前作『Stone Pushing Uphill』から約1年半ぶりとなるポール・ギルバートのニュー・アルバム『I CAN DESTROY/ブッこわせるぜ!』がリリースされた。本作はプロデューサーにアイアン・メイデンのプロデューサーとして名高いケビン・シャーリーを迎え、バンドに復帰したトニー・スピナー(G)、さらにフレディ・ネルソン(Vo/G)も参加するという豪華な布陣で制作されている。ブルース・フィーリングとキャッチーなメロディーを二本の柱に据えた楽曲は魅力に富んでいるし、全曲ボーカル曲ということも要チェック。新境地という言葉がふさわしい新譜について、ポールにじっくりと話を聞いた。

◆ポール・ギルバート~画像~

■そもそも人類というのは楽器を持つようになる前から歌っていた
■今回の曲作りは言葉と歌に助けられた部分がすごく多かった


――『I CAN DESTROY/ブッこわせるぜ!』の制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?

ポール・ギルバート(以下、ポール):実は、ちょっと恐怖を感じていた。というのは、前作はほとんどの曲がカバーで、オリジナル曲はしばらく作っていなかったから、自分はまた曲が書けるのかなという不安があったんだ。ちょうどその頃にギター・クリニックでイタリアに行く機会があって車で各地を廻ったんだけど、その時の環境が最高だった。車の運転は他の人がしてくれるから、僕は助手席でリラックスして景色を見たりすることができて。そうしたら、いろんな言葉が浮かんできたから、片っ端からiPhoneにメモっておいたんだ。L.A.に戻ってから改めてそれを見たら、良いアイディアが沢山あって。その瞬間に、“これなら曲が書ける!”という自信が湧いてきた。あの時は、正直ホッとしたよ(笑)。


――普段から感性のアンテナを張っていることが、良い結果を生みましたね。曲作りを始めてから、アルバムの指針になった曲などはありましたか?

ポール:今回のアルバムをプロデュースしてもらったケビン・シャーリーと初めてミーティングした時の印象がすごく良くてね。帰り道も気持ちが高揚していて、車を運転しながら、思い浮かんだメロディーを口ずさんだりしていたんだ。「ラ~ララ~!」みたいな感じで(笑)。それをボイスレコーダーに録っておいたから、家に帰ってから自分が歌ったメロディーに合うコードを探していった。そうやって、今回のアルバムに向けて一番最初にできたのが、「ADVENTURE AND TROUBLE」だった。この曲には、我ながらちょっと驚いたね。ゴスペル調の曲だけど、僕はそういう音楽はほとんど通ってきていないから。ただ、今の僕はブルースにすごく入れ込んでいるから、そういうところで自然とああいう曲が出てきたのかもしれない。ゴスペルとブルースの繋がりを改めて感じて、音楽の面白さを感じたよ。


――ブルースはゴスペルから派生した音楽ですからね。今言われた通り本作はブルース・フィーリングが押し出されていますが、トラディショナルなブルースの模倣ではなく、独自の解釈のブルースに仕上がっています。

ポール:ありがとう。そういうものにしたかったら、そう言ってもらえると嬉しいよ。オリジナリティーということで言うと、僕は“コード・コレクター”なんだ。いろんな曲を聴いて、“このコードは、なんだ? 自分の曲でも使いたいな”と思うことが多くて。そういうコードを、コレクションしているわけ。たとえば、ビーチボーイズの「When I Grow Up(To Be A Man)」という曲の出だしで鳴っているコードがあるんだけど、それがビックリするような響きのコードでね。興味を惹かれて、構成音を一つ一つ探していって解明したんだ。正式なコード名は分からなくて、僕は“ビーチボーイズ・コード”と呼んでいるんだけど(笑)。すごくクールなコードだから自分の曲でも活かしたいなと思って、「ADVENTURE AND TROUBLE」の展開パートで使った。トラディショナルなブルースを自分なりに解釈していると言ってくれたけど、そういうところがまさにそうなんじゃないかなと思うよ。


――ブルージーかつ洗練感がありますよね。それに、全編を通してメロディアス&キャッチーなことも特徴になっています。

ポール:メロディーに関しては、今回は歌詞が先だったことが大きい気がする。歌詞があって、そこにメロディーを乗せたほうがメロディアスな曲になるんだ。先にギター・リフを考えた時は、そこに言葉を乗せるのが難しいこともある。もし、そういう作り方をしていたら、『I CAN DESTROY』は、ここまでメロディアスなアルバムにはならなかったと思うよ。たとえば、アルバムの1曲目に入っている「Everybody Use Your Goddam Turn Signal」という曲があるじゃない? あの曲の“Everybody Use~”というところは、その言葉を口ずさんでいたらメロディーとリズムが同時に出てきたんだ。だから、もし“Everybody Use”という言葉がなかったら、この曲は生まれてこなかったと思う。そういう意味で、声というのは一番基本的な楽器なのかなと思うね。そもそも人類というのは、楽器を持つようになる前から歌っていただろうし。今回の曲作りは、言葉葉と歌うということに助けられた部分がすごく多かったよ。


――言葉が先だったこととコードにこだわるスタンスが相まって、よりメロディアスなアルバムに仕上がったんですね。たしかに、カッコ良いリフができればOKという考え方やパワー・コード主体のアプローチでは、こうはならなかった気がします。

ポール:ラモーンズみたいな音楽をやるならパワー・コードが最適だよね。でも、自分の音楽はパンクとかとは違うエモーションを持っているから。それを、ちゃんと表現するためにコードやメロディーは、とても大事にしているよ。

◆インタビュー(2)へ