【ライブレポート】aiko<LLP19>直前におさらい!たった3公演の<LLP18>はどうだった?レポ

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5月18日にニューアルバム『May Dream』をリリースしたaikoが、同作をひっさげ明日5月21日から2016年度初の全国ツアー<Love Like Pop vol.19>(以下LLP19)をついに開催する。ツアー前夜、本日20日にはテレビ朝日『ミュージックステーション』にて新曲「信号」をテレビ初披露する予定だ。

aikoのツアー<Love Like Pop>は各ボリュームごとに彼女の最新の趣向が詰め込まれた内容となっており、そこには長年ファンを虜にし続けてきたaikoの魅力が随所に刻まれている。今回は<LLP19>直前のおさらいとして、たった3公演のみのプレミアチケットとなった前回ツアー<Love Like Pop vol.18>の初日公演の模様を、改めて当時の息遣いとともにお届けしよう。

◆aiko <Love Like Pop vol.18>画像

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2015年12月26日・横浜アリーナで行なわれたライヴ<aiko Live Tour「Love Like Pop vol.18」~うしろ髪ひかれクリスマス~>。「プラマイ」から始まった、約3時間に渡る全力疾走なそのライヴは、aikoが集まったオーディエンスに届けたとても幸せな時間だった。aikoという存在そのもの、そして、彼女ならではの哲学を強く感じさせる一歩踏込んだ目線からの歌詞、そして、もはや一聴しただけで解る上がりきらず下がりきらない独特な音階を宿すメロディ、そのすべては、不思議とそこに触れるすべての人に幸せを与えてくれるのである。

彼女の放つ光は、1998年の7月に「あした」でメジャーデビューして以来、ずっと変わっていない気がする。音楽を愛し、歌うことを愛し、同時にそれを心から楽しみ、ふとした日常を歌詞に落とし込み、誰もが感じる喜びや幸せや切なさや苦しみや、様々な葛藤と呼ばれるもがきたちを、aikoという感性を通して赤裸々な言葉に置き換え、それを伸びやかに歌うaiko。歳を重ねたことで、感じ方や角度が変化しながらも、彼女の純粋な人間性の根本が伝わってくる言葉たちは、聴く者の心を揺さぶり大きく動かす。aikoとはそんなアーティストである。

そんな彼女の2015年は、全国7都市25公演におよぶライヴハウスツアー<aiko Live Tour 「Love Like Rock vol.7」>を完走させ、8月の海岸でのフリーライヴ<Love Like Aloha vol.5>では3万6千人ものオーディエンスを集め盛り上げた。そして、1年を締めくくるツアーとして、12月26日27日の横浜アリーナ、12月31日の大阪城ホールというたった3本のプレミアムなツアーを行なったのである。

12月31日の大阪城ホール公演は、自身初のカウントダウンライヴでもありながら、地元でもある大阪であったことと、インディーズ時代からずっと憧れ続けてきた大阪城ホールという場所であったことから、彼女にとってもファンたちにとっても、特別なライヴとなったに違いない。


そんな大阪城ホールでのカウントダウンライヴに繋げられた、助走的なライヴでもあった12月26日27日の横浜アリーナでのライヴは、とにかく勢いのある、全力疾走なライヴだった。楕円形の会場の中央にステージを置き、オーディエンスに囲まれるステージ構成は、壁を作ること無くオーディエンスと会話をするようにMCをするaikoらしいもてなしの形であった。

最新シングル「プラマイ」からの幕開けは、オーディエンスのクラップに包まれた華やかなスタートとなった。元彼のストーカーになってしまう彼女の姿が描かれたミュージックビデオが、ちょっぴり衝撃だったこの曲も、aikoらしいポップなメロディに包み込まれながら、彼女の温かみのある透き通った歌声で歌われると、なぜかどうしてか切なく心をほぐしてくれる。オーディエンスは無邪気に音の中で泳ぎながら歌うaikoの姿にクラップと笑顔を向け、ライヴを盛り上げた。2曲目に届けられた「夢見る瞬間」で軽快なステップを魅せるも、続けて届けられた難易度の高いメロディを宿す「密かなさよならの仕方」では、そこに描かれた切ない感情を切々と歌い上げた。


ここで瞬時の衣装替えを挟み、aikoらしいキッチュなパーカーとハーフパンツな出で立ちに姿を変えると、「猫」でロックな一面で魅了し、“好き”が溢れる「彼の落書き」では花道に駆け出し、花道先端でジタンダを踏みながらそこに込められた愛しさを歌った。“彼”を想う気持ちの強さと少々の依存を感じるaikoの歌詞が、暗く塞ぐメロディに乗っていたら、きっととても重く感じられることだろう。そして、それはきっと聴く者の間口を狭めることにもなっていただろう。が、しかし、aikoという屈託のないキャラクターと、彼女が生み出す、ポップでキャッチーでありながらも切なさを漂わせる黒鍵使いによって、その歌詞は誰もが歌詞の中に生きる“彼女”を抱きしめたくなる衝動にかられる歌へと変化するのだ。それこそがaikoの絶対的な個性であり、それこそがaikoという人間性であり、音楽家としての秀でた部分でもあると思う。そして。楽曲はもちろんのこと、より深く彼女が愛される理由は、何よりも彼女の人柄が滲み出るのがMCでの分け隔ての無いトークである。

「みなさん、こんばんは! aikoです! 今日のステージドリンクはトナカイのおしっこです!」と言ってイタヅラに笑うaiko。そしてこの日、前日のテレビ放送時までポニーテールだった髪をバッサリと切り、オーディエンスを驚かせたaiko。この日ボブスタイルにして初めて公の場に出たaikoだったが、あまりにもバッサリと切ったため、会場入りした際、何人かのスタッフに気付いてもらなかった上、バンドメンバーにも気付いてもらえなかったと言う。そのことを不服そうに、気取らない関西弁でオーディエンスに言いつけるaiko。膝っこぞうを出し、口を尖らせながら話すaikoの姿はまるで子供である(笑)。そんなaikoが歌うからこそ、“彼を想う気持ちの強さと少々の依存”に、不思議と抱きしめたくなる様な愛しさが宿るのだろう。まさに。これこそがaiko。他の誰にも真似出来ない無い彼女の内面から溢れ出る魅力なのである。

しかし。オーディエンスとのトークにあまりにも夢中になり過ぎてMCが長くなり、スタッフサイドからの合図で【×】が出されることもしばしば。この日も、前半戦のMCで【×】が出され、舌を出しながらそれをこっそりオーディエンスに見せ、曲に戻るというシーンもあった。そんな姿もいちいち愛らしい。会場からも“可愛い!”との声が飛ぶ。

「なんて? 可愛い? 可愛い…かぁ~。ぶっちゃけた話、四十(しじゅう)やから(笑)。しじゅう、しじゅう、チェ・ジウみたいやろ(笑)。若作りして何が悪いねん! って思ってるから! 四十になってもボロボロのデニム履いてパーカー着て頑張りたいと思います。aikoうまい棒キャラやんか、どっちかって言ったら(笑)。なので、これからもみんなと一緒にしっかりと歳を重ねていきたいと思ってます!」と声高々に宣言し、ライヴを先へと進ませた。

柔らかな歌声を響かせた「マント」、オーディエンスにクラップを促し、クラップの海を渡るように花道を軽やかに舞いながら歌った「リップ」、ブルーのライトに囲まれながら緩やかな歌声を届けた「かばん」と、懐かしい曲たちにオーディエンスは体を揺らした。
 ここで挟み込まれたMCでは、ナント、パンツとブラジャーの替えを忘れて、夜中にお風呂場で手洗いしたことも告白し会場を笑わせた。

「喋り過ぎですよね(笑)? そろそろ歌おか?」と、「合図」の曲タイトルをコールし歌ったaiko。この曲は映画『先輩と彼女』の主題歌として話題となった最新シングルのカップリング曲である。ピアノの音色を中心に置いた生っぽいバンドサウンドに乗る、なんとも言えない愛しさの表現である。aikoの歌声で歌われる“上手く言葉にならない あなたの秘密になりたい”というその言葉は、胸の奥の方をどうしようもなく締め付ける。この日、この曲を直に聴いたとき、aikoは、名前の無い感情を言葉にする魔法を持った特別な存在であると確信した。
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