【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.23「イエローモンキーが帰ってくる!」

ツイート

この日を待っていました、心から。10代、20代の最も多感な時に、心を鷲掴みにされた日本の誇るロック・バンド、THE YELLOW MONKEYが、な、な、なんと、15年ぶりに集結するツアー開催を発表しました。BARKSトップページの最上段に何やら怪しい黄金のサナギと、1月8日に何かが発表になると匂わせるバナーが掲載されたのに気がついたのは去年の暮れ。もしかして? と密かに想いを巡らせておりましたらば、冗談ではなく本当にザ・イエローモンキーでした。新年早々、めでたいですね!


2004年のバンド解散時、吉井さん、そして吉井さん以外の3人が別個に受けたインタビューの中で吉井さんは自己を責めているようでしたし、エマさん、ヒーセさん、アニーさんは吉井さんをフォローできていなかったとやはり自己を責めているような内容の記事には衝撃を受けました。他を責めず、喧嘩別れでもなく、お互いを尊重して終わるという、最後まで音楽が中心にあったバンドの非の打ち所のない幕引きでしたよね。

今回多くのメディアが「再結成」「復活」という言葉でこのニュースを表現していますが、新たに立ち上がった公式のサイトやSNS上にはどこを見渡してもそれらの言葉は一切使用されておらず「集結」とされています。前述の解散インタビューで吉井さんは「バンドがやりたくなったらこのメンバーしかいない」と明言されていたことを考えると、単純にやりたくなったから集結するというのがしっくりくるように思います。


そしてこのアリーナツアー発表で目を引くのはチケット設定のユニークさでしょう。若年層にはリーズナブルな価格のチケットでロックを感じるための敷居を低くし、過去を見てきたであろうファン層に向けては、払える程度の少しお高いお代と引き換えに、スーパーな何かを期待させるチケットを用意した点から見ても、万人を楽しませてくれる気満々なのが伺えます。

私はイギリスで2年ほど暮らした経験があるのですが、イギリスへ気持ちと体が向かったのにはザ・イエローモンキーから受けた影響が大きくありました。彼らの音楽を好きになり、彼らのルーツであるUKミュージックなどを遡って聴いたことでイギリスへの興味は倍増しましたし、ロンドン暮らし中に悔しくて悲しくてたまらなかった日には『FOUR SEASONS』のジャケ写と同じ景色を眺めることのできる公園でおセンチな自分に目一杯浸って泣き、「FOUR SEASONS」を何度も聴いて背中を押してもらったこともありました、誠に勝手ながら。




1992年、彼らとの出会いは深夜のラジオでした。NACK5の「ミッドナイトロックシティ」の2部で、番組タイトル通り真夜中の3時から5時まで下ネタを炸裂していた吉井さんのトークに触れ、この面白い人は一体何者? と気になったことがきっかけです。

吉井さんの深夜トークは天才的、いや、破壊的に面白く、20代の吉井和哉氏は正真正銘のキレッキレでした。かかる楽曲も独特で、洋楽から昭和歌謡までを網羅した奇抜な選曲をされていたためにラジオから離れることができず、毎週金曜深夜は眠くて死にそうだけど夜中に一人布団の中でラジオに耳を傾けて声を潜めて笑うという、下ネタ・ロック・歌謡なフライデーナイトを過ごしていました。

当時、デビュー直後だった彼らのルックスは、ビジュアル系全盛期であった時代の音楽雑誌面においては少し浮いていて、美形なんだけどビジュアル系ではない、けれどもヒラヒラした羽をまとっている「よくわからない人たち」でした。後にそのファッションはグラムロックに傾倒したものと判明するのですが、洋楽知識に乏しい田舎の女子高生には女装趣味なのかしらんという思いしか浮かびませんでした。

そんな感じで「ちょっと気色悪いけどトークが超絶面白いバンドの人」という位置付けだったのですが、暫くして、その番組から流れてきた「SUCK OF LIFE」という曲の魅力がすべてを変え、ロック・バンド、ザ・イエローモンキーの虜になったのでした。あの衝撃の日から解散するまで、作品、ライブ、イベントと存分に楽しませていただきました。まさに青春のバンドです。

彼らを見たことのないお年寄りから若い方には、この幸運な機会を利用して、日本にもすごいライブ・バンドが存在するという事実を体感することをお薦めしますし、ザ・イエローモンキーには、麗しかった頃のギラギラした欲望や野生丸出しの時期とは違う、老いてますます盛んな姿をバシッと見せていただきたいものです。

しかし、なぜ今年なのか。ジャガーやマリーの降臨はあるのか、あの電飾は見られるのか否かという止め処ない疑問がじわじわ湧いてきますが、この胸のときめきを分かち合えるあなたと共に、‘あの’バンドをもう一度見ることができる喜びを感じながらバンドからの声を待つことにしましょう。


◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
この記事をツイート

この記事の関連情報