【ライヴレポート】Jupiter、ツアー最終日に「自分の生き方は自分で決めるもの」

ツイート

Jupiterが10月17日、全国13本に及ぶツアー<Prevenient Grace>のファイナルとして行なった東京・新宿ReNY公演は、これまでの彼らの最高到達点を示す極めて充実した内容だった。

◆Jupiter 画像

場内が暗転し、各地公演の模様を振り返るショート映像が劇的なサウンドを伴って流される。オーディエンスの期待感が一気に高まる中、幕が開き、メンバーは一人ずつ定位置につき、すかさず激しいイントロの「ARCADIA」をスタートさせた。ヘッド・バンギングで応える観客との熱いやりとりも目に飛び込んでくるが、ドラマ性のある楽曲作りの特性が詰まったマテリアルであることも再認識する。ハイ・トーンのスクリーミングを響かせるZIN(Vo)が、「会いたかったぜ、東京! 楽しんでいこうぜ!」と煽り、そのまま「B.L.A.S.T」へ。イントロではステージ前方に設置された4本のスモーク・マシンが勢いよく白煙を吹き上げる。そしてフロントの4人がYUKI(Dr)のほうに向かって中央に集まり、疾走する「SACRED ALTAR」をプレイ。とにかく序盤から攻めの姿勢を感じさせる展開だ。


「俺たちと激しい嵐を乗り切る覚悟はできていますか!」と挑発するZIN。8月にリリースされた最新シングル「TOPAZ」のカップリング曲「Iolite」で変化をつけていくが、ファンも充分に聴き込んできている様子だ。HIZAKI(G)もTERU(G)もどのマテリアルでも流麗なソロプレイを聴かせる一方で、躍動的に舞台上を右へ左へとポジショニング。見た目にもスピード感が増していく見せ方はお馴染みのものだろう。続くヴォーカル始まりの「氷の中の少女」はメロウな印象もあるものの、やはりハードさも鍵となる。心地よく全体像を支えているMASASHI(B)のフレージングや曲調以上にフレキシブルなYUKIのドラミングに心酔した人も少なくなかったに違いない。

ライヴアレンジされたツインギターを軸とするイントロダクションに導かれた「Scarlet」は、長らく親しまれてきた代表曲の一つ。歌を聴かせながら、各パートのテクニカルかつメロディアスなプレイも堪能させる。盛り上がりも一際大きくなった。確実にフロアの温度も上昇している。



ここで披露されたのが、新曲のインストゥルメンタルだ。今回のツアー中にHIZAKIが完成させたとの話だが、それを早くもセットリストに組み込んでくるのは、実力派集団ゆえに可能なこと。HIZAKIのギターのほぼすべてがタッピングで構成されているのも特徴的で、彼のちょっとしたセンスのよさが感じ取れる場面でもあった。曲はそのままJupiterの敏腕演奏陣の力を改めて堪能できる「Rose Quartz」へとつながれた。これも「TOPAZ」に収められていた楽曲で、この見事な流れは圧巻としか言いようがない。

しばしのインターバルの後、アーミングで熱情的に煽る形で「Darkness」が始まると、再びアグレッション全開のモードに。グロウルやブラストビートを含め、イエテボリスタイルのメロディックデスメタルが、Jupiter流に昇華された佳曲は、聴き手のフラストレーションを瞬時に放出させる。そのある種の浄化作用は、次の「絶望ラビリンス」にも受け継がれていく。いわゆるコーラスパートの掛け合いを始め、バンド側からの仕掛けは様々あるが、会場全体にポジティヴな一体感が生まれているのがわかる。



「目がくらむ」ほどのオーディエンスからの好反応を素直に喜びながら、「自分の生き方は自分で決めるものだ!」とメッセージを発したZINは、そのまま「Shining」をコール。ここで感じられたのが、偶発性が生んだ奇跡のような瞬間だ。バンドとファンの純粋なる関係の描写と言えばいいだろうか。無論、メンバー自身も相応に想定してはいたのだろうが、まさにタイトル通りの輝かしき光景が見えてきたのは、Jupiterのマテリアルの中でもポジティヴな意味での特異性を持つこの曲が、絶妙なタイミングでの演奏となったことだ。時として音源にはない立体像が形作られる、ライヴという場にしかあり得ない空間がここにはあった。

Jupiterの個性の一つであるツインリードギターの美しさが堪能できる「LAST MOMENT」でさらに求心力を高めた後は、「Classical Element」へ。同名の1stアルバムに収録された約12分の長編だ。荘厳な前奏が流れる中、HIZAKIは胸の前で手を組んだ。そのシーンだけで楽曲に込めた思いは伝わることだろう。彼らのアーティスティックな感性が余すことなく表現された大作にじっくりと聴き入るオーディエンス。送り手と受け手の集中力が相互に作用しながら、柔と剛を交えながら、Jupiterの掲げる美の世界観が具現化していく。


これだけでも感嘆するところだが、この日は続いて「The History of Genesis」が演奏されたのだから驚愕するしかない。2ndアルバムのタイトル・トラックであり、こちらも約8分の楽曲である。終盤ゆえのクライマックス。気付けば、合わせて20分の物語はあっという間に終わってしまった印象だが、このようなセットを実体験できたのはとても貴重だった。しかし、そんな取り組みも、野心的ではなく、あくまでも自然なものであると思わせるのも、Jupiterの凄さだろう。そして本編は「俺たちJupiterからの思いを一人一人に贈ります」と、「TOPAZ」で締め括られた。

二度行われたアンコールが終わった後には、メンバーそれぞれがマイクをとった。「改めて愛と美の大切さを感じることができました」(ZIN)、みなさんのお陰でいいツアーになりました」(YUKI)、「今までで一番熱いライヴだった」(MASASHI)、「奇跡は当たり前じゃない」(TERU)、「このツアーをやる前に、何か自分の中で答えを見つけたかった。……人を救う愛こそが最も尊いものです」(HIZAKI)といったものだが、今回の各地での公演がいかに思い出深いものになったのか、言葉の端々から感じ取れるだろう。来る12月27日には、その足跡を追いかけたドキュメンタリーライヴ映像作品『Prevenient Grace』もリリースされることになっている。


Jupiterとはいかなるバンドなのか。そんな姿をファンに伝えきった、その気持ちを体現するかのように、早くも2016年4月までの公演が発表になった。単独のものにしても、多彩な精鋭陣と競演するものにしても、コンセプトめいたテーマが見えてくるだけに、今から惹き付けられる。

しかし、ここに来て、予想だにしなかったニュースも飛び込んできた。4月29日の東京・新宿ReNY公演<Jupiter Tour ~CREATED EQUAL~Tour Final“BLESSING OF THE FUTURE”>をもって、YUKIとMASASHIが脱退するというのである。これほどまで成熟し、さらなる進展も感じさせるステージを観ているだけに、にわかには信じがたく、残念ではあるものの、ミュージシャンとしての理想を追究しようとするそれぞれの信念は、尊重されるべきものではあるだろう。もちろん、Jupiterの活動は一旦止まることになるが、そう遠くない将来に新たなラインナップで最前線に復帰する考えだ。その“約束の日”をポジティヴに待っていたい。

   ◆   ◆   ◆


【Jupiter、MASASHI [Bass] / YUKI [Drums] 脱退】

JupiterのベーシストMASASHIとドラマーYUKIが、2016年4月29日新宿ReNY のライブをもってバンドを脱退することが発表となった。2013年の結成からV系メタルバンドとして独自のポジションを開拓してきたJupiter。その基軸を支えてきたのがリズム隊の二人だ。Jupiterはメンバー脱退後も、ZIN[Vo]、HIZAKI[Gt]、TERU[Gt]の3人を中心に活動を継続していく。以下、Jupiter、MASASHI、YUKIから到着したコメントをお届けしたい。

「いつもJupiterを応援いただきまして誠にありがとうございます。突然のお知らせになりますが、2016年4月29日新宿ReNY<Jupiter Tour ~CREATED EQUAL~Tour Final “BLESSING OF THE FUTURE”>をもってBa.MASASHIとDr.YUKIはJupiterを脱退することとなりました。既に発表されているライブスケジュールは“5人”で全精力を注いでいきますので、今まで通りご声援をよろしくお願いいたします」──Jupiter

「色々と活動の幅を広げたいという自分勝手な思いで、メンバーにも迷惑がかかってしまうことを考え、この決断に至りました。Jupiterの活動を始めてからとてつもなく濃い時間の中でたくさんの成長ができました。応援してくれているファンの方々、関係者の方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今後も音楽活動は続けていきたいと思っておりますので、引き続きJupiter共に応援していただければ幸いです」──MASASHI [Bass]

「ドラマーとしての活動と可能性を広げるべく、この度Jupiterからの脱退を決意しました。2016/4/29のワンマンライブが最後になりますが、最後まで全力で叩かせていただきます。この3年で得た経験と知識は大切な宝物です。ファンの皆さん、関係者の皆さん、そしてメンバー、本当にありがとうございます。更に飛躍するJupiterを今後もよろしくお願いします」──YUKI [Drums]

   ◆   ◆   ◆

取材・文◎土屋京輔(ライヴレポート)
撮影◎KEIKO TANABE


■ライヴ情報

■<ナルシス漆黒フェス 夢のつづき>
2015/12/10 [木] 新宿BLAZE
 w / ALvino / BORN / heidi. etc.
■<横浜メタル地獄 スペシャル!! >
2015/12/26 [土] 新横浜NEW SIDE BEACH!!
 w / WILD FLAG
■<闘魂地獄祭り~第4獄~>
2016/01/19 [火] 高田馬場club PHASE
 w / 地獄カルテット/ Mardelas

■<Jupiter Presents ~EQUAL EFFECT~>
2016/ 1/16 [土] 静岡Sunash
 opening act:HIZAKI
2016/ 1/23 [土] 目黒鹿鳴館
 vs Far East Dizain
2016/ 1/24 [日] 本八幡Route Fourteen
 vs CROSS VEIN
2016/ 1/30 [土] 神楽坂TRASH UP!
 vs 犬神サアカス團
2016/ 1/31 [日] 浦和ナルシス
 vs CRims [ 潤(ALvino)Project ]
2016/ 2/06 [土] 町田The Play House
 vs Mix Speaker’s, Inc.
[チケット一般発売日] 2015年11月21日(土)

■<Jupiter Tour ~CREATED EQUAL~ 東名阪2Daysライブ>
2016/ 2/16 [火] 渋谷REX
2016/ 2/17 [水] 渋谷REX
2016/ 4/09 [土] 大阪RUIDO
2016/ 4/10 [日] 大阪RUIDO
2016/ 4/16 [土] 名古屋ell.FITS ALL
2016/ 4/17 [日] 名古屋ell.FITS ALL
[チケット一般発売日] 2015年12 月19日(土)

■<Jupiter Tour ~CREATED EQUAL~ Tour Final “BLESSING OF THE FUTURE”>
2016/ 4/29 [金/祝] 新宿ReNY
[チケット一般発売日] 2015年1月30日(土)

■ツアードキュメントDVD「Prevenient Grace」

2015.12.27 Release

◆Jupiter オフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス