【インタビュー】Kαin、BLITZ公演を前にYUKIYAが語る「ここが最後じゃなきゃいいね」

ポスト

■ハードルがすごく下がってお手軽になって……
■でも、お手軽なものには思い入れも生まれないんじゃないかな

──確かに。では細かい理由は置いておいて、そうやって経験を積んできたYUKIYAさんの目に、今のシーンはどう映っています? 今や、ほとんどのバンドが何らかの事務所に所属している時代ですけれど。

YUKIYA:だから、みんな知識が少ないんですよ。話してみると“そんなことも教えてもらってないの!?”ってビックリする。最初から“バンドをやるセット”みたいなものがあるかのように、ヘアメイクさんも衣装さんも用意されて、そこに乗っかるだけでいいんだから、まぁ、そりゃあ何も知らないですよね。僕らなんか昔、YOSHIKIさんが、電話帳で調べて自分でプレス工場に電話した、とかっていう嘘か本当かわからない噂を聞いて、“そうなのか! 俺も大至急工場に電話しないと!”って始めたのに(笑)。

▲TAIZAN

──まぁ、そういった裏方を肩代わりしてくれる存在があるなら、頼ってしまうのは自然の摂理とも言えますが……。

YUKIYA:つまりハードルが低いわけじゃないですか? 入ってくるハードルが。そのぶん降りるときのハードルも低いっていうのは、すごく感じますね。だから、みんなすぐにバンド辞めちゃうでしょ? 辞めてもいろんな選択肢がある世の中だし、たくさん楽しいことがあるんだから、そりゃそうだろうなって思いますよ。例えば僕が自分でレーベルを立ち上げた20年前、後輩のCDを作るのに300万円くらいかかって“俺、だいぶキテるギャンブルしてるな!”って気持ちだったけど、今だったらそんな大金払う必要ないじゃないですか。PC一台あればレコーディングできるし、ちょっと検索すれば簡単にプレス屋さんも見つかって、10万、20万でやってくれる。自分でCDを作るってことに対するハードルがすごく下がってお手軽になって……でも、そんなお手軽なものには、やっぱり思い入れも生まれないんじゃないかなと。

──おっしゃる通りですね。そういう今の子からしたら“めんどくさい”ことを一つ一つクリアしないと昔はバンドもやれず、CDも作れなかったわけだから、それだけの覚悟と根性のある人しか残らなかったですし、そもそもバンドなんて始めなかったですよ。

YUKIYA:はい。めんどくさい先輩いっぱいいましたからね(笑)。

──では、そんな現状をYUKIYAさんは嘆かわしいと思っているのか、もはや諦めているのか。

YUKIYA:すごく冷たい言い方すると、もう僕には関係ないんですよ。これが、僕がレコード会社とか事務所の社長とかだったら、5年後10年後のシーンの在り方みたいなことも考えるべきでしょうけど、その頃には僕、たぶん現役じゃないし。そんなに気にしてないっていうのが正直なところですね。ただ、一つ言えるとしたら……音楽業界で働いていたり経営に関わってる方は、あくまでも僕が見た感じ、他業種の方に比べると、日本という国の人口分布図に関心が無さすぎる気がします。

▲ATSUSHI

──それ、わかります。

YUKIYA:音楽業界の人が思ってるほど、今の日本に10代、20代の若者っていないですからね。だから“将来”という観点で音楽を考えるなら、人口が一番多い世代に向けたコンテンツを作るべきで、実際もう30代、40代の購買層しか音楽というコンテンツにお金を払わない現実がある。例えばアルバム1枚3,000円っていう一般的な基準も、今の10代20代には通用しないじゃないですか。“なんで曲が10曲入ってるだけで3,000円も払わなきゃいけないの?”っていう人たちに、その価値を語ることは難しい。芸能界を見ても商品価値の高い、いわゆる数字持ってる俳優さんって、みんな30代とか40代ばかりですよね。僕らのジャンルを見ても、今でもX JAPANとかLUNA SEAとかL’Arc~en~Cielが人気あるわけだから、僕は若いバンドを発掘することに、もう意味が無いかもという気がしていて。

──人口分布を考えれば、今、狙うべきは40代と60代ですもんね。にもかかわらず業界内に音楽、中でもロックは若者のものという風潮が未だにあるのは、恐らくロック=反体制=若者という発想なんでしょうけど、今の若者にとっては社会に反発して想いを音楽で吐き出すこと自体が時代遅れなのかもしれないし。

YUKIYA:うん。その観点自体が、もう、ズレてきてるんですよ。僕たちが10代の頃って“演歌なんてオジさんの聴くもの”って思っていたけど、同じように今の10代の子にとっては“ロックなんてオジさんの聴くもの”なのかもしれない。だから無理に若い子に受けたいっていう気持ちも無いし、たとえアルバムが5,000円、6,000円だったとしても買ってくれる購買層が僕にはいるから、僕が考えるべきは彼らが喜んでくれるような作品を作ることだけですね。僕が子供時代に好きだった“ロック”のフォーマットのまま、アルバムに3,000円を投資する価値を見出してくれる人たちをガッカリさせず、何年先も聴いてもらえるような曲を書くことが僕の使命。

◆インタビュー(4)へ
◆インタビュー(2)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報