【インタビュー】高橋優「活動の幅が広がっても、どれが本当の自分か分からなくなったら高橋優なんてすぐいなくなる」

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高橋優、2016年第一弾。ニューシングル「さくらのうた」は、卒業シーズンを彩るせつないバラードのタイトル曲を筆頭に、メロディアスなポップ・チューン、豪快なバンドサウンド、そしてアコースティック・スタイルと、個性満開の4曲入り。多彩なアプローチと強いメッセージ、変わらぬ思いと変わりゆく時代を見据えた曲の中から、高橋優の“今”を探り出す。

◆シングル「さくらのうた」 ジャケット画像

取材・文=宮本英夫

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■僕の場合、曲作りは人と会う口実だと思ってるんです

▲シングル「さくらのうた」通常盤

──「さくらのうた」は、春の訪れ、学生時代、出会いと別れとか、そういうイメージがパッと浮かぶバラード曲。最初から、そういうテーマがあったんですか。

高橋:そうですね。僕、昨年の12月で32歳になったんですけど、僕が高校生の時に、32歳なんてもうおっさんだと思ってたんですよ。でも自分がその年になってみると、今でも“夢をかなえたいな”と思ってる自分がいるし、あんまり変わってないんですよね、根本のところでは。今、関ジャニの大倉くん(大倉忠義)と二人でラジオ番組(『オールナイトニッポンサタデースペシャル「大倉くんと高橋くん」』)をやらせてもらってるんですけど、そこで中二みたいなくだらない下ネタをしゃべって笑ったり、そういうのが面白いんですよ。でも周りの人は意外と老け込んでいってるというか、同窓会をやったりすると、僕が“あの時言ってたことはどうなった? いつかすごいクルマを買うとか言ってたじゃん”って言うと、“俺そんなこと言ったんだね”みたいな返事が返ってきたリ。その時に、一抹の淋しさを覚えるんですよ。

── ああ~。わかります。

高橋:なんか、もう昔の話みたいになってるよねって。そう言うと、“いや、おまえみたいにいつまでも子供のままみたいなキャラでどうすんの?”とか、逆に言われて。

── 逆説教(笑)。

高橋:そんな昔に言ったことよく覚えてるな、とか言われるんだけど。僕、意外と覚えてるんですよ。くだらないことかもしれないけど、些細な会話、些細な約束が、僕の中で大事だったりしていて。みんなは忘れても、俺は今でもその約束を守ってるよ、と思ったりする。こうやって言うと、自分だけがロマンチストっぽくなっちゃうけど、そういう些細な約束が、今、意外と大事な人間関係なんじゃないか?と思うんですよ。

── はい。なるほど。

高橋:SNSもある、Facebookもツイッターもある。どんどん便利に、人間関係は育めるし、一つ一つが素敵な人間関係だとは思うけど、でももっと根本的な人間関係は何?となった時に、学生の頃に“お互いに夢をかなえような”と言い合った人間関係だったり、“また会おうね”と約束することだったり。“今度飲みに行きましょう”でもいいんですよ。そうやって交わされる約束が、一番シンプルな人間関係なんじゃないか?と思ったので。その言葉でつながりができて、何年たっても、距離が離れても、“また会おうね”というひとことが、二人の間をずっとつなげているということを、かたくなに信じている人の歌を書きたいと思ったんです。

── はい。

高橋:形のない友情、恋愛でもいいですけど、それを信じる気持ちを、今歌いたかったんですよ。いろんな便利な人間関係がある今だからこそ、あんまり便利じゃない、忘れがちな、約束というものを歌うことに意味があるのかな?と。

── 約束というのは、キーワードですね。去年から。ベストアルバムのタイトルの「笑う約束」もそうだったし。

高橋:会うということは、一番大事だと思うんですよ。何を楽しみに生きてるかというと、僕はやっぱり、会うことを楽しみにやってる。服を買うとか、女性だったら化粧をするとか、それは自分が満足するためかもしれないけど、それを人に見られるところまでが、大事だと思うんですね。“似合ってるね”“かわいいね”と言ってもらう瞬間があるから、おめかしも、何かの準備や練習も、なされてる気がする。曲作りも、人によっては部屋の中で完結する人もいるかもしれないけど、僕の場合、曲作りは会う口実だと思ってるんで。

── 会う口実(笑)。字面はすごいけど、でもわかりますよ。

高橋:僕はなぜ歌うのか?という大それた質問の答えとしては、人とつながりたいから。じゃあどうすればいいのか。いい曲を作って、練習して、ライブでうまく歌えるようになる。そうすれば僕が会いに行けるし、会いに来てくれる。それがゴール地点にあると思ってるんですね。

── そう言われて聴くと、ライブの歌のようにも聴こえてくる。

高橋:あと、なぜ“さくら”にしたか?ということで言うと、やっぱり30歳を過ぎると、10代や20代がピークだったみたいなことを言う人がいるじゃないですか。高校時代が一番楽しかった、もう青春は終わった、みたいな。そこを否定したかったんですよね。花は、咲いている時が花だと言う人もいるけれど、僕は、散ってる最中も花は花だし、何なら、散ったあとの地面を彩ってる花もきれいじゃん、と。そこまでを花と言ってもいいだろうと思ったので、“散ってもなお美しい花になりたい”という言葉は、勝手にピークを決めつけて、悲しい気持ちにならないでよ、と。

── ああ~。

高橋:俺はまだあきらめないでやってるよ。君もやらないの?って、押しつけがましくなく言いたかった。もう一回夢を追いかけようぜ、とまでは言わない。俺はあの時の約束をまだ覚えてるよ、というところで、この歌は止めておきたいと思ったので。そういうところで、“さくら”がちょうどよかったんですよね。さくらが一番、散ってる最中も美しいじゃないですか。この比喩が一番伝わる気がしたんですよ。

── めっちゃ深い歌。ただの卒業シーズンのバラードじゃない。

高橋:今回のミュージックビデオ、是枝(裕和)さんに監修していただいて、主演は門脇麦さんで、すごく美しいビデオができたんですけど。あのコンセプトもそれなんですよ。本当はバレリーナになりたかったのか、今は普通に働いてるけど、夜な夜な仕事が終わった後にバレエを踊る女の子の話なんですけど。まだ夢は終わってないというのか、夢は終わったけど、こうやって生きてるのも美しいよね、というのか。それを深いと言っていただければうれしいんですけど、すごく普通のことを言ってるようにも取れるのが、いいと思っていて。


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