【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~BEAMS編~「アウトドアのハードルを下げる気軽さを提供したい」

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先日BARKSでは、“敷居が高い”とも言われているフジロックフェスティバルがなぜ20年愛され続けているのかを検証する特集をスタートした。今回はその第一弾の取材として、フジロックのスポンサーであるBEAMSへのインタビューをお届けする。フジロックは20周年、BEAMSは40周年と、今年は節目のタイミングとなる両者。フジロック参加者にとっては、会場で物販用に配られるあのオレンジ色のショッピングバッグや、ミッキーマウスなどのモチーフが描かれたTシャツなどでおなじみのタッグだろう。

だが、そもそもアウトドア専門のアパレルメーカーではないBEAMSが、なぜ10年以上にもわたりフジロックにサポーター企業として参加しているのだろうか? どうやらその発端は、ひとりの青年のフジロックへの憧憬にあったようだ。だがそんな純粋な感動こそが、協賛の実現のためにBEAMS社内の経営陣をどうにか口説こうとするまでの情熱に至り、そして現在もBEAMSは、「物を売りたい」より「フジロックに参加したい」という精神に重きを置きフジロックに協賛し続けているという。フジロックというフェスは、スポンサーとの関係性においても建設的かつ魅力的なストーリーを描いているようだ。サポートスタート時のプレス担当であるBEAMSコミュニケーションディレクター 土井地 博氏に話を訊いた。

  ◆  ◆  ◆

■まずは現場の状況を把握してもらおうと苗場に同行していただいた社長と副社長が
■ウッドストックとグレイトフル・デッドのTシャツを着てきたんです(笑)

── BEAMSがフジロックに協賛して今年で12年目になりますね。

BEAMS土井地 博氏:はい。僕は音楽が好きなので、当初からBEAMSとしてフジロックに何かしら参加したいとは強く思っていたんです。13年前、メンズのPR担当だったんですが「フジロックで何かやりたい」と社内で企画書を出しました。それまでも音楽イベントに関わっていた会社でしたが、これほど大々的な規模では前例がなかったので答えはすぐには出ず。そこで社長と副社長に直接フジロックの話をしたら興味を示していただいたので、二人のスケジュールを無理矢理押さえてもらって、新幹線の乗車券とチケットを渡したんです。

── 暴挙ですね(笑)。勝算はあったんですか?

土井地:まったく分かりませんでしたけど、当日2人の服を見てイケると思いました。ウッドストックとグレイトフル・デッドのTシャツを着ていらしたんです(笑)。その姿に勝算ありと感じた僕は、ドラゴンドラで山の頂上まで二人を連れて行って、山の上から数万の人たちを見てもらいました。若者が大勢いる“現場”に触れたことで「フジロックでなにかやるべきだ」と経営者判断が下ったわけです。

── 現場を知ることの大切さですね。

土井地:通常は会議室で資料を出して企画提案をするんですけど、フジロックだけは生で触れて欲しかったんです。まずは、「フジロック×ビームスって、なんだか楽しそうだね」という空気が社内に生まれなければ、その魅力はお客様にも伝わりませんから。

── サポートのきっかけはひとりの若者の熱意だったんですね。

土井地:現在も僕は、毎年必ずショップスタッフやバイヤーをフジロックに連れて行きます。十万人規模の興業を怪我も事故もなくオペレーションできているということ自体すごいことですから、フジロックから学ぶことがたくさんあるんです。ファッションの動向もよくわかりますしね。アウトドア志向の方ばかりではなく、最近では足下なんかもかわいいテイストが増えてきました。フジロックはマーケティング的にも面白いんです。それに近年は、お子さんを連れていらっしゃる方も多いので、こどもビームスのディレクターを連れて行った事もあります。

── フジロックは子供も楽しめるんですよね。

土井地:KIDS LANDが会場の奥にあるというのが好きなんです。あれがパレス(オブ・ワンダー/場外エリア)にあってもしょうがないと思うんです。ちょっと歩いて行かせるっていうところがポイントなんですよ。

── 山を感じて緑を見て、空気を切って川を越えて行く。

土井地:元気だったら水車(ところ天国エリア内)のところまで連れて行ったり、ボードウォークを一緒に歩くこともできる。フジロックにサポーターとして参加して10年以上になりますが、我々にはお客様とフジロックとの距離を近くしたいという思いがあるんです。

── どういう意味ですか?

土井地:風のにおいや雨のにおいなど、都会に暮らしていると忘れてしまうものってありますよね。山で友達と語るとか、こどもを連れて行くとか、知らなかったアーティストと出会うという機会はとても貴重なものです。そういった新鮮な体験ができるフジロックを多くの人に伝えたいので、BEAMSを通すことでそのハードルが低くなれば嬉しいと思っています。僕らは“HAPPY OUTSIDE BEAMS”というプロジェクトを通して、“外で遊ぶ楽しさ”や“外での出会い”を発信することに力を入れているんです。フジロックはその代表格ですね。気軽さを表現することでアウトドアに対するハードルを低くし、普段アウトドアに馴染みのない方も共感できるような扉を用意したいんです。外だから、アウトドアの専門店に行って一式揃えなきゃというのではなく、自分のワードローブにも置けて普段使いもできるアイテムや、着こなしの提案をしています。

──フジロックは、他のフェスやイベントと違いますか?

土井地:やっぱり違いますよ。決して順位を付けるわけではありませんが、方法論や大切なことを最初に教えてもらった教科書ですから、やはりフジロックありきです。「フジロックではこういうことをしたいから地方のフェスではこういう形で、都会ではこういう形で…」という考え方になりますね。

◆インタビュー(2)へ
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