3月6日、稲葉浩志の約5年ぶりとなるソロアリーナツアー<Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~>の最終公演を観に、日本武道館に行ってきた。多幸感溢れる素晴らしいバイブスに包まれていた会場で、その心地よいサウンドに身体を預けながら「武道館を満たすこのハッピーな空気はなんだろう。何かに似ているな…」と思いを巡らした時、ひとつの光景が頭の中でビンゴした。そう、このバイブスはディズニーランド/シーが放つその空気と全く同じじゃないか。

◆稲葉浩志 画像

カッコいいもの/カワイイもの/楽しいもの/幸せなものに身を注ぎ、喜びをともにする。笑顔と刺激と感動を求め、人々はライブ会場や夢の国というグルーヴたっぷりな場所へ集い、非日常が生み出すハッピーなバイブスに身を委ねる。この日の武道館のステージには、興奮と感情を揺さぶる緩急自在な空気の流れがあった。



「愛なき道」では一気に引きこまれ会場全員がハンドクラップで楽曲の一部となり、「Symphony #9」では皆が笑顔で拳を突き上げる。一方で「水平線」「BLEED」「水路」「風船」「遠くまで」では、全てのオーディエンスがステージに釘付けとなり、全神経が稲葉浩志に注がれていた。まるでその歌に身を捧げているかのように、アリーナも1階席も2階席も誰も微動だにせず、まるで水を打ったような静寂の世界に歌が響き渡っていく。「Saturday」「念書」ではスタンドマイクを両腕でしっかりと持ち、身体を前後に揺らしながら空気を引き裂くようにシャウトする。「SAIHATE HOTEL」「Here I am!!」での会場が一体となった瞬間こそ、まさに全員がグルーヴを共有し感動を増幅していく中から生まれたものであった。


稲葉浩志のステージは、圧倒的な演奏力に裏打ちされた静と動のメリハリと絶妙なステージ運びに匠の技が光る。自然体から生まれるキャリアに基づいたステージングであり、そこには策略も作為的な演出もないのだけれど、時にほとばしるステージ上のミュージシャンシップと瞬発力あふれるスナップの効いたテンションが呼応するように、ステージを包む空気の流れがドラスティックに変わる瞬間がある。ステージ上に行き交う音を紡ぐ心模様が、サウンドの微細な表情に現れては消え、たまらなくドラマティックだ。こういう高品質な高揚感は、ステージ上の生の呼吸をさらけ出そうとするアーティスティックな精神性があって初めて感じさせてくれるもの。こんな生々しさを真正面から美しくさらけ出してくれるエキサイティングなアーティストが、今、日本にどれだけ存在しているだろうか。



全キャリアからバランスよく配されたセットリストと、完璧な歌唱に肩の力の抜けた自然体なMC、そしてまとわりつくような濃密なバンドグルーブは、<Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~>に集まったすべてのオーディエンスに大きな満足と喜びに与えるものだったに違いない。ちょっと面白くて、圧倒的にかっこよくて、特にファニーでキュートなMCが混ざる。自らの一挙手一投足で武道館いっぱいのオーディエンスを掌握する、親近感とともに放たれる圧倒的なカリスマ性…稲葉浩志という稀代のフロントマンが放出するケタ違いのエネルギーは、まさにディズニーリゾートのミッキーマウスのようだった。

この日の武道館公演は、その驚くべきサウンドクオリティも卓越したものだった。武道館という大きさをちっとも感じさせないタイトな音像で、まるでハイエンドオーディオセットから飛び出してきたかのようなクリアで分離の優れたサウンドに包まれ、自然と頬がほころんできた。音圧で制圧するような力づくの迫力ではなく、会場の大きさを軽く飛び越えたサウンドの品質の確からしさは、長きにわたって大小含めた様々な会場を揺らしてきたキャリアこそが生み出せるものなのだろう。



俗っぽい話でお恥ずかしいが、B'zという名実ともに日本最強のアーティストの冠も持っている彼にとって、何も汗だくになり必至にソロ活動を行わなければいけない理由は、僕にはどこにも見当たらない。自分のステータスを守りながら堅実にキャリアを重ねるどころか、意のままの環境に身を置いているとも言える。だからこそ、彼がソロアーティストとして人生をかけ熱量を注ぐ理由は、ただひとつ。「身体から溢れる音楽の衝動を、出力しなければいけない音楽家としての性」のみだ。

アンコールを待つフロアでは何度も何度もウェーブが起こり、あちらこちらで響きわたった「稲葉さーん」という男性の雄叫びこそが、彼のミュージシャンシップを称える我々オーディエンスの思いを代弁していたものだった気がする。

取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也



■<Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~>
2016年3月6日@日本武道館セットリスト

01.Saturday
02.oh my love
03.Okay
04.photograph
05.くちびる
06.GO
07.水平線
08.I AM YOUR BABY
09.念書
10.今宵キミト
11.ハズムセカイ
12.Seno de Revolution
13.BLEED
14.水路
15.Symphony #9
16.Receive You [Reborn]
17.SAIHATE HOTEL
18.正面衝突
19.Here I am!!
20.羽
encore
21.風船
22.遠くまで
23.愛なき道


■NEW SINGLE 「羽」

2016.1.13 RELEASE
1.羽 (読売テレビ・日本テレビ系「名探偵コナン」オープニングテーマ)1/9~O.A
2.Symphony #9
3.BLEED (PlayStation®4/PlayStation®3専用ソフト『龍が如く 極』メインテーマソング)
4.水路 (WOWOW 連続ドラマW「誤断」主題歌)11/22~O.A
【初回限定盤 CD+DVD】BMCV-4016 \2,400(税込)\2,222(税抜)
<特典DVD>毎公演異なるセットリストで行われたプレミアムライブDVD&Blu-ray「Koshi Inaba LIVE 2014 ~en-ball~」未収録の日替わり曲6曲を初公開
1.CAGE FIGHT
2.AKATSUKI
3.そのswitchを押せ
4.なにもないまち
5.絶対(的)
6.Salvation
【初回限定盤 CD+Blu-ray】BMCV-4017 \2,400(税込)\2,222(税抜)
<特典Blu-ray>毎公演異なるセットリストで行われたプレミアムライブDVD&Blu-ray「Koshi Inaba LIVE 2014 ~en-ball~」未収録の日替わり曲6曲を初公開
1. CAGE FIGHT
2. AKATSUKI
3. そのswitchを押せ
4. なにもないまち
5. 絶対(的)
6. Salvation
【通常盤 CD】BMCV-4018 \1,500(税込)\1,389(税抜)
【龍が如く盤 CD+DVD+Blu-ray】《別写真 / 三方背ケース / デジパック仕様》
BMCV-4019 \3,200(税込)\2,963(税抜)
<特典DVD・Blu-ray> ※DVDとBlu-rayは同じ収録内容です。
●Receive You [Reborn] 『龍が如く 極』ver. MUSIC VIDEO
●稲葉浩志 × 名越稔洋『龍が如く』シリーズ総合監督 スペシャル対談
<PS4/PS3専用ソフト『龍が如く 極』連動特典>
●プロダクトコード封入

◆稲葉浩志 オフィシャルサイト『en-zine』
◆B'z オフィシャルサイト