【インタビュー】CIPHER [D’ERLANGER]、「いちばん大きかったのは死と向き合ったこと」

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■永遠のものはないんだけども
■ある意味それは永遠でもある

──ええ。何よりもCIPHERさんがギタリストであり作曲者であるというところに徹することが、今現在のD’ERLANGERにとってのメカニズム成立のためにも不可欠という気がします。この時間の流れのなかで、そうしたことについて身をもって理解できた、ということでもあるわけですね?

CIPHER:そうですね。もちろんそれは昨日や今日のことではないんだけども。俺はできるだけシンプルであったほうが、わかりやすくあったほうがいいはずだと考えているんです。何事についてもね。それこそ曲作りの発想のあり方についても。それが実は、今回のアルバムでのキーワードのひとつになっているところであって。

──なるほど。どうあれ、やるべきことに集中できているというのは好ましいことです。音楽そのもののためにも。

CIPHER:そうですね。ただ、たとえば“自分はよくわからないから”とかそういった理由をつけて何かをやらないというのが、俺は嫌なんですよ。それは最低やなと思っていて。だから自分にとって経験値がゼロのことであろうが何だろうが、本当にそれをすることが必要とされれば受け入れるつもりでいるし、そこで俺は100%、扉を開けているつもりなんです。だから今、誤解のないように言っておきたいのは“ギタリストであり、曲を作るのが俺だから、それ以外のことをするのが嫌だ”ということでは全然ない、ということで。必要とあらば自分なりにトライはできますし、それに挑む心も持っているつもりですから。自分がやることでプラスになることに関しては、いくらでも踏み込んでいくつもりがある。あとはバランスであったり、必要か不必要かというところでの判断になってきますよね。適材適所、というのはやっぱり何事にもあるわけですから。ただ、そこで“俺って、こうだからさ”とか言いながら回避するというのは最悪だと思うから。

──自分はそうありたくないし、誰かのそういう態度も許したくない、と?

CIPHER:ええ。そういうやつに対しては、俺は心のなかで中指立てますから(笑)。

──さて、アルバム『J’aime La Vie』の話に移ります。再結成10周年という節目に伴うアルバムになることは、あらかじめわかっていたわけじゃないですか。そこで何か意識したことというのはありましたか?

CIPHER:いや、自分としては、そこがこのアルバムの第一義ではなかったんですね。アニバーサリーに絡めるもの、というのを第一に考えたわけではない。ただ単に『Spectacular Nite~狂おしい夜について~』の次のアルバム、ということでしかなかった。そういう受け止め方でしかなかったですね。10周年だからどうの、というのは全然なかった。

──さきほど“シンプル”という言葉が曲作りにおけるキーワードでもあったという話がありました。それはどういう意味なんでしょうか?

CIPHER:これはなかなか説明するのが難しいんだけども……簡単に言うと、自分が心底好きなものをやるのに遠慮する必要はないし、それをとことん堂々とやればいい、ということなんです。

──要するに、自分の感情と直結したものを、得意技を封印することなく、ということでもあるんでしょうか?

CIPHER:それはありますね。楽曲もそうですし、kyoの歌詞にもそういう部分を感じ取ってもらえるはずですし。

──たとえば前作の『Spectacular Nite~狂おしい夜について~』には“抜けのいい、ハジケたアルバム”という印象がありました。今作にももちろんそういった側面はありますけど、僕はむしろ“刹那のアルバム”だという気がしているんです。特にアルバム中盤の曲たちにそれを強く感じさせられていて。

CIPHER:それは……あるかもしれない。あまり多くは語りたくないんですが、このアルバムを作るにあたって自分のなかでいちばん大きかったのは、実は“死”と向き合ったことなんです。それについて非常にリアルに考えさせられる日常というのがあった。そこで、いろいろと考えさせられた。どんな人間だって、いずれはやはり朽ちていくことになるわけで、誰もずっとそのまま生きてはいけない。たとえば近年、キース・リチャーズの佇まいを見ていてあれこれ考えさせられるのも、自分が“生”のあり方とかについて意識している部分が少なからずあるからだと思うんです。ただ、それは大袈裟なところでの死生観のような話ではなくてね、わかりやすいところで言えば“一緒にいられるうちに、好きな人と一緒にいよう”とか、そういうことなんです。それこそこの先、どれほど自分がたくさん曲を書けるのかというのもわからないわけで。そこで先々のことを考えるよりも、今が大事やなと思ったし。レミーとか(デヴィッド・)ボウイといった、さまざまなロック・スターの死というのもありましたしね。永遠のものはないんだけども、ある意味それは永遠でもあるというか。

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