での自分たちの立ち位置を常にモニターする必要がある。10年前のデフ・レパードは今ほど価値がなかった。でも20年前は世界屈指のバンドだった。じゃあ今は? そういうことを常に考えている。

もちろん、CDという物が昔ほど売れていないことは承知の事実だ。「だったら作る意味あるの?」という人もいる。でも、その意味を僕なりに教えてあげる。僕の頭の中はアイディアでいっぱいだ。それらのアイディアを吐き出さなければいつか爆発してしまうよ(笑)。駐車場だって、満車で車がたくさん待っている時、先に入った車が出ていかなきゃ永遠に待ったままだろ? それと同じ。僕だけじゃない。メンバーも頭の中はアイディアだらけ。どんどん出していかなきゃ停滞してしまう。

ただ、やり方ってものはあるよ。今どきアルバム制作に500万ドルかけたら完全に金の無駄遣いだ。それより、もっとリーズナブルな予算内で最大限にカッコいい作品が作れるとしたら、絶対に作る意味がある。安っぽくなったらダメだけど、デフ・レパードのすべてをお見せすることができたら良いと思う。そして、この考え方に基づいてレコード作りができるなら、デフ・レパードはアルバムを一生作り続けていくことができる。次がいつになるかなんて誰にもわからないけど、ファンの支持が持続するかぎり作ってもいいんじゃないかと思う。正しいやり方でさえあれば。


あともう一つ大事なこと。アルバムがあればツアーができる。そしてツアーを続けたければ新曲が必要。一生「Photograph」と「Pour Some Sugar On Me」だけを演奏していたら完全なノスタルジック・アクトだ。もちろんそれら定番曲は大事だし演奏する。でも同時に新曲も提供したい。そのためには数年ごとにアルバムを作るか作らないかの決定を下す必要がある。2008年の『SPARKLE LOUNGE』以来、ようやく、新譜を出したい欲求に駆られたのが今というわけだ。その気持ちにいたるまで7年かかった。

いまだに、デフ・レパード・ライヴ・ツアーへの需要は信じられないほど高い。やってる側としてはめちゃくちゃ疲れるよ。ライヴと言ったって世界を股にかけるわけで、疲労困憊して帰ってきてすぐに「さあアルバム作るぞ」って事には絶対ならない。家庭があるし家族がいるし、少し癒しも必要だ。10代の頃とはライフスタイルがまったく異なるし、20代の頃のように365日音楽に捧げるというわけにはいかない。今の自分たちに合ったやり方ができなければバンドなんか崩壊してしまう。実際そうやって崩れていった人々も多い。

7年ぶりというけど、これまでだって4年とか5年に一枚だったよね。さほど差はないよ。量より質を求めれば、そんなにさっさとは作れない。少なくとも僕らの場合はね。しかも、ツアーの要請がめちゃくちゃあるから応えなくてはならない。

レコード産業が陥落してからというもの、コンサート・ビジネスはとても潤い始めた。僕には理解できる。あくまで持論だけど、人間って適度にボディ・コンタクトを求めていると思う。肩と肩のふれあいとか、そういうレベルでの話。昔はさ、例えばブラック・サバスが新譜を出した、ボウイが新譜を出したとなれば、友達の誰かが買ってきて、みんなでそいつの部屋に集まりむさぼるように聴いた。でも今はそれぞれがヘッドホンを付け、電車の中、飛行機の中、会社で、自宅で聴いている。誰かと接触する必要もない。そういう状況が続くと、ある時、誰かと触れ合いたいという欲求がふくらむのだろう。それがコンサートでありコンサート会場なんだ。コンサートは生もの。ダウンロードできないし、その時かぎりの楽しみ。そしてわざわざ足を運ばなければならない。特に僕らのようなヴァイナル時代の人間は、昔レコードをレコード屋にわざわざ買いに行っていた頃を懐かしむのと同じようにコンサートに行きたくなるのかもしれない。

音楽も音楽業界も常に変化している。それは当たり前のことだし、作り手としては、自分の居場所を確認しながら進んでいくしかない。今こそアルバムの出し時だと思ったわけで、ある意味偶然生まれたアルバムだということが、とてもいい結果に繋がったのではないかな。誰か偉い人に「作れ!」と言われたんじゃないところが大切なんだ。

──このアルバムの凄いところは、我々がよく知るデフ・レパードらしさがこれでもかって言うくらい出てくる一方で、ちゃんと新しい冒険というか発見がああります

ジョー・エリオット:そうだね。それは、今の僕らが過去を怖れてないからだよ。過去を「再訪」することに何の問題も感じない。たしかにAC/DCもアルバムを出すたびにやっている。批判でも何でもないよ、それが彼らのスタイルだから。でもAC/DCのアルバムにはアコースティック・ナンバーもバラードもない。デフ・レパードのアルバムには、僕らの定番をふんだんに盛り込んだ上、さらに、プラスアルファがある。別に「前どっかで聴いたことあるよね」ってアイディアでも全然いいんだ。実際今回も、フィルが「ベースラインを思いついたんだけど、すごく「Another One Bites The Dust」っぽいんだよね」という。これが10年前なら「じゃあやめとく?」ってことになっただろうけど、今は「クイーンぽいんだ! いいじゃん! 聴かせてよ!」って。僕らの手で「Another One Bites The Dust」のニュー・ヴァージョンを作れたら最高じゃない? だって僕らが作ればデフ・レパードっぽくなるんだから。それが「Man Enough」になったんだ。

僕も「ひとつ、「All The Young Dudes」をU2が弾いているみたいなのがあるんだけど」と言ったら、みんな「何だそれ?」と笑ったけど、それが「We Belong」になった。バラードじゃないけどバラードみたいな。「With Or Without」的なノリ。コールドプレイがやりそう。他にも「Forever Young」はボウイっぽいし、「Broke ‘N Brokenhearted」はフェイセスっぽいし、「Dangerous」は「Promises」っぽいし、「Let's Go」は「Pour Some Sugar On Me」っぽいし、「Battle Of My Own」は『LED ZEPPELIN III』に入っていてもおかしくないし、「Blind Faith」のワーキング・タイトルは「I Am The Rain Song」だったくらい、ツェッペリン+ビートルズだ!(笑)そういうのって楽しくない? あれっぽいとかこれっぽいとか、過去に敬意を表しているからこそできること。それに、曲作りをしているとき「○○っぽい」という風に説明するとわかりやすいしね。

もともと、僕らがバンドを始めたのだって「誰かみたいになりたい」とか、「誰かみたいな音楽をやりたい」とかそういう理由でしょ? クラプトンもペイジもタウンゼントもベックも、サンハウスやサニーボーイ・ウィリアムソンに憧れたていたし、僕らもヘンドリックスやジミー・ペイジに憧れてギターを弾き始めた。オール・アメリカン・リジェクツの子たちがギターを始めたのはフィル・コリンやスティーヴ・クラークがいたから。すべては継承なんだよ。過去がないミュージシャンなんていない。みんなピート・タウンゼントやレイ・デイヴィスやロバート・プラントになりたかった。彼らを出発点として、その後しばらくしたら自分らしさを加えていく。個性がなきゃただのパクリだからね。

僕らはクイーン、ツェッペリン、ボウイ、ビートルズ、ストーンズ、フェイセス、ザ・フーなどに影響されてここまで来た。だったら、そのすべてがこのアルバムに反映されたとしてもちっともおかしくない。そしてもちろんデフ・レパード自身にも影響されている。

──デフ・レパードの楽曲として相応しいか否か。それをあなた方自身がジャッジする時の基準は何だといえますか?

ジョー・エリオット:基準ねえ。おそらくあるんだろうな。でも今回は、14曲の収録曲に対して14曲しかなかったからすべてが必然だった。1曲だけ前から持っていたアイディアで、何となく心の隅にはあったけど、結局使われなかった物はある。おそらくそれを使うか否かの基準は「前回使われなかったのにはきっと理由があるから、だったら今回もやめよう」ということだろう。もちろん、中には『SPARKLE LOUNGE』の時から残っていたアイディアで使われた物もある。でも多くは今回スタジオで書かれた新曲であって、もし基準があるとしたら「僕らが好きな曲」ということだね。しかも14曲全部が好きな曲だったから悩むこともなかった。

苦労があったとしたら曲順だ。みんな考えていることがバラバラだからさ、今回一番頭を使ったのはそこかもしれないね(笑)。あまりにああだこうだ言いすぎてわからなくなったから、最後は全員が思っている曲順を書いて提出して、他人のを見て「やっぱりこっちの方がいい」とかそうでないとか言いながら妥協点を見いだした。結果はとても良かったと思う。

とにかく今回は、余計な口出しをするアホなA&Rとかが周りにいなかったから凄く楽だった。さすがに35年間アルバムを作ってきて、そろそろやり方もわかるよ。やりたいようにやらせてくれって。画家にだって、他人が「とても素敵な絵ですが、右下の部分が気に入りませんので直していただけますか?」とは言わないだろ? 気に入ったんなら買え、気に入らないんなら帰れ、ってことでしょ? もしかしたらそれこそが基準かな。

──最初は自然の流れから始まったアルバムですが、しばらくして目指すところとか全体像のようなものは見えてきたんですか?

ジョー・エリオット:いわゆるコンセプト・アルバムではないけど、もし曲に通じる連続性みたいなものがあるとしたら、それは、僕らが僕らだけで作った作品だからだ。同じ人間がギターを弾きベースを弾きドラムを叩いていれば当然共通点はでてくる。今回はそこにさらに、ヴァラエティを持たせたかった。デフ・レパードを長年見ている人たちは、僕らが歌って演奏できることはわかっている。でも何年も言われ続けてきたことは、「果たしてマット・ラングなしでアルバムは作れるのか」「外部の人間抜きで曲を書けるのか」だった。今回、そのあたりをきっちり証明できたと思っている。

──だからこそ『DEF LEPPARD』なんですね!

ジョー・エリオット:アルバムが仕上がるといろんな人に「で、どんな感じ?」ときかれる。家族、友人、関係者、いろいろ。で、その答を考えるうちに、「どんな感じってまさにデフ・レパードという感じ」と言うしかないことに気づいた。だって、5人の個性が丸ごと出ているし、この5人でしかできないアルバムだし、他にどんな説明ができる? だから、最も常識的というか当たり前のタイトルにしたんだ。一応、他にタイトルを考えはしたよ。でも使えそうな案はでなくて、そのうちフィルが「だったら、単刀直入に『DEF LEPPARD』にするのはどう?」って。そしたらみんなが「そうだよなあ」って。まさにデフ・レパードなんだから。一種の意思表明なのかもしれないけど、35年間セルフ・タイトルをやってこなかったしそろそろいいかな?的なノリだったよ。ヘタにアルバム・タイトルに凝る必要はないと思ったし、曲名をアルバム・タイトルにするほど飛び抜けて目立つ曲はないし。だから『DEF LEPPARD』なんだ。

──すでにアメリカでは「Let's Go」を演奏しているんですよね?

ジョー・エリオット:アメリカのロック・チャートで1位になったと聞いて、じゃあやろうぜって。でも今のところ新曲はこの1曲だけ。ツアーが始まってかなりしてからアルバムが出るし、ツアー前のリハーサルで新曲をガンガン練習するのとはわけが違う。ツアー中のサウンドチェックとかでリハするしかなくて、演奏したら誰かがiPhoneで撮ってあっという間にYouTubeで流れてしまう。だからすごく気をつけなくてはならなくて、1曲をリハするのにとても時間がかかる。楽屋で、誰がどのパートを歌うかを決めて、サウンドチェックで少しだけリハするしかなかった。そしてローナンから、これなら行ける、のゴーサインが出てやっとセットに組み込むことができた。

でも、他の新曲のことも考えているから、日本公演では何曲かやる予定だし、古い曲も何曲か考えている。日本から始まってオーストラリア、シンガポール、UKへと繋がっていくツアーは、いろいろ変化を加えていく予定。もちろんセットを新曲で埋めるようなことはしない。新旧のいい感じのミックスにするよ。

──今古い曲といいましたが、レア曲ということ?

ジョー・エリオット:レアかどうかわからないけど、しばらくライヴでやっていない曲を掘り出したいなとは思っている。日本だからこそできることってあるし、いろんな類のファンを楽しませる内容にしたいと思っている。

──本当に待ち遠しいです! 最後に来日を楽しみにしている日本のファンへのメッセージをお願いします。

ジョー・エリオット:デフ・レパードのコンサートはいつだって楽しい、最高のロック・ショーだ。今回も例外ではないよ。バンド自身はもちろん、僕らが世界一のライティング・エンジニアだと思っているケンジもちゃんといるから、サウンド的にも視覚的にも楽しめること間違いなし。楽しみにしていてね。そしてもちろん最新アルバム『デフ・レパード』もよろしく!

インタビュアー 中村美夏
PHOTO BY ROSS HALFIN



<デフ・レパード・35周年ジャパンツアー>

11月9日(月)日本武道館
11月10日(火)オリックス劇場(大阪)
11月12日(木)ZEPP NAGOYA
11月13日(金)仙台サンプラザホール
ウドー音楽事務所 udo.jp/

デフ・レパード『デフ・レパード』



10月30日世界同時リリース
メンバー全員直筆サイン フォトカード付き通販限定スーパー・プレミアム・ボックス・サイト
1.レッツ・ゴー
2.デンジャラス
3.マン・イナフ
4.ウィ・ビロング
5.インヴィンシブル
6.シー・オブ・ラヴ
7.エネジャイズド
8.オール・タイム・ハイ
9.バトル・オブ・マイ・オウン
10.ブロークン・ブロークンハーテッド
11.フォーエヴァー・ヤング
12.ラスト・ダンス
13.ウィングス・オブ・アン・エンジェル
14.ブラインド・フェイス
15.ラスト・ダンス(デモ)※日本盤限定ボーナストラック

◆『デフ・レパード』オフィシャルサイト
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