【ライブレポート】アリシア・キーズ「アリシアを大統領に!」

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10月9日(土)、NYでアリシア・キーズがシークレット・ライブを開催、超豪華ゲストが登場し、タイムズ・スクエアが熱狂の連続となった。約75分間のシークレット・ショーは、彼女との親交も深いジェイ・Zやジョン・メイヤー、ナズ、Qティップ、クエストラヴなどの豪華サプライズゲストが登場、ニュー・アルバムからの新曲やヒット曲が披露された。具体的な場所を明かさず「NY市内某所でライヴを行う」とのみ事前告知されたものだったが、タイムズ・スクエアを覆う大観衆が結集することとなった。

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6作目となるニュー・アルバム『ヒアー』のUSでの発売日を11月4日に控えたアリシア・キーズが、現地時間10月9日(日)夜、NYタイムズ・スクエアのど真ん中でシークレット・ライヴを行った。


アルバム発売前夜に米TV局BETにて放映予定の特番の収録も同時進行され、タイムズ・スクエア名物の巨大スクリーンも10カ所以上をジャック。一部のファンには事前に知らされていたものの、3連休をNYで過ごしていた何も知らない観光客がスマホ片手に柵の外を埋め尽くす大騒ぎの中、DJヤング・グールーがオールドスクール・ヒップホップやアリシアの夫=スウィズ・ビーツ作の新旧ヒット曲をつなげて盛り上げると、会場から数ブロックと離れていないヘルズ・キッチン出身のアリシアが登場。「ここは私の裏庭みたいなところよ!」と感慨深げに周囲を見回しつつ「今日はジョン・レノンの誕生日、私も彼と同じように『進化』や『平等』『愛』を体現しながら、『変化』のためにアートを続けて行くわ」と宣言。

新曲「ゴスペル」「28 サウザンド・デイズ」などを立て続けに熱演し、大ヒット曲「ユー・ドント・ノウ・マイ・ネーム」では“意中の彼”役としてQティップに電話をかけると本人が登場し、オールドスクールのヒット曲のイントロをアリシアがピアノで弾き、QティップがDJで応戦するという楽しい掛け合いも。続いて過去に共演もしているナズも応援に駆けつけ「ワン・ラヴ」をパフォーム。曲間のMCでアリシアは、巨大スクリーンに映し出される災害や戦争、暴動などのセンセーショナルな映像をバックに、「『違い』こそが人を特別なものにする」と熱っぽく語り、宗教や人種、性的嗜好による差別や、世界で6,500万人以上いると言われる難民の現状などについて訴えかけた。

さらに「イフ・アイ・エイント・ガット・ユー」ではジョン・メイヤーが登場、クエストラヴをドラムに従え彼自身のヒット曲「グラヴィティ」も演奏。そして先日解禁されたばかりのニュー・シングル「ブレンデッド・ファミリー」では、自身が継母として育てている息子KJが定義した「新しい家族のカタチ」についてファンと共有。また、ボブ・マーリーの「ウォー」のカヴァーでは「そこに『不正』『不平等』『貧困』がある限り私達の戦いは終わらない」とBlack Lives Matter運動や銃規制などについても言及し、ジョン・レノンの「イマジン」の説得力溢れるカヴァーでは会場を愛と希望で包み込んだ。


お馴染みのNYアンセム「エンパイア・ステイト・オブ・マインド」ではジェイ・Zも登場、会場の興奮は最高潮に。この夜最後の曲となった「ホーリー・ウォー」ではグランドピアノに切り替え、男女間の賃金格差や教育機会などの不平等について語り、アリシア自身がメイクアップを拒否することにもつながった、フェミニストらしい強い女性像を見せつけた。

折しも共和党の米大統領候補トランプ氏による女性蔑視発言が全米中のメディアで物議をかもす中、「誰とは言わないけれど、名前が人間のクズ(scum)と韻を踏んでるアイツ」とほのめかし、タイムズ・スクエアの夜空に堂々と中指を突き立てると、観客からは「アリシアを大統領に!(Alicia Keys for President!)」という声とともに大歓声が涌き起こるシーンも。新作『ヒアー』のUSでの発売日の数日後には次期大統領を決める重要な選挙が控えていることもあり、アリシアも「私たちの未来のために、そして子ども達のためにも投票しましょう」と観衆やTV視聴者に世界の現状について目を向け、投票へ行くことを強く促す、非常に政治色の濃いプロモーションイベントとなった。

アーティストとして、そして人間として進化し続けるアリシアの「いま」が凝縮された、素晴らしく歴史的な夜になったことは間違いない。

文:渡辺深雪
写真:Gary Gershoff for GettyImages


アリシア・キーズ『ヒアー』

国内盤CD 11月発売予定
輸入盤/配信 2016年11月4日(金)発売予定
https://itunes.apple.com/jp/album/id1162498556

◆アリシア・キーズ・レーベルサイト
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