【インタビュー】fhana「“本当は何もない”という前提から一周回った希望を表現したのがアルバムの大きな軸なんです」

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■2ndアルバムは追体験というか
■通して聴いてまた1曲目から聴いたら意味が変わって気持ちいいんです


──なるほど。深いですね。今、佐藤さんが語ってくれたテーマを受けてのアルバム作りだったんですか?

kevin mitsunaga:すべてメールで共有されてはいたんですけど、このコンセプトというかテーマも、最初からガッツリと決まっていてアルバム制作が始まったということではなかったんですよ。

佐藤純一:そうなんだよね。最初からガッツリあったのではなく、歌詞を担当してくれている林英樹くんといろいろとやりとりしている中で、徐々に固まっていった感じだったんです。その林くんとのメールのやりとりも、メンバーはすべて共有していたので、メンバー的にも、徐々にテーマが固まっていく過程を共有していてくれたって感じですね。


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──その流れの中で、テーマを曲に落とし込んでいったりというのもあったんですか?

yuxuki waga:サウンドはサウンドで、テーマが決まる前から作り込んではいました。

kevin mitsunaga:とはいいつつ、テーマが徐々に定まっていくことによって、そこに引っ張られた音作りになっていったところはあったのかもしれない。

佐藤純一:そうだね。曲は曲で先に作っているので、そこもすべてがテーマに沿わせたものになっているという感じではないですけど、やはり、テーマが固まってからは、そこに沿わせていった感覚はあったかもしれないですね。だんだん点と点を収束していく感じというか。

towana:デモはデモで進んで行く中で、テーマもだんだん固まっていったので、すごく想像しやすかったですね。今、佐藤さんが話してくれたテーマは、私自身すごく共感できることでもあったので、それをどうやって歌に乗せていこうかなって想像しているのが楽しみでした。

yuxuki waga:ワンコーラスくらいのデモを作っていったところから始まったんですけど、デモは2015年の末くらいには揃っていて、そこから歌詞を発注する流れで、テーマのやりとりが始まってって感じで固まっていったんです。

kevin mitsunaga:デモの段階で、“こういう曲調だったら、何曲目だよね”みたいなやりとりを重ねていって。

yuxuki waga:アルバムとしてのまとまりと、楽曲の多様さを考えながら、アルバムの中には、やっぱりこういう曲がほしいよね、っていうところで、それぞれが得意とするところを作っていったって感じでしたね。

佐藤純一:シングル曲が次のステップを生み出していったというか。階段を一段一段登っていった感覚でした。シングルを軸にアルバムを作っていったというより、アルバムを作るきっかけとなっていったという感じですね。

──そのステップがあったからこそ、「虹を編めたら」が生まれたんですもんね。最初の方に勢いのある楽曲が並べられていて、中盤に壮大なバラードが置かれていて、ラストも説得力のあるバラードで締められているアルバムの流れにも、すごく深い意味を感じましたよ。

佐藤純一:そうですね。音的な流れの気持ち良さと、ストーリー性を重視したんです。このアルバムを1つの物語に例えるなら、1曲目の「The Color to Gray World」って、物語のエンディングなんですよね、実は。壮大なエンドロールみたいなところから始まっているイメージなんです。そこから時系列で進んでいって、最後また最初に戻るみたいな。そういう流れになっているんです。壮大なエンディングから始まって、4つ打ちの早い表題曲「What a Wonderful World Line」に流れて、「ワンダーステラ」、英詞のノリのいい楽曲「Relief」、「little secret magic」まで攻める感じで、「Antivirus」から音楽性に深みを持たせていく流れがあって、その後に「c.a.t.」みたいな明るいリズムのある曲たちが来て、だんだん日が暮れていく感じになるというか。10曲目の「Appl(E)ication」が夕方、11曲目の「追憶のかなた」が夜、そして、最後から2曲目に置かれた「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」で盛り上げて、夜明けのイメージでラスト曲の「gift song」が来るって感じになっているんです。

yuxuki waga:1stアルバムも2ndアルバムも、通して聴いたときにループしていて気持ちいいよねって話はしていたんだけど、1stアルバムは本当にループさせていて、それが一つのテーマとしてあったんですけど、2ndアルバムは、ループしているんじゃなくて、“今居る場所まで振り返ってきている”っていう感じなんです。2ndアルバムは追体験というか。通して聴いてまた1曲目から聴いたら、意味が変わってまた気持ちいいんですよ、って話はしてるんですけど、1stアルバムのループ感とは意味が違うというか。1stアルバムと同じとらえ方をするのは、間違っているというか、そんな感覚なんですよね。

佐藤純一:そうそう。1stアルバムはループもので、2ndアルバムは時系列シャッフルって感じですね(笑)。

──なるほど。楽曲を切り取ってみていくと、「c.a.t.」と「追憶のかなた」との振り幅もすごいですよね。とことんポップな楽曲と、とことん歌い上げたバラード。

towana:そうですね。振り幅は1stアルバムのときよりもさらに広がっているというか。私自身の歌の表現力も、すごく広がったと思うんです。1stアルバムをリリースして、そこからワンマンツアーをやって、たくさんのお客さんに見てもらう機会があって、どうやったらみんなに深く歌を届けることができるんだろう? っていうことを実際に体感して、その経験が上手く今回のアルバムに繋げられた気がします。個人的には、「Relief」と「little secret magic」がチャレンジだった。英語曲から勢いのある曲に流れるところがすごく気に入ってるところでもあるんですけど、その後にくるkevinくんの作った「Antivirus」も含め、その3曲は、また特にまったく曲調も違うし、自分の歌い方がいままで以上に違っているなって感じるんです。聴いてくれた人には、ここで、“towana、歌い方成長したな”って思ってもらえるんじゃないかなって思っています。

kevin mitsunaga:今回作った新曲である「Antivirus」は、最終段階に至るまでに何回かデモを投げてはボツになっているんですよ。デモの制作中に思っていたのは、いままでのfhanaではあまりやっていなかった曲調にしたいなということでした。1stアルバムのときにはこういうのなかったな、と感じてもらえたらいいなと思っています。

──「Antivirus」から世界が少し変化するのを感じますからね。確実にフックになっている1曲だと思います。

kevin mitsunaga:嬉しいですね。今回、個人的にこだわった点がもう一つあって、アルバム全体を通して、使う音色だったり音のエディットの仕方は、fhanaが2012年に自主制作盤としてリリースした『New World Line』というアルバムの頃にやっていたアプローチをもう一度試みています。でも単なる焼き直しではなく、その頃からスキルアップした今、過去にやっていた手法を洗練させて、アップデートした上でもう一度やってみたら面白いんじゃないかということで。なので、昔の音源を持っていて聴いてくださっている方は、聴き比べてもらうと、そこに共通点を感じてもらえると思います。そんな聴き方をしてもらうと、結構楽しいんじゃないかな。個人的なサウンドのこだわりとしては、そこが1番大きかったです。作り手の小さなこだわりでもあるんですけどね(笑)。

yuxuki waga:そういうところに気付けると、また聴き手も楽しみが広がりますからね。2曲目の「What a Wonderful World Line」には、昔使ったフレーズが入っていたりしますからね。そこに気付いて“おっ!”ってなってもらえたら、より楽しいと思います。ギターの演奏面では、今回は素直に弾いています。メロディの強い曲が多いから、その強さを活かしたままのアレンジにしたいなと思っていたので、わりとシンプルなことをやっているのが多いんです。とはいえ普段聞いている海外のサウンドを意識しながら、今、自分が純粋にカッコイイなと思える要素をふんだんに入れたりもしましたね。あとは作曲した「Critique & Curation」を佐藤さんに歌ってもらったりとか、「little secret magic」を一発録りしてみたりとかっていう、1stアルバムではやっていないことをやっています。

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