【短期連載】<SXSW>漫遊記 第二回、「女性アーティストが活躍しはじめた」

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講演などが行われているコンヴェンション・センターでは、ミュージック・フェスティバルの期間中、毎日、全米各地のラジオ局が主催する業界向けのショーケース・ライヴが開催され、<SXSW>の人気コンテンツの一つになっている。その年の注目株が毎日4~6組、日替わりで演奏するその「Radio Day Stage」で、今年、筆者はナタリー・プラスとニッキー・レーンを見ることができた。

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■ナタリー・プラスは成長とともに
■作風の変化をアピールした

ナッシュビルからヴァージニア州リッチモンドに移ったシンガー・ソングライター、ナタリー・プラスはアラバマ・シェイクス、ハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフ、オッカーヴィル・リヴァーらを擁するレーベル、ATOに移籍して、6月にリリースする2ndアルバム『ザ・フューチャー・アンド・ザ・パスト』からの新曲を披露。

前作以上にR&Bやファンクの影響が顕著になる一方で、ダンサブルにもなった新曲とともに彼女のパフォーマンスも変化していた。2016年、やはり<SXSW>で見た時はギターを弾き、いかにもシンガー・ソングライター然としていた彼女は今回、曲によってはギターを持たずに踊りながら歌う姿もアピール。可憐さの中に芯の強さが感じられた頃とは明らかに違う自信に満ちた姿は、この2年の成長を想像させるとともに今後の飛躍を期待させたのだった。



■念願だったニッキー・レーンの
ライヴをついに体験!

ファッション業界から転身したため、デビューは28歳の時と遅咲きだったが、ブラック・キーズのダン・オーバックと作った2ndアルバム『All or Nothin’』(2014年)で注目を集めたニッキー・レーンは2017年2月にリリースした『Highway Queen』で、アウトロー・カントリーのファースト・レディーという評価を確かなものにした(彼女を追うのがジャック・ホワイトに見出されたマーゴ・プライスだ)。

そんな彼女のライヴを見ることは、筆者にとって今回のオースティン詣での目的の一つだったわけだが、八頭身のスタイルと愛くるしいルックスにはちょっと不釣り合いなほど力強い歌声と、いかにもならず者風のバック・バンドを従え、『All or Nothin’』と『Highway Queen』の曲を次々に演奏する彼女のカッコよさにすっかりKOされてしまった。いや、それは筆者だけではなかったはず。大抵はイスに座って、遠巻きにステージを見ている業界関係者達もこの時ばかりは立ち上がって、アウトロー・カントリーのファースト・レディーを大歓迎したのだった。

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その他、朝イチのライヴだったにもかかわらず、多くの観客が集まったサソフィア・アリソンのソロ・プロジェクト、サッカー・マミー、人気の女性ガレージ~サーフ・バンド、ラ・ルースが屋外ステージで演奏している裏で屋内ステージを満員にしたヘイリー・ヘインデリックスといった新人も大きな注目を集めていたことをつけ加えておきたい。

今回、紹介したアーティスト達は音楽性や表現方法はそれぞれに違っても、何にも流されない、そしてナイーヴであることを美徳としない意思の強さが感じられたことと、自分自身でしかあり得ないユニークさを持っていたという点では共通していたように思うし、そういう意味で、彼女達のライヴはどれもすこぶる気持ちがいいものに感じられたのだった。

撮影・文◎山口智男



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