【インタビュー】坂本美雨、「レクイエム(鎮魂歌)である“pie jesu(ピエ・イェズ)”を子守唄にしようとレコーディングしたんです」

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坂本美雨がかねてから親交のある聖歌隊、CANTUS(カントゥス)とコラボ。坂本美雨with CANTUSとしてアンドリュー・ロイド・ウェバー作曲によるレクイエム「pie jesu(ピエ・イェズ)」を東日本大震災から5年目の3月11日に配信限定でリリースした。

◆坂本美雨with CANTUS~画像&映像~

2015年に愛娘を出産、しばらく音楽活動を休んでいた坂本だが、3月4日には青山CAYで開催されたイベント「TOKYO FM ホリデースペシャル 自分らしく生きる・働く supported by JICA」にゲストアーティストとして出演。久しぶりのステージにCANTUSのメンバーとともに登場し、「pie jesu」はもちろん、「きらきら星」や「星に願いを」、「虹の彼方に」などのスタンダードナンバーのカヴァーを披露、空気まで澄み渡っていくような清らかな歌声を響かせた。「pie jesu」を歌う前には本作でデュエットしている中学生のヴォーカリスト、うららを紹介。震災で亡くなられた人たちへの追悼の意を表すと共に自分にできることについて触れ「大事にしてくれる家族や友達を大切にして日々を重ねていくことだと思っています。この鎮魂歌(レクイエム)をすべての人への子守唄として歌いたい」と語った。


「pie jesu」込めた想い、出産を経験したことによって彼女の中に生まれた音楽観、人生観の変化とはーー?歌い手として新たな一歩を踏み出した坂本美雨に今の心境を聞いた。

──先日のライヴでは透明な歌声にとても癒されました。自然な流れの中で、みんなが口ずさめるような歌、子守唄のような曲を歌いたいと思うようになったとおっしゃっていましたが。

坂本美雨(以下、坂本):子供が生まれて自分が歌に対してどういうふうに思うのかは未知数だったのですが、歌いたい気持ちも曲を作りたいという気持ちも全然変わらなかった。ただ、母親になったことで歌が今まで以上に日常にグッと近づいたんです。自分の表現活動というより、泣いている子供の機嫌をとったり、オムツを替える時に歌ったりとか。

──即興で作った歌をうたったりとか?

坂本:そう、そう。コミュニケーションの1つとして歌が自分の中で進化していって、より身近になりました。歌うといってもテキトーな歌ばかりですけど(笑)、何でもメロディに乗せて歌うように話しかけたりとか。そうすることによって自分自身も助けられたし、歌っていたほうがイライラしないで済むんです。

──子育てなさっていて大変なことも歌うことによって気持ちが楽になるというか?

坂本:面白おかしい気分になる(笑)。彼女も自分が好きな曲だと笑ってくれたりするので、歌の力を改めて感じて、「もっとみんなの日常の中に歌がたくさんあればいいのにな」と思ったし、子供と過ごす生活の中で「いい歌を歌ってあげたいな」というモチベーションが高まった中、今回のプロジェクトがスタートしたんです。

──ちなみに、どんな歌をうたってあげると笑顔に?

坂本:「おにのパンツ」です(笑)。(歌いながら)♪おにのパンツは いいパンツ♪“って歌うと笑いますね。「いとまきのうた」も好きだし、昔ながらの童謡の力を感じましたね。破壊力がすごい(笑)。

──確かに。歌いながら、坂本さん自身が小さい頃のことも思い出したり?

坂本:はい。私も「おにのパンツ」が好きだったんです。ただ、自分は元歌の「フニクリフニクラ」(イタリア歌曲)のほうを知っていたので、彼女が生まれてから「おにのパンツ」の歌詞を覚えました(笑)。

──そんな日々の中で歌に対する考えが変わっていったんですね。

坂本:そうですね。母親としては歌えば確実に子供が寝るような曲を生めたらいいんですが(笑)。そういう魔法のような曲を世の中のお母さんのために作りたいし、私がいちばん欲しい曲かも(笑)。


──お子さんの誕生によって未来のことをより考えるようになったり、人生観も変化しましたか?

坂本:変わりましたね。自分が死んでからも彼女は生きていかなきゃならないわけだから、これからどういう地球になるんだろう? どういう日本になるんだろうって。世界中の子供たちのことも他人事じゃなくなってきました。以前は難民の子供たちが泣いているポスターを目にして心は動かされても「こういうことがあるんだな」という感じだったんです。でも、今は写真の子供が自分の子供と同じ感情を持って同じような愛情を必要としていることが手にとるようにわかるので、その親子の気持ちを想像してしまう。リアルに感じて眠れない時もありますね。

──これまでも坂本さんは東日本大震災後にチャリティ活動をなさってきたり、動物の愛護に携わったりといろいろな活動をされてきたと思うのですが、より、さまざまな問題を身近に感じるようになったんですね。

坂本:そうですね。他人事じゃないなと。明日、自分に起きることかもしれないし。

──そういう危機感は昔からありましたか?

坂本:ありましたけど、常にニュースが流れている東京に暮らしている中、どこか麻痺している部分も大きかったですね。今は以前よりも、特に子供の問題がリアルに響いてきます。虐待のニュースを見ても心が痛むし、子育てをしている時に誰も助けてくれない環境だとしたら孤独感が強いだろうなと。ずーっと泣いていてイライラして、つい手をあげたのかもしれないとか、そこもいろいろ想像してしまうんです。私は近所にお茶を共にできる友達がいるので恵まれていると思うんですけど、気分転換ってちょっとしたことなんですよね。孤独を感じていたり、子育てで悩んでいる人のお家にもっと歌があったら、もしかしたら何かが変わったのかなとかも、思うようにもなりました。

──音楽の力をあらためて痛感したからこそ、ご自身が伝えたいことも明確になったんでしょうね。

坂本:今はまさにそうですね。今、できること、すぐにやらなければいけないことだったと思います。

◆インタビュー(2)へ
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