【インタビュー】サバトン「平和目的でやって来たんだ。戦車は持ってきたけどね(笑)」

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<ラウド・パーク15>で初来日を果たしたスウェーデンが誇るウォー・メタル・バンド、サバトンは、圧倒的な破壊力でヨーロッパのビッグ・フェスティバルも蹂躙してきたそのパフォーマンスで、本年度ベスト・ライヴ・アクトとの呼び声に相応しい圧巻のステージを繰り広げてみせた。そんなサバトンの初来日を記念し、デビュー・アルバムから一挙7作品が12月23日に日本国内限定での再リリースが決定となった。すでに日本国内での販売が終了していたアルバムも多数あり、日本のメタル・キッズからの熱い要望にバンド側も応える形だ。

◆サバトン画像

サバトンの日本初上陸ライヴによって、<ラウド・パーク15>のステージは戦場と化していた。15年以上のキャリアを誇り、母国スウェーデンとヨーロッパ全土で鋼鉄のカリスマとして崇拝される彼らだが、来日はこれが初めての事である。ステージ上に戦車を据えメンバー全員が激しく動きまくるライヴ・パフォーマンスは、<ラウド・パーク>にニュー・ヒーローが降臨した瞬間を高らかに宣言するものとなった。

バンドの熱演に応えるように、観衆も盛り上がる。いくつものサークル・ピットが生まれ、一緒に歌うさまは、大規模の野外フェスの常連である彼らも驚くほどだったようだ。ヴォーカルのヨアキム・ブローデンは、ライヴ中ずっとトレードマークのサングラスをかけていたが、終盤「君たち、最高だよ」とそれをはずすと、心なしか瞳がうるんでいるように見えた。

<ラウド・パーク>から一夜明けてヨアキム、そして同じくオリジナル・メンバーであるベーシストのパル・サンドストロームが日本でのライヴの感想、バンドのコンセプト、そして向かっていく未来について語った。




──<ラウド・パーク15>でプレイした感想をお願いします。

ヨアキム:<ラウド・パーク>でプレイするのは、すごく楽しみにしていたんだ。俺たちが初めて本格的なヨーロッパ・ツアーをしたのは2006年で、ドラゴンフォースと一緒だった。そのとき彼らは、日本のオーディエンスがいかに最高かを教えてくれたよ。それで俺たちも期待していたんだ。日本のファンのの反応は、その期待をはるかに上回るものだったよ。

パル:「スウェディッシュ・ペイガンズ」で場内がひとつになって合唱した瞬間は、背筋がゾクッと来たよ。スウェーデンも日本も関係なく、音楽でひとつになることができた。俺たちは平和目的でやって来たんだ。戦車は持ってきたけどね(笑)。

──独自のライヴ・パフォーマンスのスタイルは、どのようにして創り上げたのですか?

パル:ツアーの連続と試行錯誤の結果だよ。近道なんてない。日本でプレイするのは初めてだから、「なかなか良い新人だな」と思う人もいるかも知れないけど、実際には15年間ずっと続けてきたんだ。

ヨアキム:デビューした頃は小さなインディーズに在籍していたから、スウェーデン国外でCDを入手するのが難しかったんだ。だからとにかくライヴをやって、知名度を高めていくしかなかった。それでドイツなどのファンがインターネット上で話題にしたり、CDショップに問い合わせしてくれたりして、徐々にサバトンの名前が拡がっていったんだ。レコード会社がゴリ押ししてフェスティバルにねじ込んだりするのではなく、ライヴを重ねてチャンスを手にしたんだよ。千人以上のファンが俺たちのショーに集まるようになって、レコード会社がバカでかい広告を載せなくても、メタル雑誌も俺たちを無視できなくなった。それで雑誌を読んだメタル・ファンが会場に足を運んで、現在に至るわけだ。

──全員がステージ上で動き続けて、すごくエキサイティングなショーでした。

ヨアキム:俺たちはヘヴィ・メタル・バンドだからね。常にエキサイティングなライヴを見せることを心がけているし、止まっているヒマなんてないんだ。それに気をつけているのは、シリアスになり過ぎないことだ。ステージ上のMCでちょっとしたジョークも飛ばすようにしているよ。「レジスト・アンド・バイト」では俺もギターを弾くから、動きがなくならないように、クルーに弾薬箱を持って走り回らせたり、ステージ上で弾薬補給や地雷除去など、いろんな役割を担当させているんだ。マイクを持たせて、歌わせてみたこともあるけど、それは失敗だったな(苦笑)。

──ステージ上の戦車もインパクトがありました。

ヨアキム:戦車はサバトンのショーの重要な一部だよ。俺たちの音楽をヴィジュアルで表現するステージ・セットを探し求めていたんだ。それで数年前、イギリスの彫刻家でアート・デザイナーをやっている人物と出会って、戦車のアイディアが出た。今回日本でプレイするにあたって、中途半端なものにはしたくなかったから、持ってくることにしたんだ。

パル:今回は1台しか持ってこなかったけど、実は戦車は2台あるんだ。1台の名前は“オーディ”。「トゥ・ヘル・アンド・バック」でも歌っているアメリカの軍人オーディ・マーフィーから取った名前だ。日本に持ってきたのは“ヴァルター”だ。「ハーツ・オブ・アイアン」に出てくるドイツ第12軍の大将から取ったんだ。

──現時点での最新アルバム『ヒーローズ』(2014)は20世紀の戦場での“ヒーローズ=英雄”を題材にした作品ですが、どのようにアイディアを得たのですか?


ヨアキム:『ヒーローズ』の歌詞のヒントとなったのは、『コート・オブ・アームズ』(2010)に収録されていた「ホワイト・デス」だった。この歌は第二次世界大戦中、ソ連軍に“ホワイト・デス=白い死神”と恐れられたフィンランドの狙撃手シモ・ヘイヘについてのものだ。このとき、大きな合戦について歌うのもいいけど、戦争に関わった“人間”をテーマにしたいと考えた。第一次世界大戦中のパッシェンデールの、数十万人が亡くなった戦いについて歌った「ザ・プライス・オブ・ア・マイル」も誇りにしているけど、曲ごとに1人の人間に焦点を当てることで、より感情移入を出来ると感じたんだ。

パル:このアルバムでは、ファンからもアイディアを募ったんだ。自分たちが既に知っている人物や出来事だけでなく、さらに掘り下げたかったからね。そしたらスウェーデンやドイツ、ベルギーやチェコ、それにクロアチアや日本、オーストラリアのファンから、ものすごい数のアイディアが送られてきたよ。それを参考にしながら俺たち自身でさらに掘り下げて、題材を選んでいった。このアルバムで描かれている“ヒーロー”達は、みんな実在する。だからこそ、『ヒーローズ』の歌詞はエキサイティングなものに昇華されたんだ。

──ヨアキムは『カロルス・レックス』(2012)のライナーノーツで「自分にとって特別な位置を占める曲は『クリフス・オブ・ガリポリ』」と書いていましたが、『ヒーローズ』が“英雄”たちを描いたのに対して、この曲は1915~16年のガリポリの戦いで命を失った、名も無き兵士たちについての曲という、大きな違いがありますね。

ヨアキム:うん、歴史に名を残す戦士だけが英雄ではない。戦場で亡くなった兵士たちにもそれぞれの人生があり、それぞれのドラマがあったんだ。ガリポリの戦いでは連合国軍・オスマン帝国軍ともに数多くの命が失われた。俺たちは「クリフス・オブ・ガリポリ」を発表した後に初めてガリポリを訪れたけど、彼らのことを思うと、胸が張り裂けそうになったよ。

──サバトンの音楽や歌詞世界は非常に男性的なものを感じるのですが、あなた達にとって女性はどのような存在でしょうか?

ヨアキム:戦争は男だけのものではない。実際には女性も戦ってきたんだ。「ナイト・ウィッチズ」はソ連の夜間爆撃航空連隊についての歌だ。この連隊は女性ばかりで組織されていて、旧式の爆撃機に乗って、エンジンの音で接近しているのがバレないように、近くに来るとエンジンを停止して、滑空しながら爆撃したんだ。ドイツ軍は彼女たちを“夜の魔女”と恐れた。

パル:ソ連の女性が特別にストロングでビューティフルなことは世界的に有名だからね。『ヒーローズ』の1曲目にピッタリの題材だと思うよ。

──20世紀以降のスウェーデンは第1次・第2次世界大戦で中立を守ってきたせいで、戦場の“英雄”が生まれていませんね。

パル:うん、でも実はラオル・ヴァレンベリ(ワレンバーグ)を題材にすることも考えていたんだ。彼は在ブダペストのスウェーデンの外交官だった。ハンガリーがナチ占領下になったとき、彼はユダヤ人やロマに書類を発給して、スウェーデンの保護下にした。そうして彼は何万人もの命を救った。オスカー・シンドラーがやったのと同じことをした、スウェーデンの誇りなんだ。でも彼はソ連軍の司令部に呼び出されて、そのまま行方不明になってしまった。彼がどうなったかは、今なお歴史のミステリーなんだ。

ヨアキム:彼についての曲を『ヒーローズ』に入れなかったのは、彼が直接戦闘に関わらなかったからだった。でも将来的に彼についての曲を書くかも知れないよ。

──日本でも杉原千畝という外交官が大勢のユダヤ人にビザを発給して、人命を救いました。彼もまた“英雄”の一人かも知れませんね。


パル:それは興味深い話だね。彼についても、ぜひ調べてみるよ!以前から日本の歴史や文化には興味があったけど、今回初めて訪れたことで、より深く掘り下げてみたくなった。太平洋戦争やサムライ時代の合戦など、さまざまなドラマがありそうだね。

──サバトンが描く歌詞の世界は刺激的ですが、それと同時に、『カロルス・レックス』のスウェーデン語ヴァージョンの響きとサウンドも素晴らしいものでした。これからもスウェーデン語ヴァージョンは作る予定ですか?

ヨアキム:確かに母国語であるスウェーデン語で歌うことで、メッセージはよりパワフルになる。スウェーデン語を理解できなくても、聴く人にエネルギーが伝わってくるんだ。『ヒーローズ』のスウェーデン語ヴァージョンを作るかどうか、バンド内で話し合ったんだよ。でも結果的に、今回はパスすることにした。『カロルス・レックス』はスウェーデン国王カール12世(1682-1718)を題材にした作品だったから、スウェーデン語で歌うことに意味があったんだ。もしラオル・ヴァレンベリについてのアルバムを作ることになったら、きっとスウェーデン語ヴァージョンも作ることになるだろう。でもドイツやロシア、日本の歴史を題材にした曲をスウェーデン語で歌ったら、違和感があるだろ?俺はロシア語や日本語は話せないから、英語で歌うしかないんだ。

──スウェーデン語と英語以外では、どんな言葉で歌えますか?

ヨアキム:ドイツ語は学校で習って少し話せるし、ドロ・ペッシュの「Fur Immer」とラムシュタインの「Feuer Frei」というカヴァー曲をドイツ語で歌ったことがある。それと「40:1」のポーランド語ヴァージョンを録ったことがあるよ。俺はポーランド語は話せないから、コーチについて、何度も何度もリハーサルした。「発音は良かったけど、音がズレた」とか「ヴォーカルは良かったけど発音がダメ」とか、本当に大変だった(苦笑)。

──サバトンが自ら主宰する<サバトン・オープン・エアー>フェスティバルについて教えて下さい。

パル:<サバトン・オープン・エアー>フェスは2008年、俺たちの地元のファールンで『ジ・アート・オブ・ウォー』のリリース・パーティーとして始まったんだ。友達バンドを呼んで、楽しくやろうって感じだった。でも徐々に話が大きくなって、今では3日間、2ステージの、スウェーデン最大のフェスティバルのひとつとなった。世界中からファンがやってくるよ。サバトンは大抵、最終日のヘッドライナーとして演奏する。毎年、通常のツアーとはセットリストを変えてプレイするんだ。

ヨアキム:これまで出演してくれたバンドはハロウィン、ガンマ・レイ、テスタメント、ドラゴンフォース、エピカ…彼らに共通しているのは、俺たち自身がファンだということだ。人気のあるバンドを集めて儲けようとか、そういう目的のフェスではない。まず俺たちが見たくて、大勢のファンに見てもらいたいバンドを優先してブッキングするんだよ。300人のスタッフやクルーも、みんなサバトンのファンなんだ。だからフェス運営には問題があるんだ。みんなサバトンのライヴを見たいから、その時間帯には仕事を入れたがらないんだよ(笑)!

──<サバトン・オープン・エアー>を国外で開催するなど、規模を拡大する予定は?


パル:今年はファールンの<サバトン・オープン・エアー>に加えて、ドイツで『Noch Ein Bier Fest』をやったんだ。“ビール、もう1杯!”って意味だよ。1日のフェスで、サバトンがトリをパワーウルフやコルピクラーニが出演してくれた。サバトン銘柄のビールを発売するんで、そのリリース・パーティーという意味合いもあったんだ。

──ぜひ<サバトン日本酒フェス・イン・ジャパン>も実現させて下さい!

ヨアキム:それが実現したら最高だね。いきなり開催するのは無理だから、まずは次のアルバムを完成させて、もう一度ジャパン・ツアーをやって、その後の展開として考えたい。来年8月には新作を出したいと考えている。内容は…ヘヴィ・メタルで、戦争について歌っている(笑)。ただ、日本のサケには気を付けないとな。前回サケを飲んだときは次の朝、二日酔いで頭が割れるようだった。飲み過ぎには気をつけながら、日本のファンと乾杯する日を楽しみにしているよ。

Photo by Mikio Ariga
取材・文:山崎智之


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◆サバトン・オフィシャルサイト
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