【インタビュー】トゥライ、デビューアルバムは「まさかやると思ってなかった冒険の始まり」

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名探偵コナンのテーマ曲として知られるVALSHEのヒット曲「Butterfly Core」「君への嘘」の作曲やプロデュースを手掛けたことでも知られるminatoが11月11日、トゥライ名義でメジャーデビューアルバム『ブラックボックス』をリリースする。minatoは2008年からVOCALOID楽曲を動画サイトに投稿。今アルバムのボーナストラックとして収録されている「magnet-repeat over again-」は2010年にJOYSOUND年間総合カラオケチャートで4位を獲得するほどの大ヒットを記録したナンバーだ。また、minatoとは別にトゥライと名乗るようになったキッカケは無記名で自身が歌ったカバー楽曲をネットに投稿したところ数十万再生のヒットとなり、“名を名乗れ”コールが起きたことによるもので、リスナーのアイディアを採用する形でヴォーカリスト“トゥライ”が誕生した。

◆「ブラックボックス」ミュージックビデオ

約8年の活動歴を経て、自身を白日のもとにさらけ出したアルバムが『ブラックボックス』だ。自己のアイデンティティを確立したいという決意は2年以上の月日の中で作品として育まれ、1stアルバムとは思えないクオリティを持ってここに結実した。普遍性のある豊かなメロディ、洗練されたアレンジ、葛藤や嘆きを未来の希望とともに映し出した人間味あふれる歌詞。「自分は表に出て表現するタイプではないとずっと思っていた」というトゥライの心境の変化、その音楽観に迫る。

   ◆   ◆   ◆

■表に出ること自体、向いていないと思っていました
■けど、可能か不可能かじゃなく“やってみたい”って

──トゥライさんは、VALSHEのコンポーザー&サウンドプロデューサーのminatoとして認知されている一方で、それ以前は自身のボーカル作品をネット上で発表するなど、約8年の音楽生活を経て今回、初めてメジャーデビューを果たすわけですよね。それも初の顔出しというカタチで。今まで謎のヴェールに包まれた存在だったと思いますが、デビューに至った気持ちの変化や決意のキッカケになった出来事というのは?

トゥライ:これまでminatoとして作曲をしたり、トゥライとして歌ったりする中で、VALSHEのサウンドプロデューサーとしてminato名義で多くの楽曲を書かせていただいたりとか二人三脚でやってきたんですが、キッカケは、VALSHEが初ライヴ(2013年)を行なったときに、自分も何か発信したいと思ったことですね。

──VALSHEさんのステージを観て、湧き上がったものがあるということですか?

トゥライ:リハーサルをしている頃からですかね。ステージの真ん中に立つ人間は替えがきかないじゃないですか。それまで、VALSHEはソロアーティストだけど自分もその一員だという気持ちでやってきたんですが、ステージに立つことで彼女がアイデンティティーを確立したなと思たんです。そのときに“じゃあ、自分は何だろう?”っていう疑問が湧いてきたんですね、“自分はいったい何者だったのかな”と。

──作曲だったりプロデュースだったりというスタジオ作業がminatoとしての役割ですよね。でも、改めて自分のアイデンティティーは?って。

トゥライ:そうですね。裏方として作曲や制作を行なってきたけれど、もともと歌も唄うし、いろいろな人とコラボしたいと思うタイプなんです。だから、自分らしさとか本当の自分はどこだ?っていう疑問が湧いてきて、それを確立するためにも1度、自分で全てのことをやってみたいと思ったんです。

──自身の存在を明らかにして、ステージで歌うことも含めた表現活動をしたいと?

トゥライ:その頃はステージに立つところまではイメージしていなくて、まず楽曲を作って歌って全部自分で表現してみたい、発信してみたいという気持ちが大きかった。今まで正直、そんなこと1回も思ってなかったんですが。

──それまでは表に出なくていいって?

トゥライ:ええ。表に出ること自体、向いていないと思っていました。もともと、すごく上がり症だし、人前で何かを発信する才能はないと思っていたけれど、可能か不可能かじゃなく、“1回やってみたい”って。

──人生の大変化ですね。トゥライさんは幼少期からピアノを習っていて、学生時代は吹奏楽部に所属。ずっと音楽に携わってきたんですよね。

トゥライ:はい。ピアノは4歳ぐらいから始めたんですが、その頃から譜面通りに弾くのが苦手で。

──はは。クラシック向きじゃないですね。

トゥライ:ははは。ずっと習ってはいたんですけどね。クラシックって“こういうふうにアレンジしたほうがいいんじゃないか”と勝手に演奏したらダメじゃないですか。小学生のときにそれを1回やらかして先生にすごく怒られたんです。“そうか、やっちゃいけないんだな”って(笑)。次第にそれが窮屈になって、だったら自分で作ろうという発想になったのが10代後半ですね。

──ちょうど将来のことを考え始める時期だと思うんですが、トゥライさんはどう考えていたんでしょうか?

トゥライ:最初はピアノが好きだったり、吹奏楽部に入ってはいたものの、作曲の勉強をしたことも音楽学校に通っていたわけでもないので、音楽で食べていくなんて自分にできるわけないと思っていたんです。でも、あるとき作曲をしている友達に巡り合って、「やってみれば?」って勧められて「じゃあ、やってみようかな」って。そうしたらクオリティは別として出来たので、少しずつ曲を書きためるようになったんです。

──初めてネットに曲を投稿したのは?

トゥライ:20代前半あたりですね。

──レコード会社のオーディションに応募する方法など、いろいろな売り込み方法はありますが、まずネットから?

トゥライ:作曲のコンペみたいなものに出したことはあったんですが、なかなか感想までは聞けないじゃないですか。ネットに出すと率直な意見が返ってきますよね。それがよかったっていうのはありましたね。

──なるほど。作品に対するリアクションがほしかった?

トゥライ:そこから人間関係が広がったんです。普通に活動していたらできないようなお仕事をいただいたこともたくさんあったんですね。そのあたりが変わり始めたキッカケかなと思います。

──その過程でVALSHEさんと出会ったんですよね。

トゥライ:はい。もともと僕はVOCALOIDの曲を投稿していたんですが、同時にトゥライとして歌も投稿していたんです。そんな中、ネットの共通の友人を介してVALSHEと知り合ったっていう。以前から、名前やどういう声で何の曲を歌っていたのかは知っていたので、「あの歌をうたっている人ですね」という認識はありました。ネットでやりとりした上で半年後ぐらいに実際に会うんですが、会うまでにものすごい速さで意気投合しているので。

──それは音楽的な部分?

トゥライ:もともと声が好きだったんです。知り合って、やりとりしたら、ものごとの価値観や聴いてきた音楽とか、好みがかなり近かった。だから、CDを出させていただく前から「何か一緒に作ろうよ」っていう話はしていたんですね。タイミングよく「出してみませんか?」っていうお話をいただいたので、いろんなことがハマって「じゃあ、やろうか」って。

──それまでもネットを介して知り合った方は多いと思いますが、VALSHEさんとは目指す方向が一致していた?

トゥライ:そうですね。他の方にも曲を提供していたんですが、ホントに一緒にタッグを組んでやるとなると、声や歌が好きなだけではなく、ものの考え方とか価値観がピタッと合ってないとできないと思っていたんです。人間的な部分も含めて全てがマッチしたのは彼女だけでした。

◆インタビュー(2)へ
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