地元を車で走行していて、ふと、あるお店のことを思い出しました。厳密には、その店のあった辺りを走行していることに気がついた、と言うべきかもしれません。前置きが長くなりましたが、そのお店とは、高校生の頃に足繁く通ったハマダという名のレコード屋さんです。そこではCDしか買ったことがありませんが、レコード屋といった方がしっくりくるのでそうさせてください。

あの頃、音楽と自分を繋ぐものは、本屋にある音楽誌と深夜のラジオ、テレビの歌番組、そしてライブかハマダでした。その中でも、音を選んで買う場所だったハマダは最も身近にあり、最も頻繁に出入りした、言うなれば、煌びやかな音楽世界に通ずる神聖な入り口のような存在でした。

CDやDVDだけでなく、ドーナツ盤やカセットテープ、グッズも取り扱っていて、購入特典ポスターの余りがどっさり入ったダンボール箱がカウンター付近に置かれた店内には、私のようなロック部門に入り浸る制服の女子高生もいれば、演歌のテープを買いに来ているおっちゃんもいるような、北関東の田舎感たっぷりの雑多な店でした。隣町にもかかわらずそこへ通った理由はロック系の品揃えの良さが地元付近では抜きん出ていたからです。

また、通っていた別の理由に、当時の田舎では珍しい黒十字架のチョーカーを首に巻き、この人の笑顔を見られる日はきっとないだろうと思うほどのツンとした装いでカウンターにいた店員のお姉さまの存在がありました。手際よく商品を袋詰めしてくれる間、そのお姉さまの白く、細い手の先にあったマニュキュアで塗られた黒い爪を少しばかり緊張しながら見つめていたように思います。

通い始めて1、2年経った頃、The Yellow Monkeyの『Jaguar hard Pain』を買った時にそのお姉さまから初めて声をかけられ、その後は一緒にライブへ行くなどして仲良くしていただきました。アニーさんファンの、実は笑顔が素敵な女性でした。

そんな思い出深いハマダの今の姿を一目見ようと、車で通り抜ける数秒間目を凝らして探してみたのですが、在りし日の姿を見つけることはできませんでした。その辺り一面賑わっていたはずの駅前商店街は、今や人通りもなく、灰色のシャッターが続く寂れた通りと化していました。


そういえば、現在の自宅近くのアーケード街にあった、演歌に力を入れながらも嵐やEXILEのポスターもきっちり貼っていたレコード屋さんが閉店し、マッサージ店になっていて驚いたのも昨年のこと。寂しいなあ、切ないなあと、いい店やいい店員さんが自分の暮らしの領域からなくなってしまうことには嘆いても、実際は通販で買い物をすることが圧倒的に多くなった現実を認識しているという矛盾。

この手の自分の内側にある矛盾に気がついてしまうと暫くの間、心の隅でモヤっとする感情が居続けてしまうので、なるべく早くそのモヤを消すために自分はなぜ通販を選ぶようになったのか、そして、一顧客として再びレコード店へ通えるかについて考えてみました。

上京前は、前述のハマダの常客でした。上京してからは、バイト先近くに大手レコ店も中古レコ店もたくさんあったので選り取り見取りでしたが、最終的にはポイントを貯めるために新譜はレコ発ライブや特典が充実している2店に絞って購入するようになりました。都心部にある大手なだけあってインストア・ライブなどの引きはあるものの、店員さんとたわいのない会話で触れ合えるようなことはなく、顔の見えない店員さんの書いたポップを見てもっぱら視聴するという都会スタイルは、ハマダ・スタイルに慣れ親しんだ自分にはどうにもこうにも味気ないものでした。

就職後は、仕事柄レコ店チェックを欠かさない時期を経て渡英。渡英中は意味もなくレコ店を歩き回っていましたが、iTunesが台頭してきたのもこの時期。ちょうどロンドンでiTunes Festivalの第1回が開催されたので、当選したライブへ行った時に配布された無料のiTunes cardを使用したのをきっかけに、その便利さからDLでの購入をし始め、帰国後は他の買い物と同様に、CD購入も自然のなりゆきで通販派となりました。

もともと買い物は自分の手に取って確かめたい質なので、便利さを超えて引き寄せられる魅力を持った店が近くにあれば、時間を惜しむことなく、仕事や育児で忙しくしていても普通に通うかも、というのが今のところの率直な気持ちです。

音楽に限らず、買い物という行為において付随するコミュニケーションを魅力のひとつとするか、しないか。そして、時短できるかどうかも生活の大きなポイントになっている昨今、勤め先や学校近く、或いは生活動線上にお気に入りのお店があれば一番良いのですが、育児と在宅ワークを主とした生活をしている私の場合ですと「魅力+自宅近所にあること」を求めてしまいます。あなたの街には素敵なレコード店がありますか?


◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】