【インタビュー】ジェシカ・ウルフ、大地に根を張ってすくっと立ち上がる力強さに満ちた『GROUNDED』

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アルバム『RENEGADE』で2013年に日本でもデビューしたフィンランド出身のシンガーソングライター、ジェシカ・ウルフが2年振りにアルバム『GROUNDED』を完成させた。音楽活動のほか、カンフーの達人であり、スタントや蛇使いという、異色のプロフィールを持つ彼女。最新作は、ロックサウンドをベースにより広がった音楽性も聴きどころ。2年の年月を経て、アーティストとしてのみならず、女性としても心身共に美しく洗練された彼女が、この作品を提げBARKSに二度目の登場。

◆ジェシカ・ウルフ~画像~

■鍵もパスポートも失くすし飼っている蛇が逃げて屋根の上に上がっちゃったり(笑)
■私ってこういう人なんだという開き直りの心境を歌詞に書いたのが「RECKLESS」の歌詞


――前作『RENEGADE』から今作『GROUNDED』までの約2年間、どんなことを考えて過ごしていましたか?

ジェシカ・ウルフ(以下、ジェシカ):『RENEGADE』を発売したあとから、ずっと仕事が続いていました。旅に出て家にいないことも多かったし、スタントやアクションの仕事で休みなく突っ走っている感じだったから、エネルギーも外向きだったんでしょうね。ふと気づいた時に、自分の中にいる小さな子供の声のようなものにまったく向き合っていなかったということに気づきはじめて。そういう自分の精神状態は、カンフーや歌のトレーニングをしている時も出ていたみたいで。カンフーの師匠には「重心を下にして、力をもっと下に集めなさい。高く飛ぶためには下にパワーを集めるんだよ」と言われ、歌の先生には「喉から声を出しちゃダメ。もっと下の方を意識して、お腹から声出さなきゃ」と言われました。偶然にも同じようなことを言われたんです。

――エネルギーを出すばかりだったから、充電が必要だったんですね。

ジェシカ:そう。仕事とプライベートのバランスに苦しんでいたところもあったと思う。どうしても「いつも突っ走っていたい!」という気持ちになってしまうけど、「休む」ということをバカにしちゃいけないですよね。例えばギターだって、弾きながらチューニングすることはできない。チューニングした後で弾いてこそ、良いパフォーマンスが出来る。仕事も同じように、じっくり休んで、自分の内面とコネクトする時間を持ってこそ、良い作品が生まれるということを実感しました。


――その状態から作品に至るまでの経緯は?

ジェシカ:2013年の夏に、<SUMMER SONIC>を見るために、日本に遊びに来たんですけど、お客さんとして座って音楽を観ることができるという体験が自分にとって良かったんでしょうね。ライヴを見ている時に急に『GROUNDED』という言葉が降りてきて。その時に、新しいアルバムのコンセプトは「これだ!」って直感で感じて、ライヴを観ながらすぐに『GROUNDED』の歌詞を書き始めたの。帰国後、すぐにアルバムを制作するためのチーム……プロデューサー、ソングライターたちを集めて、1年くらいかけて制作して出来上がったのが今回のアルバムよ。

――この作品がリリースされて、またしばらくは忙しいと思いますけど、『RENEGADE』をリリースした後に忙しくなって自分と向き合う時間がなくなってしまったようにならないでくださいね。

ジェシカ:もう大丈夫! このアルバム自体、「ゆっくりして!」っていう自分へのメッセージとして作ったから(笑)。

――アルバム全体は、前作よりもポップな色が濃いのかなと思ったんですけど、サウンドのイメージはどういう風に考えましたか?

ジェシカ:『RENEGADE』と比べるとフレッシュな印象を与えたかったということがありました。だけど、ロックな要素は失わずにフレッシュにしたかった。バラエティに富んだ、いろんな表情を込めたかったし、もうちょっと幅を感じさせたいと思ったんですよ。


――ロックサウンドをベースにポップなんですけど、歌詞には女性ならではの繊細さも込めていますよね。

ジェシカ:最初のアイデアはすごくシンプルだったりすることが多いんですけど、一つの言葉、一つの想、それが拡大鏡で観るようにどんどん広がっていくというのが作詞のプロセスにはあるんです。例えば「RECKLESS」という曲は、もともと自分がすごい忘れっぽくて、失敗ばっかりしているんですね。どこにいっても何かしらドジをやらかすというのがいつものパターンで(笑)。

――(笑)例えばどんなドジを?

ジェシカ:鍵も失くすし、パスポートも失くすし、旅行に行く直前に水道管が壊れてアパート中が水浸しになったり、飼っている蛇が逃げてしまってアパートの屋根の上に上がっちゃったり(笑)。次からはちゃんとしようっていつも思って頑張るんですけど、そういう部分ってなかなか変わらないんですよね。相変わらずのドジをやった時に、「あぁ、もうこれはダメだ」と思って、私ってこういう人なんだという開き直りの心境を歌詞に書いたというのがこの歌詞。曲はいろんなきっかけで生まれてくるんですよ(笑)。

――これはジェシカさんのことだったんですね(笑)。誰か周りの人のことを歌っているのかと思った。

ジェシカ:ふふふ(笑)。ダメな自分を書いた歌なの。聴いてくれる人にとっては、いろんなものが入ったスープのようなアルバムだと思う。いろんな要素があるから、リスナーそれぞれが感じて聴いてくれたら嬉しいですね。

――制作中に産みの苦しみを味わったのは?

ジェシカ:それぞれの曲がまったく違う性格を持っているんだけど、5分くらいで出来た曲もあれば、長時間苦しんだ曲もあります。例えば「UNDER YOUR SPELL」という曲はスタジオに入って、「コーヒーでも取って来よう!」とスタジオの中を歩いていたときに、その通り道でギターを弾いてたミュージシャンが、かっこいいリフを弾いていたんですよ。「おっ!それいいね!」と思って、スタジオに戻って即興みたいな感じで10分くらいで完成したの。

――すごい!

ジェシカ:そうかと思えば、「MAGIC CASTEL」は2ヶ月くらい右往左往しても、なかなか完成しなくて。最初のイメージがすごく強くて、頭の中に絵が出来上がっちゃっていて、「それに合う曲を作りたい!」という決め打ちで制作に入ってたから、それが逆に足かせになって作業を遅らせちゃったんです。逆に、世界観は決まってないけど、曲が勝手に暴れ始めて、最初に思ったものとは違うけど出来ちゃった!っていう時の方が曲が完成するのは早いかもしれない。全体的な作業としては曲作りって大好きな作業ですね。

――曲作りのどんなところが好きですか?

ジェシカ:何か一つの気持ちや思いを形に出来る、生産性の高い作業だなぁと思うから。一つの作品を作り上げるという過程がとにかくすごく楽しい。

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