【ライブレポート】Initial'L、解き放たれた5人の姿が印象的だった初のワンマンライヴ

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2016年11月にデビューを飾ったInitial'Lが〈Initial'L 1st Oneman Live「VISION TO VISION」〉と題して4月20日にTSUTAYA O-EASTで初のワンマンライヴを開催した。

◆Initial'L~画像~

歓声とハンドクラップの中、黒の沙幕に覆われたステージにメンバーがスタンバイし、シルエットが浮かび上がるなか、SE的なポジションとして披露されたのは2ndシングル「VISION」に収録されている英詞の美しいナンバー「~WARNING~」。Initial'Lらしいミステリアスなオープニングだ。

幕が落ち、悠希が「さあ、EAST ! 行くぞ!」と叫び、サトシ、ZERO、緋遊の弦楽器陣も前に出て煽った1曲目は最新型のInitial'Lを全身に浴びられるアグレッシブなダンスロックチューン「VISION」。ビートに合わせて跳ねるオーディエンスの中、悠希は花道へと走り、フロアーの熱を上げていく。


続いてライヴでおなじみの「毒女」で妖しい雰囲気を撒き散らし、サトシがレスポールで激しくもエモーショナルなソロを奏で、前半で早くも未発表の新曲「Don't Break my love」が投下された。ライヴ映えするアッパーチューンにハンドクラップで盛り上がるオーディエンス。

「ノスタルジア」では、もどかしい想いをぶつけるように歌い、激しく動きまわる悠希に応えるかのように激しくヘドバンする光景が広がり、厚みのあるバンドサウンドがInitial'Lの実力を物語る。人気曲「接吻~口づけ~」はドラマティックな展開もスリリング。甘美な側面を持ちながら、ロックバンドとしてのダイナミズムも持ち合わせているのが彼らの魅力だ。



「Initial'L初のワンマンライヴ、みんな集まってくれてありがとう! やっと俺たちだけの空間。今までずっとイベントばっかりだったけど、今日はとことんInitial'Lを味わえるので楽しんでいってください。ふだん、みんなからたくさん、もらってる分、今日はこの場所で返していこうと思ってます。一緒にいいライヴ作っていこう。いいかい?」_悠希

そして披露されたのはこれもまっさらな新曲「BREATH」。メロディアスな曲には出会えたファンへのメッセージが込められている気がした。

初ワンマンにして、こんなに新曲が聴けるとは思っていなかったが、サプライズはこれだけではなかった。


中盤で全員が椅子に座ってサトシとZEROがアコースティックギターをかまえ2ndシングル収録曲の「合言葉」と「White out」のアコースティックヴァージョンが披露されたのだ。タワーレコードのインストアイベントでアコースティックライヴを行ったことがキッカケになったと話した悠希は「この前は機材の関係で緋遊と一朗がいなかったんだけど、今日はヴァージョンアップして5人でやろうと思います。みなさん、ゆっくり聴いてください」と挨拶。


悠希の艶のあるヴォーカルが際立つ「合言葉」は途中から緋遊と一朗のリズム隊が加わっていくアレンジが新鮮。アコギで流暢にソロを弾くサトシのプレーヤーとしてのスキルの高さもさることながら、バンドアンサンブルも息がピッタリで、切ない冬ソング「White out」では手拍子が沸き起こった。

そして、シルクハットがトレードマークのサトシがセンターに立ち、「次の曲は歌はないけど、俺たちの音を感じて身体で感じてくれればそれでいいぜ!」と煽った楽器陣のみのインストゥルメンタルは一朗のパワフルなドラムで始まり、ZEROのギターソロや花道での緋遊のスラップもフィーチャーされた躍動感たっぷりのナンバー。いかにInitial'Lが個性の立ったメンバー揃いかということがわかるセクションだ。

ファーストワンマンだとは思えないほどInitial'Lは練られた構成でオーディエンスを一瞬たりとも飽きさせることはなかった。


第2部と言ってもいいセクションに位置する「THE END」はオープニングのように再びステージに沙幕がかかり、歌詞が映し出される中、演奏される演出。続いて披露されたデビューシングル「MOON LIGHT DOWN」で幕が落ちると悠希は黒のパーカーのフードを目深にかぶったカジュアルなスタイル。スモークがたかれる中、花道で膝まづいて歌う悠希は全てをむき出しにしたような激しい歌で見る者を釘づけにし、「もっともっと激しくいこうよ」と「ラビリンス」、「Punishment」とヘヴィなナンバーを立て続けに投下していった。

衣装を着替えたことに触れた悠希が今の心境を明かした。

「ある大先輩に“ヒールはいてる悠希もオマエらしいけど、私服のオマエも悠希なんだから、何やったて悠希なんだよ”って言われて、今まで衣装着て飾ってステージに立つのが僕だと思ってたけど“じゃあ、衣装を脱いでメイクをとった僕は誰なんだ?”って数ヶ月ぐらい悩みました。結果的にたどり着いたのは何を着たって僕なんだって。音楽もそう。アコースティックコーナーもそうだけど、何やってもこの5人で演奏すればInitial'Lになる。決して懐かしい悠希を否定してるわけじゃないんです。超えなきゃいけないと思うし、過去の自分がどうしてもつきまとってくる。でも、あの頃の自分には言えなかったことを今こうやって言えてる。裸になった僕を聴いてほしいし、だからこそ生まれる音楽があると思うし、Initial'Lにしかできないことをみんなで見つけていきたい。じゃないと音楽やっててもつまらない。僕は素直にストレートにぶつけるから、みんなも何でもいいから僕らに気持ちをぶつけてください」_悠希


Initial'L以前のバンド、Lycaon時代のことを匂わせながら、ふっきれた今の想いを伝えた上で、披露されたのは「君の声を僕らにぶつけてください!」と叫んだ新曲「Light my fire」。初披露にしてみんなの歌う声が場内に響きわたり、ステージと客席がひとつに溶け合う光景が目の前に広がった。

アッパーチューン「Stop My Heart」では花道で悠希とサトシが肩を組んで歌い、ラストナンバーはInitial'Lのイメージカラーのピンクのテープがフロアーに舞った「Pathos」。最後までステージに残ったサトシは「音楽やっていて初めて泣きそうになった」と言い残し、いつものようにギターをかき鳴らしながらステージを去っていった。


アンコールでは再び幕に歌詞が映し出されるスタイルで悠希のファルセットが美しい「おくり火」が届けられ、「合言葉」を演奏。

ライヴTシャツに着替えた5人の素が見えるリラックスしたやりとりが場内を沸かせ、今年の夏に初のワンマンツアーで各地を廻ること(詳細は未定)、現在、新しい音源を制作中だということが告知された。

そして「White out」が演奏された後にツアータイトルに込めた想いについて悠希が伝えた。


「今日のライヴに「VISION TO VISION」っていうタイトルをつけたのは僕ら、バンドが好きだし、音楽が好きだから、また5人で戻ってきたんだよね。今までやってこなかった音楽にも触れてみたくて、やるんだったら大きな目標を立ててやろうぜって。今はそういう気持ちに満ち溢れているから、みんなとヴィジョンを1つにして、夢を追いかけていきたいと思ってこのタイトルをつけました。一緒に同じ夢を追いかけようぜ!」_悠希


記念すべき初ワンマンの最後を飾ったのは4人が花道で肩を組む微笑ましい場面も飛び出した「VISION」。幕開けの演奏より一体感を増し、解き放たれたInitial'Lが印象的だった。悠希は名残りおしそうな様子で「今日、何か見つけられた気がします。また夏にみんな遊ぼうぜ!」と告げ、最後まで残ったZEROは生声で「ありがとう!」と叫んだ。

彼らにとってもオーディエンスにとっても心に深く刻まれたアクト。ここからがInitial'Lにとって本当のスタートなのかもしれない。

取材・文●山本弘子


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