【対談連載】ASH DA HEROの“TALKING BLUES” 第3回ゲスト:松岡充 [MICHAEL / SOPHIA]

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ASH DA HEROをホスト役に、毎回ゲストを迎えてトークセッションを繰り広げる連載が2017年春スタートした。デビュー2年目のASH DA HEROが、あるときは同じミュージシャン目線で、またあるときは異ジャンルに斬り込む同対談連載企画のタイトルは、“TALKING BLUES”だ。

◆ASH DA HERO × 松岡充 画像

第3回目のゲストは松岡充 [MICHAEL / SOPHIA]。小学生時代からSOPHIAのファンだったというASHの分析に、松岡自身「こんなに僕の活動を深読みしてくれる人、あんまりいない」と驚きの声を上げるほど。表現者として、ボーカリストと役者の両面を持つ松岡に深く突っ込んだトークセッションは話題が尽きることがない。

MICHAELは現在、1週間にわたって赤坂BLITZ行われる自身主催定住型フェスイベント<MICHAEL SPRING JUMPING CIRCUS 2017>を開催中だ (ASH DA HEROの出演は本日4月21日)。また、5月18日にTSUTAYA O-WESTで行われるASH DA HERO主催2マンイベント<CONNECT X【ACT.4】>へMICHAELが出演することも決定している。親密度にますます高まりをみせる両者のトークセッションをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■人間の“いとをかしい”ところを表現する
■そのために僕は両端を持つと決めた──松岡充

──面識はかなり前からあるんですか?

松岡:存在はもちろん前から知ってて。だってASHくんは、クロちゃん (SOPHIAの黒柳能生[B])とバンドをやってたから。

ASH:そうなんですよね。音源もタワレコ限定で出したりしました。

松岡:そのバンド解散後、ASH DA HEROという名前でいくとは知らなかったから、また別のソロアーティストがいるんだと思ってて(笑)。それに最初はちょっとベールに包まれていた感じもあったでしょ。

ASH:そうですね。ASH DA HEROが始動した当初、情報もあまり出してなかったから。今はこうやって対談もやらせてもらってますけど。

松岡:Kenさん(L'Arc-en-Ciel)との対談は読んだよ。

ASH:Kenさんとは第1回目に対談させてもらって、2回目は中島卓偉さん。そして3回目が松岡さんです。

松岡:卓偉くんとはどのぐらいの知り合いだったの?

ASH:出会ったのは去年なんです。ライブを観に行かせていただいて。

松岡:年齢も近いの?

ASH:いや、卓偉さんは10コぐらい上ですね。

──松岡くんは卓偉くんの少し先輩ということになるのかな。一回り以上、ASHと年齢が離れているということは、ASHはSOPHIAをファンとして観ていた世代?

ASH:ほんとにそう。僕、SOPHIAが大好きで。実家にポスターをメッチャ貼ってますよ。「STRAWBERRY & LION」(2001年9月)とかぐらいからシングル特典で、毎回ポスターがあったはずなんですよ。初回限定盤をずっと買って聴いてましたから。

松岡:そういう方が新しい時代のカリスマとして世に出て、こうやって対談に呼んでいただいてというのは、すごく嬉しいですね。僕らがやってきた音楽活動で繋げていけたというのもあるし、今、ASHくんがやっている音楽活動でまた僕らは繋がっていけるっていう。

ASH:僕もすごく嬉しいんです。小学生の頃から、ずっと見ていたアーティストなんです。

松岡:今はいろんなアーティストとの交流も増えていると思うけど、ASHくんはアーティストとして、どこにも属さない感じがするなぁ。曲を聴いたり、発言を読んだりしてそう思ったよ。陰を作っているっぽいキャラなんだけど、実はそうじゃない。ASHくんから見て二世代ぐらい上の僕らの時代だと、アーティストが陰を持つことはすごく大切で。メディアも限定されてたし、その限定されたものに対して、みんなが想像力を膨らませて見たり聞いたりしてたから、そのシーンがある意味、特徴的にもなっていったと思う。でも今はもう、陰を作ると、自分を出せないんじゃないか?と(笑)。

ASH:今は情報がどんどんワイドになってきているんだけど、それによって見え過ぎちゃって、逆に猜疑心を持たれるような風潮もありますよね。逆のイマジネーションが働いちゃうというか。

松岡:だからこそ、自分達の意志を明確にした見せ方をしないとダメだよね。

ASH:いきなりアーティスト論の話ですね。これはぜひ聞きたかったんですよ。

松岡:いや、その前に。さっき、“どこにも属さない感じ”って言ったけど、“こうあるべきだ”ってのが、ASHくんの中にはすごくある気がする。それは美学的なことじゃなくて、自分の可能性を広げることを恐れていないという意味でね。だから吸収もできるし、そこから自分は何なんだ?って考えながらやっていく感がある。クレバーなんだと思う。ASHくんの歌詞もジックリ読ませてもらったけど…。

ASH:緊張します!

松岡:詞も曲も溢れてますよ。溢れそうじゃなくて、溢れてる。自分の世界観で、自分が何を言いたいのかってことが。

ASH:ああ、そう言われると確かに。

松岡:人間の真ん中は心だっていうじゃない。でも、それは抽象的なもので、正義でもあり悪でもある。そしてすごく清らかなものでもあるけどドロドロのものでもある。その真ん中が人間の“いとをかしい”ところで。そこを表現したいんだけど、言葉やメロディや楽器の音を使って表現するにはどうしたらいいんだろうって。そう考えたとき、僕は両端を表現すると決めたの。両極を持つことによって、何となく表現したいことが見えてくれればいいな、と俺は思っていて。

ASH:両極端なものを同時にですね。僕は、その真ん中を表現するために、ド直球でやりますって。だから白でもない、黒でもない、ASH(灰色)みたいなことをやっているんです。でも松岡さんのアーティストとしての立ち位置は、まさしく両極端なものというか。哲学用語でアンチノミーと呼ばれる、二極しているもの両方をやるってことですよね。お話をうかがいながら、なるほどなと納得したんですよ。だってSOPHIAはシングルのアプローチも、表題曲とカップリングでは両極端だったりしましたよね。

松岡:そうか、学生の頃、すごく聴いてくれてたんだね(笑)。

ASH:表題曲のアナザーストーリー的なカップリング曲だったりするんだけど、やっているアプローチが表題曲とは全然違うものが、いっぱいありましたもんね。そういう松岡さんの血が、僕には絶対に流れているんですよ。いろんなバンドがある中で、小学生の僕がSOPHIAを選んだのは、松岡さんの書く詞がすごく好きで、他にあんまりなかったから。すごく攻めてますよね。シニカルな表現がものすごく多くて。

松岡:そこまで分かってくれてたんだ。

ASH:はい。SOPHIAの「進化論〜GOOD MORNING!-HELLO! 21st CENTURY〜」は、僕の人生のフェイバリットソングTOP10に入るぐらい好きです。

松岡:嬉しい。でも書いたとき、周りからキチガイだって言われたよ(笑)。

ASH:あれは理解されないと思いますよ。いきなりあんな…、“あんな”とか言っちゃって、すいません(笑)。その曲を聴いたのは小学校6年の時だったんだけど、こういう人がいるんだから俺も大丈夫と思ったんですよ。

松岡:同じ種族だって(笑)?

ASH:いや、変な人がいるって意味じゃなくて。すごくシニカルな表現をしていたから。その当時、僕はロシア文学を読んでたんですよ。

松岡:小6で!?

ASH:小学生のときに僕はイジメられてて、友達いなかったんです。本が友達だったんです。で、賢くなれば大人が仲良くしてるかな、そうしたらコイツらにイジめられていても、大人が守ってくれるかな、みたいな。

松岡:すごい小学生時代だったんだ(笑)。

ASH:元ヤンっぽいとかよく言われるけど(笑)。悪そうなヤツはだいたい友達、じゃないスタイルだったんですよ(笑)。それでロシア文学にハマってたんですけど、当時の社会主義を風刺する作品がすごく多くて。松岡さんの歌詞には、そこに通じるものを感じたんです。嘲笑いながら、皮肉たっぷりなんだけど、すごく愛にも溢れている。こういう曲が日本にあって、こういうことを歌っている人が日本にいるんだから、僕も大丈夫だって思ったんです。そのときは歌い手になるとは思ってなかったんですけどね。こういうやり方があるんだ、こういうことやっていいんだっていうのは、今も僕のどこかにあるんですよね。

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