【インタビュー】倉木麻衣、アルバム『Smile』に「生活のすべてを吹き込んだ」

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倉木麻衣が2月15日、『OVER THE RAINBOW』(2012年1月発表) 以来となるオリジナルアルバムをリリースする。音楽活動と並行して取り組んできた復興支援やカンボジアでの寺子屋活動支援をはじめ、アルバムには積極的な社会活動から得た経験が色濃く反映されているという。そしてそれらがボーカリストとして表現力の幅を広げたことに加え、デビュー作からコラボレートしてきたCYBERSOUNDチームほか、国内外トップクリエイターの起用がアルバムの音楽的なこだわりを満たしたようだ。

◆倉木麻衣 画像

待ちに待った、という言葉がこれほど似合う作品は、めったにない。倉木麻衣、約5年ぶりのオリジナルアルバム、その名は『Smile』だ。2014年にデビュー15周年を迎え、華々しい活動を見せたあと、およそ2年間を制作に費やした力作。とはいえ、肩に力の入りすぎた、重々しい作品ではまったくない。むしろ、その逆。R&B、ロック、ポップス、ダンス、バラードと、これまで以上に幅広いサウンドと、ぐっと表情の豊かさを増した声。メッセージはあくまでポジティブで、思わず体が動く曲がずらりと揃った、躍動感いっぱいのアルバム。すべての人に、スマイルを。新しい倉木麻衣が、ここから始まる。

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■涙したことがあったからこその
■“スマイル”ということなんです

──お久しぶりです! そして久しぶりのアルバム、楽しみに待っていました。

倉木:今回の『Smile』というアルバムは、5年ぶりになるんですね。

──そうですね。ベスト盤をはさんで、オリジナルアルバムとしては。

倉木:その間にいろんな曲を作っていて、そぎ落として、出来上がったのがこの12曲です。最初にテーマを決めるにあたって、今の等身大の自分の思いを、アルバムに詰めたいなと思ったんですね。カンボジアに寺子屋を作る活動ですとか、今まで音楽以外に活動させていただいていたことがあったんですけど、東日本大震災が起きてから、楽曲も変わってきていたんです。“みんな一人じゃないんだよ”という気持ちに変わっていきましたし、振り返ってみると、そういう出会いの中で、“笑顔=スマイル”がみんなをつないできたんだなと感じまして。

──ああ、はい。実感ですね。

倉木:それは単なる笑顔だけではなく、そこにはつらい思いや、涙したことや、いろんなことがあったからこそのスマイルということなので。その思いを、マイナスからプラスに変えられる音楽を作れたらいいなと思って、アルバムのテーマを『Smile』に決めました。

──コンセプトを先に決めて、作り始めた。

倉木:そうですね。楽曲的にもより明確になっていて、R&B、ロック、バラードとか、ジャンルをはっきりさせて、ものすごくバラエティに富んでいると思います。

アルバム『Smile』初回盤

──振り返ると、2014年に15周年の記念ツアーが終わったあと、2年間かけてゆっくり作っていた、という感じですか。

倉木:この2年間は、シンフォニック・ライブ(2015年9月12日)をやったり、ロシアでもライブをやらせていただいたりしていました(2016年4月18日)。ロシアと日本の文化交流というテーマでお招きいただいて、マリインスキー劇場という由緒あるホールで歌わせていただいたのは、すごく大きい出来事でしたね。あとは、中国ツアーもありました(2016年9月)。初挑戦で、いろんな場所に行くことが多かったんです。

──日本では、女川でのフリーライブに出演したりもしました(2016年7月10日)。

倉木:そうですね。自分も引き続き、震災の復興に向けてエールを届ける活動をしていきたいと思っていますし、カンボジアに寺子屋を、というプロジェクトもそうですけど、熱い気持ちを持って活動されている方が、日本の中にたくさんいらっしゃるんですね。そういう方のお話を聞いて、世界を変えていくにはそういう気持ちはすごく大切だなと思いましたし、そういう思いを歌にしたものもあります。12曲目の「きみへのうた」なんですけど。

──「きみへのうた」は、まさに、今言われた通りの言葉が歌詞になってます。

倉木:JICA(独立行政法人・国際協力機構)さんの青年海外協力隊CMソングにさせていただいたんですが、自分が体験した思いを歌詞に込めています。アルバムの中で、1曲でもワンフレーズでも、聴いてくださった方のプラスになるように、スマイルにつながるような1曲を見つけていただけたらなと思いますね。制作側としてはいろいろこだわって作ってはいるんですけど、アルバムをリリースさせていただいて、解き放った段階で、それはみなさんの1曲として、スマイルしていただけたらと思います。

──歌詞は、力強く、前向きで、今まで以上に希望あるものが多いと感じてます。

倉木:今回は、よりシンプルになっていると思います。それは音楽以外の、いろいろな人との出会いによって、シンプルな、ピュアな気持ちというか、音楽ってそういう力があると思うんですね。心を洗浄してくれるような力があると思うので。その思いと共に、120%のピュアな気持ちでアルバムを作って、それをみなさんに聴いてもらいたいと思っていました。

──はい。なるほど。

倉木:待っていてくださるみなさんのスマイルを思い浮かべながら。ライブに来ていただいたみなさん、カンボジアの子供たち、中国の方、いろんなスマイルを思い浮かべて。歌詞を書いていて、気づいたら1日寝てない、みたいなこともありましたし(笑)。

──えっ。それはすごい。

倉木:倉木麻衣の生活を、すべてアルバムに吹き込んだと言っても過言ではないぐらいの(笑)。それぐらい、音楽に没頭できる時間を持てましたし、ある意味リラックスして作れたアルバムですね。でも悩んで、葛藤して、泣いちゃった時もありますし、何でうまく歌えないんだろう?とか、何でもっといい言葉が出てこないんだろう?とか、孤独におちいることもありましたし。特にプライベートの話だと…デビュー当時からずっとそばにいて、妹のような存在として育ててきた、キャスパーという愛犬が、去年の11月になくなってしまって。それが、私にとってはすごく大きくて…こういう場でお話すべきことではないかもしれないですけど、そういった悲しい出来事もあって、思うこともありつつ。人は生き物ですし、今日を一生懸命生きて、笑顔で、悔いのないように過ごすことが、本当に大事だなと思いましたね。そういう実感がすごく湧きました。

──わかります。同じような体験をした人には、よくわかると思います。

倉木:やっぱり、はかないんですよね。あっという間じゃないですか、1日って。1年もあっという間で、もしかしたらこれからまた大きな災害が起きて、どうなるかわからない。そうなった時に、今まで悔いなく生きてこれたかな?って、考えるじゃないですか。それを思うと、一番強くなれるというか、今まで悩んでいたことが“何だったんだろう?”という感じになれるので。忙しく過ごしていると、見失いがちなことだと思うんですけど、それを意識して、1日1日を大切に過ごしていきたいと思うので。それをアルバムに込めたい!と思って、詞もシンプルにしています。特に「SAWAGE☆LIFE」なんて、“人生一度きり!”って、そのまま歌ってますし。

──そうですね。

倉木:そういうテーマの曲もありますし、あとは単純に、音に乗ってどんどん気持ちを上げて楽しんでもらう曲として、「I Like IT」とか「MY VICTORY」とか。

──「MY VICTORY」は、ばっちりですよ。聴いてて、元気しか出ない。ノリノリです。

倉木:ありがとうございます(笑)。チャンスをつかんで前に行こう!という曲なので。

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