【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.22「冒涜」

自分は洗濯をする際にポケットの中身をきちんと確認しないで放り込んでしまうことが多く、ティッシュだらけのロックTシャツをどんよりしながら干すはめになることがよくあります。ですから、その日は翌日のバークスの取材に備えていつもより慎重にポケットを確かめて、お気に入りのロックTシャツを含めた頭から足の先までの装備一式をまとめて洗いました。ところが、アラームが鳴って蓋を開けてびっくり、洗濯槽の中身は大量のちり紙をまとってちらし寿司のようになっているではありませんか。「何で！」と思わず声をあげて、納得できない気持ちのままに一枚づつ風呂場で叩いていました。そこで信じられないものを目にして大笑いです。水を吸って電話帳のように膨らんだ「YAWARA ! 10巻」を発見したのです。大好きな漫画家、浦沢直樹さんの描いた柔道の漫画です。全29巻揃っていたのですが櫛の歯が欠けたようになってしまいました。何よりも浦沢さんが大変な思いをして描いた作品を冒涜してしまったようで、申し訳ない気持ちになりました。

作品を冒涜するといえば、畑や庭先にぶら下がっているカラス（スズメ？）除けのCDはひどい扱いを受けていますよね。傷がついて聴くことができなくなったのかもしれませんが、まだ捨ててくれたほうがましです。人間椅子のだったら悲しいなぁ。期待して買ったのにあまりに内容が悪くて腹いせに野ざらしの刑にしたのでしょうか。どのCDでも相当な労力とお金がかかっているわけで、まさかそんな憂き目にあうとは思ってもみなかったでしょう。でもどんなのが風に揺れてくるくる回っているのか、ちょっと興味があります。

さて、ティッシュだらけの服一式を着て臨んだバークスの対談は楽しいものでした。編集長は僕が難しい話題を苦手としているのを知っていて、答え易い質問ばかりを差し向けてくれるので大いに助かります。お互いに好きなライブ盤を持ち寄って「ライブ盤とは」を語るという、学生時代の友達の家で交わされる会話のようでしたが、中には鋭い意見も隠れているので、そちらもご覧になってください。盤を選ぶ際に迷ったので、改めてB.B.A.の「Beck Bogert & Appice Live」を聴きましたが、やっぱりこれはすごいアルバムです。三大ギタリストの一人、Jeff Beckが霞んでしまうほどのベースとドラムの応酬は、もはや神の領域です。もちろんJeff Beckも「Jeff's Boogie」で凄まじいテクニックを披露しています。B.B.A.の曲の他にJeffBeck GroupやVanilla Fudgeの曲まで聴けてしまうのもおいしいです。計算ずくでないアドリブの掛け合いがここにはあります。名人三人がほんの短い時期に集まって残した奇跡の一枚です。


この対談で二人が持ち寄ったアルバムはほとんどがレコード盤でした。レコードはいいです。音はもちろんですが、ジャケットの質感がたまりません。中ジャケの写真も大きくて見易く老眼に優しいです。盤を裏返す手間にも作り手の意図があり大事だなと感じました。曲を飛ばすのが面倒で全曲聴く羽目になるのもありがたいです。そして、カラス除けにされることもないのです。






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