サカナクション、ホールツアー初日高崎アリーナ“こけら落とし”に見た結成10年目の到達点

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今年5月9日にデビュー10周年を迎えるサカナクションが、そのちょうど一ヶ月前にあたる4月9日、ホール・ツアー<SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY『2007.05.09』TOUR>をスタートさせた。

◆サカナクション 画像


この日は、今月にオープンしたばかりの群馬・高崎アリーナでの“こけら落とし”公演であり、事前に高崎市民へチケットの優先先行販売が行われるなどの配慮もあったことで、会場には、全国各地から集まったコアなファンだけでなく、初めてライブを体験するという地元のファンや家族連れの姿が多く見受けられた。ツアー初日、さらに新しい会場というスペシャルな要素が相まって、満員となった約6千人の観客が放つ期待感、ワクワク感、そして独特な緊張感は、開演時間が近づくにつれ、否応なしに高まっていった。

Text:布施雄一郎

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今回のツアーは、今年1月から3月まで、札幌、東京、名古屋、大阪、仙台、福岡を巡った全国ライブハウス・ツアー<SAKANAQUARIUM2017“多分、風。”>の流れをベースにしてはいるものの、セットリストに変更が加えられているだけでなく、演出や構成にもアレンジが施され、また5人の衣装も新しくなったことで、全体的な印象としては、想像以上にリニューアル感の強いものとなっていた。その感覚を例えるならば、○や△、□といった“図形”も、視点を正面から真横に動かすと“直線”に見えるといったようなものに近く、あくまでも今までの流れを踏襲しながらも、グラデーションのように見せ方を変え、観客に新しい体験をさせてくれるという彼らの創造力には、いつものことながら、今回もまた、脱帽させられる想いだった。


しかも、新しいセットリストや演出が、よりサカナクションの10年間の歩みを強く感じさせるものとなっており、先のライブハウス・ツアーが、現時点での最新曲「多分、風。」をフィーチャーしたものだったとすると、このツアーは、まさにデビュー10周年を記念するに相応しい内容へと変貌。そのため、既にライブハウス・ツアーへ足を運んだ人でも、その違いを十分に楽しめるライブとなっているし、ホール・ツアーにのみに参加するという人でも、1月から始まった全国ツアー《SAKANAQUARIUM2017》の全体像を共有できるという、何とも心憎いアップデートだ。今後、4月15日の秋田・秋田県民会館から、7月7日の福岡・福岡サンパレスまで行われる、全17会場20公演のチケットを手にできた幸運なファンには、十分に期待していて欲しい。


そうした中、今回のライブを観て改めて感じたことは、サカナクションのライブは“波である”ということだ。会場の照明が落とされ、重低音が鳴り響いた瞬間から、最後の一音が消え去り、ステージが明るくなるまでに、何度も波が押し寄せては、引いていく。時に、嵐のように激しく荒れ狂った波に圧倒される時もあれば、穏やかなさざ波に感情が解き放たれる瞬間もある。また、三日月の灯りに照らされる景色もあれば、朝日に染まる眩さに我を忘れる場面も訪れる。


このように、繰り返し訪れる波は、ある瞬間のみを切り取れば、それぞれがまったく違った表情をしているものの、サカナクションのライブでは、さまざまな波が途切れることなく、すべてが連続したものとして移ろっていく。音楽的に言えば、そうした波の変貌は、主に音色や音圧(曲間の無音も含め)で表現されており、さらにライブ演出という観点では、ライティングの色彩はもちろんのこと、その光の動きや、ゆっくり明るくなるのか、それとも一気に強く光るのかによって、波は、まった違った表情を見せる。そこに、映像やレーザー、スモークなどが加わり、波をよりドラマチックな物語へと昇華していく。サカナクションのライブが、音楽ファンから高く評価され、しかも、数ある他のライブ・エンタテインメントとは一線を画す、強いオリジナリティを持つ所以は、そこにある。

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この日のアンコールでは、ステージ上でランダムに楽曲を選び、それを演奏するという、彼らのライブとしては初めてとなる“10周年特別企画”が行われたほか、山口一郎(Vo,Gt)がMCで、「昨日、頑張って歌詞を書いた」と告げて演奏された、タイトル未定の新曲も披露された。

「今年、ツアー中に、たぶんアルバムを出すことになると思います。このツアーでも、ちょこちょこと新曲を披露していきたいな、と。また昔のような、フラットな気持ちで新しい曲を作っているので、ぜひ皆さん、待っていてください。」(山口)

アルバム、ライブと、常に新しい世界を体験させてくれるサカナクション。現在制作中というアルバムは、当然ながら、これまでの10年間を経てたどり着くものとなるであろうし、そして今回のツアーで得た感覚も含んだものとなるだろう。まさに、“10年間”と“今”が交差するという意味で、このツアーと新譜との関係性は強くなるはずだ。全国各地で行われるツアーを楽しみながら、そうした新譜の完成、そして今後のさらなる展開に期待したい。


■<SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY 『2007.05.09』 TOUR>

2017年04月09日(日) 群馬・高崎アリーナ
2017年04月15日(土) 秋田・秋田県民会館
2017年04月16日(日) 青森・リンクステーションホール青森
2017年04月22日(土) 徳島・鳴門市文化会館
2017年04月23日(日) 高知・高知オレンジホール
2017年04月29日(土・祝) 長野・ホクト文化ホール
2017年04月30日(日) 富山・オーバード・ホール
2017年05月19日(金) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
2017年05月27日(土) 鳥取・米子コンベンションセンター
2017年05月28日 (日) 広島・福山リーデンローズ
2017年06月02日(金) 大分・iichikoグランシアタ
2017年06月04日(日) 鹿児島・鹿児島市民文化第一
2017年06月08日(木) 名古屋・名古屋センチュリーホール
2017年06月09日(金) 名古屋・名古屋センチュリーホール
2017年06月11日(日) 静岡・静岡市民文化会館大ホール
2017年06月16日(金) 京都・ロームシアター京都
2017年06月17日(土) 奈良・なら100年会館
2017年06月22日(木) 札幌・ニトリ文化ホール
2017年06月23日(金) 札幌・ニトリ文化ホール
2017年07月06日(木) 福岡・福岡サンパレス
2017年07月07日(金) 福岡・福岡サンパレス

◆サカナクション オフィシャルサイト
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