2014年には来日も果たしたギリシャのエクストリーム・メタル・バンド、ロッティング・クライストの最新作『儀式』がいよいよ2月12日に発売となる。

◆ロッティング・クライスト画像

ギリシャという国のイメージとエクストリーム・メタルに違和感を覚える人もいるかもしれないが、とんでもない。ギリシャを見くびってはいけない。あの悪名高きノルウェーよりも数年早い1980年代終わりにブラック・メタル・シーンを形成していた彼らは、ノルウェーのバンド達へも大きな影響を与えた。いわゆるヘレニック・ブラック・メタル・シーンの形成、そして発展において、その中心的役割を果たしてきたのがロッティング・クライストだ。30年にも及ぼうかというその長い歴史の中で、ゴシック・メタル、デス・メタルなどあらゆるスタイルを吸収し、特にヨーロッパにおいて幅広い聴衆を獲得してきた彼ら。3年ぶり通算12枚目となる待望の新作『儀式』が、ついにそのヴェールを脱ぐ。バンドの創始者であり、リーダーでもあるサキス・トリス自らが「ブラック・ダーク・アトモスフェリック・リチュアル」と呼ぶ通り、まさに音楽による儀式と呼ぶにふさわしい本作について、サキスの口から色々と語ってもらった。



──待望のニュー・アルバム『儀式』がリリースされますが、タイトル通り儀式がそのコンセプトなのでしょうか。

サキス・トリス:そう、それも世界中の儀式についてだ。11の暗く神秘的、秘儀的な儀式。今回残念ながら日本の儀式を含めることができなかったのだけど、将来的にはぜひ一度やってみたい。ギリシャと同じくらい長い歴史を持つ日本の文化には、深い尊敬を持っているからね。

──最近のロッティング・クライストのアルバムに比べると、初期の邪悪さが復活したように感じたのですが、今回特にインスピレーションを受けたバンドというのはいますか。

サキス・トリス:いかなるバンドからも影響を受けていないと言ったら傲慢すぎるだろうか。もちろんBathoryやCeltic Frost、Hellhammer、Venomといった偉大なる先人たちからの影響はそこかしこに現れていると思うよ。しかし俺としては自分たちの意志に従うことが一番大切であり、なるべく他のバンドからの影響を受けないようにしているつもりだ。これが成功しているかどうか、君はどう思う?

──ロッティング・クライストは非常に多彩な音楽から影響を受けていると思いますが、自分たちの音楽を定義するとしたらどうなりますか。自分たちをブラック・メタル・バンドだと思いますか。

サキス・トリス:俺たちがやっていることはあくまでメタルだよ。もちろん好きに呼んでもらって構わないが。もし敢えて名前をつけるとすれば、ブラック・ダーク・アトモスフェリック・リチュアルといったところかな。

──『儀式』はあらゆる点において非常に完成度が高いと思いますが、以前のアルバムと比べどのような点が一番進化していると言えるでしょう。

サキス・トリス:基本的には以前のアルバムと同じ方向性だとは思うが、『儀式』はロッティング・クライストの作品として最も音楽的に成熟しており、最も文化的多様性に富んでいると言える。個人的には、これはロッティング・クライスト史上最も神秘的なアルバムだと思っているよ。

──今回のアルバムではギリシャ語、英語はもちろんのこと、フランス語やヘブライ語、サンスクリット語まで様々な言語が使用されていますが、これほどまで多様な言語を使ったというのは何故なのでしょう。

サキス・トリス:メタルというのは英語を使う国だけのものではなく、全世界的な現象だろう。そもそも英語自体、ギリシャ人である俺たちにとっては母国語ではないしね。それに世界中の知られざる歴史や神話というものをもっと広めたいと思ったんだ。


──過去のインタビューでは、ギリシャ語で歌うつもりはない、今後も英語一本であると言われていましたが。

サキス・トリス:そんなこと言っていたんだ!まあ昔のことだし、今でも英語は使っているしね。おそらく世界中をツアーしているうちに、考えが変わったのだと思うよ。人は成長すると、色々と知識もつくものだからね。

──ボードレールやウィリアム・ブレイクの詩も使用されていますが。

サキス・トリス:ボードレールやブレイクの作品は、儀式というアルバムのコンセプトにぴったりだったからさ。

──確かにこの作品は言語的に多彩ですが、やはり全体を通じて非常にギリシャ色が強いように思います。ギリシャ人であるということが、あなたたちの音楽に大きな影響を与えていると思いますか。

サキス・トリス:それは間違いない。何千年もの歴史を持つ国に生まれ育って、その影響から逃れることなんてできやしないからね。

──Aphrodite's Childのカバーも収録さていますね。ギリシャの大先輩の作品を取り上げようと思った理由は何でしょう。

サキス・トリス:彼らのアルバム『666』は、史上最高のサイケデリック作品の一つだからね。特に今回取り上げた「四騎士」は、『儀式』やバンドのコンセプトにぴったりだったし、これほど素晴らしい曲はもっとメタル・ファンにも知られるべきだと思ったんだよ。

──アルバムの音質が非常に素晴らしいのに驚きました。今回もミックス、マスタリングにスウェーデンのJens Bogrenを起用していますが。

サキス・トリス:こういうスタイルでは、彼のミックスが今一番優れているんじゃないかな。彼にミックスしてもらうと曲が一段高いレベルに引き上げられると思うんだ。『儀式』を聴いてもらえれば、俺たちの選択が正しかったことがわかると思うよ。

──どうもありがとうございました。最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

サキス・トリス:このニュー・アルバムを引っ提げて、是非また日本でプレイしたいと思っている。自分の精神に忠実であれ。

暗く、重く、深淵、そして時に美しく。非常に多様な文化的背景を持ちつつも、ギリシャからしか生まれえなかった傑作、それが『儀式』だ。SamaelのVolph、Paradise LostのNick Holmes、RudraのKathirなど豪華なゲストも参加。日本盤には、海外ではLPヴァージョンにしか入っていない「栄光か死か」を収録。さらにはロッティング・クライストについてだけでなく、ギリシャのブラック・メタル・シーンについても詳説した6000字にも及ぼうかというライナー・ノーツ付き。それだけではない、ギリシャ語、英語だけでなく、フランス語、ヘブライ語の歌詞日本語対訳まで付いているので、日本のリスナーは、『儀式』の持つ深い文化的背景を世界で一番良く理解できるに違いない。

取材・文:川嶋未来/SIGH
Photo By Ester Segarra


【メンバー】
サキス・トリス(ヴォーカル、ギター)
テミス・トリス(ドラムス)
ヴァン・エイス(ベース)
ジョージ(ギター)

【ゲスト・ミュージシャン】
ヴォルフ(サマエル)
ニック・ホームズ(パラダイス・ロスト)
カシール(ルードラ)ほか

『儀式』ロッティング・クライスト

2016年2月12日発売
【通販限定CD+Tシャツ】5,000円+税
【通常盤CD】2,500円+税
1.我らが神の名において
2.終焉の時
3.主よ来たれ
4.サタンへの連祷 (悪の華)
5.去れよサタン!
6.死
7.雷のごとき声
8.コンクス・オム・パクス
9.神々
10.四騎士
11.勝利か死か(ボーナス・トラック)

◆ロッティング・クライスト『儀式』オフィシャルページ