【ライブレポート】デーモン閣下&岡本知高、<悪魔の森の音楽会>で“異能の声”が究極ハーモニー

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<悪魔の森の音楽会>という他ではあまり観たことがない“劇的”コンサートが、8月2日に富山県入善町民会館コスモホール、8月3日に富山県射水市小杉文化ホール(アイザック小杉文化ホール ラボール)にて2日間続けて開かれた。

◆デーモン閣下&岡本知高 画像

主な出演者は、驚異の歌声を持つ天性のソプラニスタ岡本知高と、ハードロックからポップスや子供の歌まで歌いこなす悪魔・デーモン閣下の2名。ふたつの個性的声、異能声質の共演である。そして道化とマジシャン。楽器を奏でるのは、N響団友オーケストラのピアノ五重奏とキーボードだ。





2016年末に同名のコンサートが行われたが、ストーリーや曲目にかなりのアレンジが加えられたステージは進化したもの。物語仕立てのステージは、悪魔の森の主(あるじ)の悪魔と、悪魔の森に大切なゲストとして招かれたオペラ伯爵の両名で繰り広げられる。

ゴージャスな衣装に身を包み、圧倒的迫力で会場を揺らす岡本知高演じるオペラ伯爵。一方、先に発表した自身のアルバム『うただま』で洋邦古典の要素を取り入れたオリジナル楽曲や、日本のポップスを代表する曲の数々を披露し、ハードロックのみならず優しく心に響く歌声と言葉を響かせるデーモン閣下扮する悪魔の森の主(あるじ)。この2名が、時に大迫力で、時に繊細に、西洋の伝統音楽、ポップス、ロックの曲を歌い綴っていく。

さらには、「えっ、この曲を!?」を「えっ、この2名で!?」というデュエットもあり、異能声質歌唱がたっぷりと会場を魅了する。どちらも凄い声なのに、お互いに真似のできない特長を持つ。このバランスと共調が心地よい。



そして、明るい少年のような、話し声も高くはりのある岡本と、時に軽妙に時に悪魔の声を発する閣下の2名の会話で、ストーリーが展開。2名は悪魔柄、人柄を滲み出しながら、笑いもたっぷりに、ユーモア溢れるトークを楽しませてくれる。時に物語からしばしば脱線するシーンを盛り込みつつも、トークは深淵なるテーマへと誘われる。

歌になると、一転、そこは別世界だ。そのギャップに翻弄されながらも不思議な世界のとりこになっていく。プッチーニのイタリア語のアリア、閣下によるシューベルトのドイツ語歌曲、岡本によるロック、‘70〜’80年代の米英のポップスやミュージカルでの男女デュエット曲、はたまた日本のスタンダード曲や某バンドの代表曲など、めったに耳に出来ないような組み合わせが次々と展開され、そのどれもが通常のコンサートではクライマックスになるような歌ばかりだ。閣下自らが和訳した音源化されていない古典曲までもがある。そして“物語仕立て”。このような形のコンサートがかつてあっただろうか? いや、ない!に違いない。



同公演はこれから先も数カ所で行われることが予定されているため、細かな内容は楽しみを半減させることになるので、控えさせていただくが、新しい音楽のパフォーマンスの形がここにはある、ということはお伝えしたい。コンサートの佳境、2つの“異能の声”が究極のハーモニーを聴かせてくれる場面がある。おそらく世界中でもこの2名でない限り聴くことのできない程の希少なデュオだ。下世話な表現で恐縮だが、それはまるで『ゴジラ対ガメラ』のよう。高度な歌唱での、見聞きしたことのない極めつけという意味での、である。

凄い歌声の重なりを聴いてみたいと思っている人は行かねばならないと思わされるソプラニスタとロックのテノール。現在のそれぞれのキャリアと齢、旬の合体。多分こんな組み合わせは当分ほかにあまり無いはずだから。




撮影・文◎山田晋也
※写真は8月3日(金)富山県射水市小杉文化ホール (アイザック小杉文化ホール ラボール)

■<デーモン閣下&岡本知高の『悪魔の森の音楽会』>

魔暦20(2018)年09月16日 岩手・一関市文化センター
魔暦20(2018)年10月13日 愛知・豊川市文化会館大ホール

◆デーモン閣下 オフィシャルサイト
◆岡本知高 オフィシャルサイト
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