【連載】CIVILIAN コヤマヒデカズの“深夜の読書感想文” 第四回/住野よる『よるのばけもの』

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こんにちはこんばんわ初めましていつもありがとうございます。コヤマです。
CIVILIANというバンドで歌を歌ったりギターを弾いたり曲を作ったりしています。

四月ですね。寒い季節はいよいよもう終わってしまったんだなと思うと、少し寂しいです。僕は夏が嫌いなので、これからどんどん憂鬱な季節になっていくのか、と考えると少し気が滅入りますが、皆さんも身体には気をつけて。
季節や気温や景色や明るさや匂いや手触りによって自分から出てくる表現が違ったものになるので、今には今しか作れない音楽があるのですが、自分から出てくる表現の中では冬に出てくるものが一番好きです。冬に作った音楽や冬に書いた歌詞は、他の季節とは違って冷たい温度を持っています。逆に夏に書いたものはなんだか気怠くて、その時その時の自分のメンタリティをよく表しているなと思います。

歌も、そしてきっと小説もそうですが、様々な要因に影響されて以前作ったものとは違った表現がたびたび出てきます。季節の移り変わりや生活の変化や年齢や人間関係、その他色々なものの影響によって創作表現は絶えず変化していて、流れている川のように一所に留まることがありません。大小の差はあれど、変わっていくのが普通だし変わらないほうがきっと嘘です。自分の作るものがいつか大きな海に流れ着けるように、これからの憂鬱な季節も変わらず歌っていこうと思います。
それでは、四冊目の本の話をします。

(この感想文は物語のネタバレを多分に含みます。肝心な部分への具体的な言及は避けますが、ご了承の上読んで頂ければ幸いです)

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【第四回 住野よる『よるのばけもの』】

■「正しさ」の話

四冊目はこちら。住野よるさん作『よるのばけもの』です。
最初に書いてしまいますが、最後まで読み終わって、泣きました。悲しくて尊い話だと思います。とても良かったので『よるのばけもの』を読み終わった後に『君の膵臓をたべたい』を続けて読みました(まだ3分の1くらいですが)。

まず思ったのが、『よるの~』も『君の~』も、両方ともとても読みやすい。ページ数で言えば他の長編小説と変わらないはずなんですが、すらすら読み進められるのでそれほど時間をかけずにスッと読み終わりました。普段小説を読み慣れていない人でも、面白くなるまで苦痛を我慢しながら読むようなこともなくいけると思います。この読みやすさは何でしょうね。難しい言葉で長々と状況説明が入ったりすることもなく、人物同士の会話が多いからかな。

『よるのばけもの』は中学校でのいじめをテーマに書かれていて、コミカルなシーンや可愛い描写(化物の仕草がいちいち可愛い)もありますが、全体的に憂鬱な空気の漂う話です。もともと日本という国自体がほぼ単一民族によって栄えてきた国なので、いわゆる「村社会」の風潮が今でも強いと言われていますが、小・中・高校の教室の中というのはそれ自体が社会の縮図のようになっていて、大人が想像するよりも遥かに残酷で過酷なことが行われていたりします。というか、大人もかつては生徒だったわけで、そこに当事者として居たわけですから、忘れてしまっているだけできっと経験をしたはずなんですけどね。でも、僕より上の人達の学生生活と、僕の学生生活と、いまリアルに学校に通っている皆の学校生活はみんな違うのかな。僕の話で言うなら、中学校まではそれなりに嫌いでもありませんでしたが、高校生活は酷いことがいくつもあったので嫌いです。楽しいこともあるにはありましたが。というかそもそもあんまり行ってなかったからね、学校。

余談ですが、登場人物の台詞の言い回し等に何となくライトノベル的な空気があるなと思いながら読んでいました。そしたら住野さん、もともとは電撃小説大賞に作品を応募していたようで(Wikipedia参照)、後でそのことを知って「なるほどな」と思ったのでした。ちなみに僕がライトノベルで初めて好きになったのは上遠野浩平さんの『ブギーポップ』シリーズでした。夢中で読んでたな。そしてついでに上遠野さんのWikiを見たら去年新刊が出てることに今気が付きました。読まなければ。

とにかくこの住野よるさん、非常に読みやすく、なおかつ面白いので、最後まで止まることなく一気に読みました。住野さんをお勧めして下さった方々、ありがとうございました。


主人公の安達(あっちー)は何の変哲もなく毎日学校に通うだけの、普通の中学生です。ひとつだけ、おかしなことを除いては。
あっちー君はどういうわけか、夜になると身体が勝手に化物になってしまうようになりました。六つの足と、八つの目玉、全身がうぞうぞと蠢く黒い粒に覆われた、原因も正体も不明の化物。いつからそうなったのか、その日から彼は睡眠を必要としなくなりました。自分自身の姿に初めこそ驚いたものの、
「(中略)…慣れてみればそれはテレビゲームに出てくるモンスターや、アニメで見た怪獣のようだと、案外簡単に受け入れることができた」
といい、今では彼自身がこの化物の姿と夜の時間を楽しんでいます。海に行ってみたり、人や動物をちょっと驚かせてみたり(脅かすことにはすぐに飽きたそうですが)、閉園した遊園地に入ってみたり。

その日、いつものように化物に変化した彼にはひとつ目的地がありました。宿題を忘れてきたので、学校に忍び込んで取って来ようとしたのです。無事に自分の教室まで潜入し、目的のものを手に入れ、さてどうやって外に出ようかと思案しながら黒板のほうへ振り返ると、

「なにし、てんの?」

誰もいないと信じ切っていた教室の中に、女の子がいました。
元々変わり者だったのに加え、ある出来事がきっかけでクラスのほぼ全員から敵視され、無視や暴言や嫌がらせを日常的に受け続け、それでも学校に通い続ける、矢野さつき。
その矢野さんが何故こんな夜の教室にいるのか。あっちー君がそう問うと矢野さんは「夜休み」だと言うのです。
「お昼の学、校じゃ、休、めないから」
と。そして、また明日続きを話すから、もう一度夜にここに来て、と約束をさせられます。その日から、あっちー君と矢野さんが夜の教室で待ち合わせる日々が始まりました。

昼間の間、あっちー君は矢野さんに話しかけることはできません。昼間の矢野さんはクラス全員の敵であり、いじめの対象であり、万が一矢野さんと仲が良いなどと思われたら、自分も何をされるか分かったものではありません。だから、学校の中では他の生徒と同じく、徹底的に矢野さんを無視し続けます。そうしなければ、今度は自分がいじめの対象に入ってしまいます。だから仕方がない。だけれど、夜には矢野さんと教室で待ち合わせて、昼のことなど無かったかのように(「お昼の話はし、ないで」と矢野さんに言われてしまいます)ひとつふたつと話をするようになります。その中で、あっちーは矢野さんという人物について少しずつ少しずつ、分かっていきます。
変なイントネーションで話す矢野さん。全員から無視されるのに、それでも「おはよ、う」といつも声をかける矢野さん。何をされてもいつもへらへら笑っている矢野さん。そんな矢野さんが、とろくて何を考えているか分からない頭のおかしい奴なんかじゃなく、ちゃんと考え、はっきりと自分の意思を持っていたこと。人の話は聞かないし、確かに変わっているけれど、実はあっちーと趣味が合うこと。他の子と同じように、映画や音楽や好きなものがあること。そして、あっちー君にとっては恐らくずっと知らずに過ごしていたかったであろうことも、知ってしまいます。矢野さんが、毎日酷いいじめを受けても、教師から怒鳴られても、なぜいつもにんまりと笑っているのか。


あっちー君は、矢野さんに対する気持ちと、それでも昼間はクラスの仲良しの枠から排斥されない為にいじめに便乗する自分との間で悩み始めます。そのうちに、偶然矢野さんを手伝ってしまったクラスメイトが一瞬でいじめの対象に追加されるのを目にしたり、別のクラスメイトに新たな嫌がらせが起こったり、クラス内で様々なことが起こっていきます。

「正しさ」とは一体何でしょうか。この本を読んでいると、矢野さんへのこんな仕打ちはおかしい、主人公でも教師でも誰でもいい、誰かが声を上げるべきだ、と思うかも知れません。しかし、ゲームや漫画や映画の登場人物のような自己犠牲は、生半可な気持ちで出来ることではありません。自分の居場所を失ってまで、自分が迫害されてまで人を助けるという行為は、途方もない勇気と覚悟が必要です。ましてや、家と学校と遊びにいく街くらいが世界の全てである中学生にとっては、学校内で居場所がなくなること=生きる場所が無くなることに等しいと思います。「そんな風になる前に何故逃げなかったのか」と思うかも知れません。でも、僕等もかつて当事者(=中学生)だった時、心の中では分かっていたのです。あの頃、学校に通えていたのは誰のお陰だったのか。自分がそこを逃げ出したとして、じゃあ一体どうやって生きていくというのか。みんな分かっているのです、心の中では。だから、逃げるなんてこと、簡単に出来るわけがない。それでも僕は、限界だと思ったら全部置いて逃げろ、と、声を大にして言いますが。

「正しい行動を選ばなければならない」と、あっちー君は何度も自分に言い聞かせます。あっちー君にとって正しい行動とは、すなわちクラスの仲間意識から自分が弾かれないよう、空気を読み、皆と違うことをしないよう注意し、「ミス」をしないこと、でした。
その「正しさ」が、矢野さんとの触れ合いの中で揺らいでいき、そしてラストへと繋がっていくのですが、僕はこの終わりをハッピーエンドだと思っています。濁して書くので何と書けば良いかという感じですが、最後の最後にあの言葉を言った瞬間の、その感情の尊さ美しさ、そしてその後に襲い来るであろう絶望も含めて、良い終わりだと思います。
何もかもが痛快に解決する爽やかな終わりではないかも知れません。が、これはパッピーエンドだと、やっぱり思います。
あっちー、良かったね。どこかで別の人に同じこと言った気がするな。


登場人物の話をすると、普通に人に危害を加えている元田や中川も嫌いですが、一番嫌いなのは笠井です。理由はたぶん、読めば分かる。僕は笠井のような人間が大嫌いです。
なんか考えてみるとこの話、嫌いな奴が結構多いかも知れない。

みんなが表と裏を持ちながら、それでも平然と営まれる学校生活。そのグロテスクな気味の悪い檻の中で、何かがおかしいと思いながらも何も出来ずにいるあっちー。昼間の学校では「俺」、化物のときは「僕」。矢野さんに対しても学校では「矢野」、夜休みでは「矢野さん」。あっちー君は矢野さんにこう問われます。

「あっちー、くん、は」
「昼の姿と夜の姿、どっちが本、当?」

あっちーは、矢野さんは、クラスメイト達は、集団生活、組織、仲間意識とは、そして「正しさ」とは。



いつも通り、個人の主観で書かれたただの感想です。細かいことはご愛嬌ということで。
是非読んでみて下さいね。それではまた。

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CIVILIAN ライブ情報

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2017.05.18(木)名古屋ell.SIZE

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※CIVILIANは18時〜新潟SHOW CASEで出演いたします。

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<SAKAE SP-RING2017>
2017.06.04(日)会場後日発表

<10th Anniversary!! 『Mujack Dream Land 2017』>
2017.06.23(金)心斎橋Music Club JANUS
出演 :I Don’t Like Mondays./Official髭男dism/Thursday’s youth(ex:Suck a Stew Dry)/ドラマチックアラスカ / CIVILIAN
MC:中島ヒロト/大西ライオン

<MURO FESTIVAL 2017>
2017.07.22(土) / 23(日)東京都 お台場特設会場
CIVILIANはDay1に出演いたします。
Day1出演:ドラマチックアラスカ / GOOD ON THE REEL / Halo at 四畳半 / ヒトリエ / THE MUSMUS / WEAVER/AJISAI / CHERRY NADE 169 / ココロオークション / 八十八ヶ所巡礼 / LEGO BIG MORL / CIVILIAN
Day2出演:BRADIO / ハルカミライ / HERE/Large House Satisfaction / LUNKHEAD/MAGIC OF LiFE / Rhythmic Toy World / 忘れらんねえよ / バックドロップシンデレラ / Brian the Sun / バズマザーズ / ircle / LACCO TOWER / SIX LOUNGE / ビレッジマンズストア / WOMCADOLE

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