ジョン・コルトレーンの“失われた”スタジオ音源、55年越しのリリース

(C)Chuck Stewart Photography, LLC

ジョン・コルトレーンの完全未発表スタジオ・アルバムが、6月29日（金）に全世界同時発売されることが明らかになっている。

◆ジョン・コルトレーン画像、動画

今回リリースが決定した『Both Directions at Once: The Lost Album（ザ・ロスト・アルバム）』は、“黄金のカルテット”とも称されるマッコイ・タイナー（Pf）、ジミー・ギャリソン（B）、エルヴィン・ジョーンズ（Dr）のラインナップで、『John Coltrane & Johnny Hartman』の録音前日、1963年3月6日に行なわれたヴァン・ゲルダー・スタジオでの公式セッションを収録したもの。レコーディング・セッションの記録は残っていたものの、マスターテープの所在も不明で、海賊盤も含めてこれまで一切に世に出たことがなかったという幻の音源だ。

録音終了後にコルトレーンがスタジオから持ち帰り、当時の妻ナイーマに渡していたというモノラル録音のリファレンス・テープが彼女の遺族によって発見され、このほどレコーディングから55年の時を経て、当時在籍していたインパルス・レーベルより発表されることとなった。

アルバムはマスターテイク7曲を収録した通常盤と、別テイク7曲をボーナス収録した2枚組デラックス・エディションの2形態でリリースされることが決定している。マスターテイクのうち、「Untitled Original 11383」「Untitled Original 11386」は未発表のオリジナル曲。さらに、マッコイ・タイナー抜きのトリオ編成による「Impressions」と「Nature Boy」、これまで非公式録音のライブ盤でしか世に出ていなかったコルトレーンのオリジナル曲「One Down, One Up」のスタジオ録音なども収められた貴重な音源集となる。

▲『ザ・ロスト・アルバム 【デラックス・エディション】』

▲『ザ・ロスト・アルバム』（通常盤）

発掘された音源について、コルトレーンと同時代を過ごしてきたテナーの巨星、ソニー・ロリンズは「これはまるで、巨大ピラミッドの中に新たな隠し部屋を発見したようなものだ」と喜びのコメント。また、現在インパルス・レーベルを管轄するヴァーヴ・レーベル・グループのダニー・ベネット社長兼CEOは「現在ジャズは21世紀のオルタナティヴ・ミュージックになりつつありますが、誰もジョン・コルトレーン以上にジャズの境界を壊す表現を成しえたアーティストはいません。彼は音楽の流れを変えた先見の明があり、この“失われた”アルバムは一生に一度の発見と言えます」と語っている。

リリースの発表と合わせて、アルバムのティーザー映像が公開となった。