【インタビュー】flumpool、3年半ぶりアルバムに「あとは捨ててでも大切にしたいもの」

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flumpoolが3月16日、約3年半ぶりのオリジナルフルアルバム『EGG』をリリースする。同アルバムには、2015年リリースのコンセプトアルバムより「とある始まりの情景 ~Bookstore on the hill~」やシングル「夏よ止めないで ~You’re Romantic~」をはじめ、ブルボンアルフォートCMソング「DILEMMA」「今日の誓い」ほか、ベーシスト尼川元気初の作詞作曲ナンバー「産声」を含む全14曲を収録した。

◆「解放区」ミュージックビデオ

『EGG』というタイトルはボーカル&ギターの山村隆太曰く、「人それぞれ(“卵”の)捉え方は違うと思うし、見た人、聴いた人の精神状態によって、どうにでもとってもらえるものがこのアルバムでありたい、という願いからつけた」とのこと。結果、そのリリックにはこれまでの彼らとはまた異なる覚悟も、30代になった今だからこその言葉も詰め込まれた。

サウンドはバンド感に溢れている。全員同時RECによる楽曲が含まれた点もそれを高めた要因のひとつだが、それ以前の問題として“狂気すら鳴らす”という4人の意識の高まりがサウンドをより生々しいものにしたようだ。アルバム『EGG』に息づくモードの変化について、じっくりと話を訊いたロングインタビューをお届けしたい。

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■今、危機感としてバンド内で共有できていて
■そこを追求するのは僕らとしても楽しい

▲アルバム『EGG』

──オリジナルアルバムとしては、『experience』(2012年)から約3年半ぶりとなります。アグレッシヴさが強まっていると感じましたが、モードの変化は自覚的なものですか?

隆太:5周年にベストアルバム『MONUMENT』(2014年)を出して、ここからバンドとして先へ進むには、“ライブがすべてだな”と思うようになったんです。今回のアルバムにはその意識が反映されていて、すごくロック寄りになっていると思うし。思わず踊り出してしまう感覚的な部分とか、意識の下にある、ヒリヒリとした無意識の部分というか……そういうところを大事にしたいな、と思っていました。

──華やかな演出や舞台装置を追求するのではなく、バンドそのもののライブ力を高めたい、という意識が強いのでしょうか?

隆太:そうですね。生音だけで勝負するという段階を、僕らは飛ばして来てしまったのでね。デビューしてすぐにホールツアーだったし、アリーナなど大きな会場でライブができる恵まれた環境だった半面、イヤーモニターに頼らざるをえなくなった。それがないと同期モノの音源の再現ができない、というのも実際ありますし。ただ、それを言い訳にして順番を飛ばしてきたぶん、大事なところに気づかずにここまできちゃっていたな、と。そこが僕らの不利なところですね。グルーヴが何かもわかってなかったと思いますし、“この4人でバンドである”という根本的なところを、早い段階でもっと固めておきたかった。でも、それが今、危機感としてバンド内で共有できていて、そこを追求するのは僕らとしても楽しいし、やりがいを感じている部分でもあるんです。

──シングル「Because…I am」(2012年)のリリースおよびツアーの時も、危機感や焦燥感があったと思うのですが、今抱いているのは4年前とは質が違うものなのでしょうか?

隆太:あの時はまだ、今と比べると青臭かったと思いますね。東日本大震災があって、“皆で頑張ろう”という時代の流れがある中で、“日本人は「皆で」が好きだけど、「皆で」なんて嘘くさい”という反骨心から、“個が大事なんだ”と歌う、あの曲になったので。衝動的な感じで、今思えばまだ周りを気にしていたと思います。ロックな曲としての強さはありますけど……足りないものが分かってない感じが10代、20代の頃の曲の書き方だったかな。30代になった今は、足りないものは未だにわかってないけど、“できることはちゃんとやっていこうよ”という姿勢に変わってきた感じですかね。

──今回は一人のサウンドプロデューサーがアルバム全体を取りまとめる形を取っていませんね。制作プロセスにどんな変化があったのでしょうか?

一生:デモの段階からDTMを使って僕が作れるようになって、できることが増えたことで、変わった部分はありますね。自分でイメージを形にできるようになったし、“こういう曲は亀田(誠治)さんにやってもらいたい”とか、“こういう曲は百田(留衣)さんがいい”とか、今回は曲単位で考えてお願いしました。以前は正直、“正解”が分からなくて、サウンドプロデューサーの方に編曲してもらったほうが間違いなくいいものになるんじゃないか?という自信のなさもあって。でも、最近はライブでのアレンジをメンバーが僕を頼ってリクエストをくれるようになって。その積み重ねが自信に繋がったし、アレンジを自分でできるような技術も環境も整ってきていて。ここまできたらもう、自分を信じるしかないな、と。自由な感じで、1曲1曲こだわりを持ってできましたね。

──以前は、いいメロディーと基本的なコード感を生み出すことに注いでいたエネルギーを、今回は曲全体に?

一生:前から“こういうふうにしたい”というイメージはありましたけど、それを自分では形にできなかったので、お任せするしかなかった部分もあるんですよね。今まではメロディーそのものを重視していた部分が確かにありましたけど、今回は、ほとんどの曲がアレンジ先行でした。例えば12曲目の「輪廻」は、Aメロとアレンジのイメージとコード進行がまずあったので、そこから作り上げていって。1曲目の「解放区」だったらイントロだけイメージがあって、強くてちょっと狂気的な感じのある曲にはしたいな、と思いながら作っていきましたね。

──“狂気的”というのは、これまであまりflumpoolが打ち出してこなかった面ですよね。歌詞にも“発情したい”とありますし。

元気:発情したかったんだ!? 全然知らなかった(笑)。

隆太:ははは。当時一生と、「デジタルロックが好き」という話をしていて、「そういう曲を作れたらいいよな」という会話から生まれてきた曲なんです。こういう勢いのある曲ができた時点で、仕掛けるチャンスというか、準備が整った感があって。メロディーの時点で世界が完成していたので、歌詞もそこにノセられて書いていきましたね。

◆インタビュー(2)へ
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