【ライブレポート】上北健、“未完成”な魅力が詰まり、未来への可能性を感じさせたファイナル公演

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2015年12月29日(火)下北沢GARDENにて、上北健の<『SCOOP』Release Tour“ヒトスクイ”>のファイナル公演がおこなわれ、満員の観客を前に2015年を締めくくる歌声を聴かせた。

◆上北健~画像~

ネットシーン発のボーカリスト・KKとして多くの支持を集め、2015年9月9日にシンガーソングライターとしてメジャー・デビューアルバム『SCOOP』をリリースした上北健。11月7日(土)名古屋、11月29日(日)大阪でおこなわれてきたリリースツアーのファイナルということもあり、この日のチケットは早々にソールドアウト。年末休暇を利用して遠方から足を運んだファンもいたようで、下北沢GARDENの広いフロアはステージ前から後方までギッシリと埋まっていた。

開演時間になり大きな声援の中、バンドのメンバーと共にステージに上がった上北は、ホワイトとブルーのツートンのシャツ姿。「最高の時間にしましょう。“ヒトスクイ”ファイナル、よろしく!」との第一声から、始まったのはメジャー・デビューアルバム『SCOOP』の一曲目を飾る「false color」。勇壮なリズムに乗せて、アコースティック・ギターを刻みながら力強く歌い出す。エレキギターが2人、ベース、ドラム、キーボードを従えたバンドに、打ち込みのサウンドも織り交ぜているようだ。前半から「泣いていたから」、ダンサンブルな「Phototaxis」と立て続けにアルバム『SCOOP』の曲を披露し、バンドも観客に手拍子を求めて会場中に熱気が広がって行く。「緑閃光」では、文字通り緑色の閃光がステージ上から放たれる照明の演出も。


「ありがとうございます。上北健です。少しでも伝えそびれのないように、気持ちを込めて歌います。みなさんも受け取りそびれのないようによろしくお願いします!」と呼びかけ、和やかな雰囲気の中でライブが続いていく。軽やかなストロークから歌い出した「アマテラス」はバンドが一体となる迫力の演奏を聴かせて、観客から自然に手拍子が起こっていた。前半、少しうわずり気味だったバンドの演奏もこのあたりからしっかりと噛み合ってきて、上北の声もよりイキイキと伸びやかになってきた印象を受けた。

「みんな、思い思いに次の曲を楽しんでください、アイニイキル」と曲名を告げると、黄色い声援を上げるファンもいるなど一気に盛り上がり、「アイニイキル」の疾走感溢れる演奏が始まると、これまでじっくりと聞き入っていた観客たちも右手を突き上げて熱くなってきた。フロアの後方では大きなミラーボールが回り出し、さらに雰囲気を盛り上げる。バンドの演奏も、太いベースラインと歪んだ2本のギターを中心としたアンサンブルで、上北の歌声をより前に届けようと過熱している。歌い終わると「最高!」と叫んだ上北の表情は最高に気持ちよさそうだ。続いて、KK名義で2014年に発表したアルバム『心音』から「心根」へ。静まり返った場内に響く歌声は芯の通った強い意志を感じさせた。


「楽しい時間は早く過ぎるってよく言いますけど、もう少しで終わりです。でもこれが終わったら、どうやってこれからみなさんに歌を届けて行けば良いのかなと考えてたんですけど、やっぱりライブをやるしかないかなと思って。それをここで発表したいと思います」と2016年4月16日(土)に日本橋三井ホールでワンマン・ライブをおこなうことを発表、この日のお客さんには先行予約のチラシが配られることを告知すると、大きな声援が送られた。

ライブは後半戦へ。ギターのリフのリフレインと共に歌われるサビが印象的な「空が繋いだ」から、ステージバックに幻想的な模様が映し出される中、「log」から「COMPASS」へ。どっしりとした演奏に乗ってまっすぐ前を見据えてメッセージ性のある歌詞を歌う上北、頭上に両手を上げて叩きながら観客が一緒に口ずさむ光景は、この日のハイライトだった。


アンコールの声に、バンドと共にすかさずステージへ戻った上北は「心音 live ver.」で再び熱い歌声を届け、アンコールの声に感謝を伝えると「最後はやっぱりこの曲でしょう。この曲をこの先ずっと歌って行ったら、日記じゃなくて広辞苑みたいになりそう(笑)。1日ずつ増やして、ものすごい分厚い本にできるように、僕もがんばるし、みんなもついてきてください。最後、みんな歌えるかい!?“明日に繋がる声”を聴かせてください!」と最後の曲「DIARY」へ。

曲が始まると、ゆったりとしたサウンドに合わせて観客は左右に右手を振り、後半では手拍子で会場が一体に。曲の最後の部分に差し掛かると、歌詞の一節を変えて“この歌がどうか この先も響けと願う この夜の話”と歌い、この日ライブに来てくれた観客への特別な想いを伝えてくれた。歌い終わると、「どうもありがとうございました、上北健でした。また会いましょう!」とツアーのファイナルを締めくくり、ステージを降りた。ライブ中、曲のつなぎなどステージングには若干の心許なさも感じたものの、確かな歌唱力と表現力で観客を魅了した上北健。「COMPASS」の歌詞にあるように、“未完成”な魅力がまだまだ詰まっているような、そんな可能性を感じさせたライブだった。

取材・文●岡本貴之
ライブ写真●Shusei. (菊地 周星)

上北健の<『SCOOP』Release Tour "ヒトスクイ">
2015年12月29日(火)下北沢GARDEN
〈セットリスト〉
1. false color
2. 泣いていたから
3. Phototaxis
4. 緑閃光
5. クロス・ストリート
6. アマテラス
7. Velvet tread
8. 本音の手紙
9. アイニイキル
10. ミスト
11. 心根
12. ゆらぎ
13. Survey Ship
14. 空が繋いだ
15. log
16. COMPASS
アンコール
17. 心音 live ver.
18. DIARY

ライブ・イベント情報

<上北健HALL LIVE IN TOKYO“僕と君が、前を向くための歌”>
2016年4月16日(土)日本橋三井ホール
OPEN 17:15 START 18:00
[全席指定]前売 ¥4,200(税別・ドリンク代別)※当日券¥500アップ


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