【インタビュー】アクロス・ザ・アトランティック、これが“最後作”と覚悟を決めた“デビュー作”

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テキサス州の5人組、アクロス・ザ・アトランティックのデビュー作『Works Of Progress』がリリースとなった。自主制作を続けてきた彼らが、最後のアルバムになるかもしれないと強い決意をもって臨んだ作品だ。ボトムの強いサウンドながらも、フック満載のキャッチーなフレーズとシンガロング・パートが随所に盛り込まれたジャンルレスな渾身作となっている。リリースを前にボーカルのジェイ・マルティネスに話を訊いた。




──まずはバンド名の由来から教えてください。“大西洋を越える”という意味をもっていますが…。

ジェイ・マルティネス:アクロス・ザ・アトランティックというバンド名には、覚えやすいキャッチーさがある。それにメンバー各々のルーツにも関係していると思ったんだ。僕たちはメキシコ、日本、フィリピン、アイリッシュなど、それぞれ違うルーツや文化を持っている。それにアクロス・ザ・アトランティックの音楽が大西洋を越えて世界に広がって欲しいっていう想いも含まれているよ。

──結成の経緯が興味深いですね。

ジェイ・マルティネス:普通なら近所の友達同士でバンドを結成したりするケースが多いけど、僕たちは全く異なる方法で集まっている。アクロス・ザ・アトランティックは、僕がコミュニティ・サイトのクレイグリスト(Craigslist)にメンバー募集を出したことがきっかけで結成されたんだ。

──バンドが拠点としているテキサス州のサン・アントニオの音楽シーンはどういうものですか?

ジェイ・マルティネス:サン・アントニオはメキシコの国境に近い都市だから、ヒスパニック系の音楽の影響を強く受けていると思うな。それに大きなメタル・シーンも存在している。最近だとデスコア・バンドのUPON A BURNING BODYが活躍しているし、他にもBACKWORDZや、DARKNESS DIVIDED、CHARCOL TONGUEが人気だね。

──アクロス・ザ・アトランティックよりもヘヴィな音楽性のバンドが多いですね。

ジェイ・マルティネス:うん、僕たちよりもずっとヘヴィで獰猛なバンドがシーンの中心にいるんだ。僕たちは特定のジャンルに縛られることなく、自分たちが影響を受けてきたものをオープンマインドで採り入れていたから、少し異端児のような存在だった。ライブ活動を始めた頃は、空っぽのフロアに向かってプレイする日々だったよ(笑)。保守的なメタル・ファンは僕たちのような歌モノのサウンドを求めていなかったからね。でも、地道にライブを続けツアーにも出ることでファン・ベースを作り出すことができた。今ではアクロス・ザ・アトランティックに近いサウンドのバンドもサン・アントニオでは活動しやすい状況になったんじゃないかな。そういうシーンが生まれるきっかけになれたことは素直にうれしいね。

──今作『Works Of Progress』は、レーベルからのリリースになりますね。

ジェイ・マルティネス:そうだね。でも制作中はまだレーベルに属していなかった。自分たちでレコーディング費用に2,000~3,000ドル(約22万円~33万円)は投じているけど、個々のメンバーがポケット・マネーで支払うのに容易な額じゃない。当時、僕自身も大学卒業を控えていて将来のことと向き合わないといけない時期だった。子供から大人に変わる分岐点に立っていたんだ。学生ローンの支払いや生活費のことを考えていると、アクロス・ザ・アトランティックを続けることが難しくなるって感じていた。だから、最後の作品になると思って全力を尽くしたし、正直な気持ちを歌詞にも取り入れた。他のメンバーも持っているもの全てを注いでくれていると感じたよ。僕の気持ちに薄々気付いていたんじゃないかな。だから、自分たちのために作ったアルバムが突然レーベルに認められるなんて不思議な気分だったよ。

──レコーディングにはお金がかかりますからね。

ジェイ・マルティネス:州を越えてフロリダまでレコーディングに行っているから費用がかかってしまう。決して小さな金額じゃないし、とてもリスキーだけど、僕たちは“全ての過程においてベストを尽くそう”というポリシーを持っているから、そこは妥協できない。

──なぜ、フロリダ?

ジェイ・マルティネス:自分たちが一緒に仕事をしたいっていうプロデューサーがフロリダにいるから。

──A DAY TO REMEMBERを筆頭にNECK DEEP、HER NAME IN BLOODの作品を手がけたAndrew Wadeですね。

ジェイ・マルティネス:僕たちは、A DAY TO REMEMBERの素晴らしい作品を手がけた彼の仕事ぶりを気に入っている。彼にプロデュースしてもらうためにお金を貯めてフロリダに飛んだんだ。最初はビビったよ。僕たちは普段ベッドルームで録音していて、まともなレコーディング・スタジオを使ったことがなかったんだから(笑)。それが最高の制作環境で、数々の名盤を世に送り出しているプロデューサーと仕事できたのだからね。

──話題のレーベルSharpTone Recordsからのリリースですが、契約に至る経緯は?

ジェイ・マルティネス:レコーディングが終わってミックス作業に入ろうってところで、SharpToneからオファーがあった。その数日前にラフ・ミックスの音源を送っていたんだけど、彼らは即座に動いてくれたんだ。メンバーには、今作がアクロス・ザ・アトランティックの最後のアルバムになるかもしれないって話をしていた直後に“レーベルと契約できそうだ、もう少し一緒にいられるかも!”っていう話に急展開していたから、彼らはとても驚いたと思うよ(笑)。

──SharpTone Recordsはバンドにとても良心的なレーベルだと聞きます。

ジェイ・マルティネス:その通りだと思ね。彼らは「レコーディングにかかった費用は全て負担するから、ツアー用のバンや新しい機材を購入する資金に役立てて欲しい」と言ってくれた。おかげでバンドの周りの環境をよくすることができたし、海外ツアーの準備もできた。

──『Works Of Progress』というタイトルには、どんな意味がこめられているんですか?

ジェイ・マルティネス:このアルバムには色々なタイプの曲が入っていて、それぞれ違う物語を持っているんだ。僕の頭の中には、まるでギャラリーに飾られている絵画のように曲が並んでいる。大きいテーマとしては、全ての人間がそれぞれ語るべきストーリーを持っている。今日という1日が最高でも最低だったとしても明日がある。人間は日々進化していくんだってことが、タイトルの意味だよ。

──あなたは全楽曲の歌詞を担当していますが、歌詞の影響を受けたバンドはいますか?

ジェイ・マルティネス:僕はヒップホップのリリックにとても影響を受けている。彼らのメッセージの伝え方ってとても優れているからね。NASやJ.Coleは、ストーリーの掴み方が本当に巧みだ。自分たちに近いジャンルだと、A DAY TO REMEMBERやTHE WONDER YEARS、NECK DEEPの歌詞は、メッセージや伝えたい目的が的確だと思う。そういうことが音楽で表現できることに魅了されてきたんだ。

──日本のファンにメッセージを。

ジェイ・マルティネス:日本でアルバムをリリースするのは僕らの夢のひとつだった。デビューを前にとても興奮しているよ。次の目標は日本でライブをすることだね。いつか会える日が来ることを心から楽しみにしているよ。

取材・文:澤田修
Photo by Josh Huskin


アクロス・ザ・アトランティック『ワークス・オブ・プログレス』

2017年9月1日 世界同時発売
【完全生産限定スペシャル・プライス盤CD】¥1,800+税
【通常盤CD】¥2,300+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.プレリュード
2.プレイング・フォー・キープス
3.サンドレス・フューネラル
4.カッティング・コーナーズ
5.リアル・フレンズ(ボーナストラック)
6.チン・アップ
7.24アワーズ
8.ワード・オブ・マウス
9.セルフ(レス)
10.スターティング・オーヴァー
11.ブラインド・アイズ
12.ワークス・オブ・プログレス
13.パーフェクト [ワン・ダイレクション カヴァー](ボーナストラック)

【メンバー】
ジェイ・マルティネス(ボーカル)
ジェイソン・ルーゴ(ギター)
フリオ・バチスタ(ギター)
ジェイ・ガーザ(ベース)
コーディー・クック(ドラムス)

◆アクロス・ザ・アトランティック『ワークス・オブ・プログレス』オフィシャルページ
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